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エンジニア給与市場を透明化するサービスをリリースしました。サービスに込めた想い。

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こんにちは。田川 啓介と申します。

私は2008年で新卒でDeNAに入社し、営業やソーシャルゲームエンジニア、ゲームプロデューサー、ゲーム子会社立ち上げ、人事責任者、執行役員などを経て、現在は、デライト・ベンチャーズで起業準備しています。

そして本日、エンジニア向けの給与データベースサービスのβ版をリリースしました。

まだ事業検証の段階ですが、「エンジニアの給与市場を透明にして、評価がもっとフェアにされる世界を目指す」という信念を持ってこのサービスを立ち上げました。今回は、このサービスを立ち上げるに至った大きな3つの出来事、そしてサービスについて少し紹介をさせて下さい。(※少し長いので、お忙しい方はサービス概要だけでも見ていただければ幸いです。)

1. どういうスキルにいくら払うのが妥当なの?

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1つ目は、2015年にDeNA Games TokyoというDeNAの子会社を立ち上げることになった時のことでした。社長を任せてもらった自分はものすごく意気込んでいましたが、最初のミッションは、一度もやったことがない人事制度を一からつくることでした。本社の制度を模倣しながらカスタマイズすることになったのですが、一番苦労したのは、評価制度です。ゲーム事業に特化した子会社なので、ゲーム業界に合わせてカスタマイズする必要があったのですが、どういう人材をいくらで採用すればいいのか、どの職種でどんな経験を積めばいくら昇給するのが妥当か、見当もつきません。ググっても断片的な情報しか掴めず、外部のリサーチ会社や、DeNAのリクルーターの先輩方や、ゲーム業界から転職してきたDeNAの社員のみなさんにも協力してもらいながら、社内外を駆けずり回ってようやく一定妥当な制度を作成しました。最初の2か月はほぼここに時間を使いました。

この経験を通して、どういう経験やスキルを持っている人にいくらの給与を払うのが妥当か、これをゼロから調べるのはかなり大変なことだと痛感しました。人事経験がなく、面接官としての経験も乏しい、自分のような一個人だとなおさらだと思いました。

2. 給与には情報の非対称性が明確にある

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2つ目は、2016年にDeNAの人事責任者を担っていた時のことでした。当時はとにかく毎日人に会っていました。採用面接、評価面談、退職遺留交渉、アトラクト会食、他社人事交流会・・・。その中で、特にシビアだったのが、入退社に関わる面接や面談、評価面談でした。自ずと給与に関することが持ち出されていました。

そこで一番感じたのが、給与に関しては情報の非対称が明確にあるということです。例えば「自分の給与は同期の中で高い方なのか」「〇〇グレードまで行くといくらぐらいの給与になるのか」という類の質問は受けることがよくありました。言わずもがな、人事の私はわかりますが、社員はわかりません。また、「今回の評価結果は少し不満が残った、自分の実際の市場価値を知りたい」という話もありました。市場価値とは、つまるところ、同業界の他社だと自分はいくらなのか、という話なのですが、多くの給与情報に触れている自分と現場のメンバーとは明らかに情報の非対称性があります。この情報非対称性があることで、各個人が、無駄に疑心暗鬼になってしまい会社を信頼できなくなったり、キャリア選択を誤る可能性があるという課題感を持っていました。

3. 知りたい時に簡単に調べられない給与情報

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3つ目は、本社から離れ、デライト・ベンチャーズで起業を検討するタイミングで、この2つの経験を思い出し、実際にどれくらいの課題の大きさがあるのか調査していた時でした。いくつかのファクトにたどり着いたのですが、その中でも印象的だったのが、各社の有志で匿名で給与情報やグレードをGoogleフォームで出し合い、関係するメンバーは対象のスプレッドシートを閲覧することができる、という取り組みがいくつかあることでした。さらに、調査対象を海外まで広げてみると、MicrosoftやGoogleでも同様のことが2015年前後から行われている事実を知りました。

給与情報というのはパーソナルなものであり、個人間で安易に共有し合う類の情報ではなく、企業でも機微情報として厳密に管理しているところが大半だと思われます。がゆえに、自分以外の給与情報を知りたいと思っても、Google検索では断片的な情報しかわかりません。残念ながら、現職の給与査定に違和感や疑問を感じた時、実際に時間をかけて転職活動をしてみること以外、個人が市場価値を知れる手段がほぼありません

そして、たどり着いたお題

上記の通り、自分以外の給与情報を知りたいと思う時もあるのです。仕事選びという人生で大事な選択をする際に、必要かつ重要な情報になり得ます。それにもかかわらず、この時代に、知りたいと思ってもすぐに知るための手段がないのです。偏りはありますが、私は子会社の立ち上げや人事の経験で得た多少の情報があります。ただ、多くの人にはそれ以下の情報しかないのです。これは不公平だと思いました。給与市場を透明にできたら、経営者・人事・上司・従業員が対等の立場で同じ情報の上で議論できるし、個人にとってもっと良いキャリア選択ができると確信しています

では、給与市場をどのように透明化していけば良いか。結論、「知の共有」しかないと思っています。知というのは個々人が持っている給与情報です。その給与情報は個々人の中(加えて所属企業の人事や上司)にしかありません。もう一つ必要な観点として、サイト上の匿名性が仕組みとして担保されなければいけません。給与は公には知られたくないパーソナルな情報です。匿名情報という形で給与情報をサイトに投稿してもらい、サイト運営者が収集情報を統計化してから公開します。今まで有志でGoogleフォームやスプレッドシートを活用した取り組みをWebサイトで実現し、更に、個社だけでなく、市場全体から情報を収集することができれば、給与市場の透明化は実現できると考えています。まずは需要が非常に高く、スキルや経験を他者と並べて比較しやすいエンジニアに特化して取り組みたいと思っています。

働く目的は、給与だけではありません。最近は感情報酬など給与以外の満足度がより重要になってきていると感じます。給与が透明化されたとしても、給与だけでキャリアを決めることはありません。むしろ、今までブラックボックスだった給与情報が透明化されることで、それ以外の要素がより強調され、自分に合った会社選びを自分の意思でより行うことができると考えています。良いキャリアの意思決定が行えるよう、給与市場の透明化に挑戦するために立ち上げたサービスが、project COMPです。

このサービスでできること

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企業別、社会人歴別、職種カウンター別、スキルカウンター別に、登録が一定数を超えると中央値が公開されます。企業別、社会人別については、さらに増えると、他のパーセンタイルも公開されていきます。登録いただいた方は、各統計情報の中で、自分の給与順位を確認することができます。

また、今後以下の機能を追加していく予定です。

・同業界×同職種×同年代の中での給与順位がわかる
・自社から転職した同職種の人の転職先の傾向と給与変化がわかる
・キャリアライフログを登録でき、昇給率を同職種や同年代と比較できる
※詳細内容は次回以降のnoteに掲載予定です

同業界、同職種での比較はもちろん、今後は人材流動性が少ない異業界の情報も見れるような世界を作りたいです。同業界では繫がりが多く、副業したり、カジュアル面談をしておおよその給与市場観が分かる人でも、異業種や業界の外で自分のスキルを求めているのかどうか、どのような成長ができるのか、よく分からないというのは、よく聞く話です。DeNAには、異業種から数社を経て業種の枠を超えてエンジニアとしてDeNAに入社し、活躍している人もいますが、そういう事例があるという話をするとビックリされる方も多いです。そんな反応を見ると、国レベルのエンジニア不足の課題についても、今は業種や業界に閉じた課題解決しかできていないのではないか、自分としては業種や業界を超えてより良いキャリアを構築していける仕組みをつくって支援したい、と考えるようになりました。

また、メガベンチャーや大企業しか経験者していない人にとって、スタートアップはハードルが高いという話も聞きます。給与水準が大きく落ちそうというイメージがあるため、興味はあるが面接を受けるまでに至っていない人も多くいるようです。ただ、スタートアップでもこういうスキルの人はこの程度もらっているんだ、このぐらいSOもらっているんだ、ということが分かれば選択肢は広がりますよね。

転職活動をせずとも市場と自分を比較できるサービスであり、転職時にも活用できるサービスであり、転職後も同様に使っていけるサービスにしていくことで、他のサービスにはない時系列の情報を溜めていけると考えています。また、複数社に渡り時系列で給与情報を投稿することで、昇給率などの情報も同職種や同年代などと比較できる、キャリアライフログのサービスを提供しようとしています。結果として、転職前後の給与変化も統計情報を見ることができ、業種や業界を跨ぐキャリア構築の事例も把握できます。その情報を活用して、エンジニアの方々がより良いキャリアを形成をしていけるサービスにしていきたいです。

最後に・・・

繰り返しにはなりますが、「給与市場を透明にしていき、個々人が業界や業種に閉じずに最適なキャリアを描ける仕組みを作っていく」というのが、project COMP を通して実現したいことです。

まだまだ最初の一歩を踏み出したにすぎず、現状のβ版サービスとnoteの内容もまだかけ離れているため、「何をそんなに大きなことを語って!」と思われる方も多いと思いますが、この志に向かって一歩ずつ進めていく所存です。

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