北鎌倉で過ごすひとりの夜
2023年9月12日(火)晴れ時々曇り
昨日は日記を書かなかった。意図的に書かなかったわけではなく、午後から新居を整える作業をしていたために疲れ切ってしまって書けなかった。扁桃炎になりかけていて倦怠感が続いているのが苦しい。この5日間くらい午後になるともうヘトヘトになってしまう。でも1日の終わりに疲れ切ってすぐ眠れると、朝は充実した睡眠を取れた感覚がある。
今日は朝から引き続きさくらと家の作業。午前中にガス業者が来てメーターのチェックと契約手続きをした。プロパンガスは高いので、どうにかできるだけ使わないようにしたいとは思っている。
午後は必要な荷物を取りに、私が育った茅ヶ崎の家へ。ここを訪ねる前には父親に連絡を入れておくべきなので、初めて北鎌倉に引っ越したことをメールで報告した。いつかちゃんと父に会わなければいけないだろうなあと思いつつ、実を言うとあえて平日に荷物を取りに行ったり掃除をしに行ったりしている。今日も誰もいない家で、私は黙々とスーツケースに物を詰めた。台所には埃をかぶった20年ほど前の食器、調理器具、使い捨てのラップや割り箸。空っぽの棚にレトルト食品のパックだけが入っているのを見ると、父が料理をしていないのが分かる。ここが私の実家だと思えば思うほど、いくつかの部屋が廃墟のようになっているこの家に対してやりきれない気持ちになる。どうしてこんなことをするのか自分でもまだ説明できないけれど、私自身もこの場所から少しずつ自分の形跡を消し去ろうとしている。でもこうやって逃げているばかりではなく改めてちゃんと親との関係を築かないと、いつか後悔する日が必ず来るという予感もしている。
さくらと茅ヶ崎駅のレストランフロアで昼食を食べ、スーツケースを引いて再び北鎌倉へ。食べたご飯が重かったのか、冷房で冷えたのか、電車のなかでものすごく体調が悪くなってしまった。引っ越し作業で疲れているのは私も彼女も同じなのに、本当に自分が情けない。家に着いて仮眠を取ると、だいぶ身体が楽になった。
夕方。日が暮れていくこととさくらが帰っていくことが重なって、正直とても心細さを感じていた。この3日間は合摩やさくらがいてくれて心強く、おかげでこの場所がだいぶ家らしくなった。ひとりの生活を作るために勢いで家を借りたけれど、もう既に私は色々な人に助けられていて、改めて頼れる人たちが近くにいることをありがたく感じる。この人間関係は、私自身が築いてきたものだ。
今晩はこの山の家でひとり。静かになった部屋の寂しさを感じながら、引っ越し作業の後片付けをした。その後夕飯を食べ、ボゴタにいる泉の音声記録を聴く。今日の彼のラジオが長くて良かった。
この部屋は南北の両側が森なので、窓を閉めていても虫の声が聞こえる。自分ひとりの部屋で夜にこうして文章を書いていると、すっと闇の奥深くに沈んでいく感覚になる。この感覚は嫌いじゃない。こうやって毎日ではなく書きたいときに、自分のために書く日記をしばらく続けていきたい。
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