機械学習モデルや統計数理モデルは、経済モデル上に整理しよう

 データサイエンティストとしての日々の業務経験から、重要な知見を個人的な備忘録で残したいと思います。また、ついでにnoteで共有します。何かのきっかけで読んでいただいた方に、何かが残れば幸いです。

想定読者

  • データサイエンティスト、データエンジニア、システムエンジニアといったデジタル関係職種の方

  • プロジェクトマネジメントに関わる方、あるいはプロジェクトマネージャや中間管理職の方

  • デジタル必須の業界の、トップマネージャー、あるいは経営者の方

ポイント

  1. データサイエンティストが、経営上の予測や最適化のための機械学習モデルや統計数理モデルを大量生産している。モデルの混沌状態になっており、整理する必要がある。

  2. 整理するなら、経済モデル上に整理するべきである。これは簡単な概念モデルでよくて、例えば、需要と供給、仕入れから販売までといったことで整理する。

  3. そうすることで、データサイエンスに関するプロジェクトがクリアになり、余計なモデル作成をしたり、作ったモデルが死蔵したりといった無駄がなくなり、さらにモデルをビジネスで使う効果が上がり、費用対効果が上昇する。

モデル乱立時代

 機械学習モデル、大規模言語モデルによる人工知能(例えば、ChatGPT)あるいは、統計学による予測モデル、整数最適化法による最適化(これは、量子コンピュータの活用が期待されている)は、爆発的な進歩を遂げ、今やどの企業にも深く浸透している時代です。そうなると、大量のモデルやツールが組織内に存在し、「どのようなツールが組織内にあるか」、「どのようなツールを業務でどのように使っているか、使っていないか」が不透明になります。当然、整理する必要があります。
 これは、一昔前、情報システムが乱立し、それを整理する必要が出てきて、システムインテグレートが試みられることと歴史的に類似してます。ただ、システムインテグレートは困難で失敗が多いので、モデルを統合するというアプローチは取りません。
 今後も、モデルは爆発的に進化し、組織のモデル活用も進化(モデルが生まれ、淘汰されるを繰り返す生態系の進化と同じく)させるには、常にモデルを大量に作成して、それを整理し続けなくてはなりません。

モデルを整理する方法

 ビジネス上のモデルは、ビジネスで活用することを目的としています。ビジネスは経済上に位置しているので、経済モデルの上に組織のモデルを整理することが適切です。
 例えば、自社製品の売上予測をしているとします。それは、適切な販売価格設定モデル(これを流動的に行うとダイナミックプライシングになります)で価格設定とセットで使っているとします。すると、適切な価格でどれだけ売れるかが予測できます。ただし、これは経済学上の売り上げに当たる部分だけです。ビジネスでは利益が重要で、利益は売上-費用で算出されます。すわなち、これらの売上だけのモデル群では不十分で、費用に関する、仕入れ価格予測や仕入れ可能量予測とセットで使わないと意味がありません。
 これを経済モデル上に、組織のモデルを整理すると言ってます。経済モデルは、需要と供給、産業連関といった様々なモデルがあります。

経済モデル上にモデル整理することでさらに活用効果が広がる

 このように経済モデル上の整理から見ると、片手落ちのモデル整理になっている理由は、作りやすいモデルから作っていったことが原因です。
 先の例では、「自社製品の売上予測」や「適切な販売価格設定モデル」は、自社にデータがあるために、それを使ってモデルを作ることが容易だったのでモデルが作成されていました。しかし、「仕入れ価格予測」や「仕入れ可能量予測」といったモデルは、自社にデータがないなどの理由で、モデルを作ることが困難で、モデル作成が出来ていないため、このように片手落ちの整理になってしまいます。これらのモデルは、データ収集から始めて、コツコツと困難な作成にチャレンジする必要があります。
 経済モデルに整理することで、モデルの効果がさらに広がります。経済上で売上だけ予測しても意味がなく、費用とセットで予測することで、利益を予測することが可能になります。そうすると、組織内のモデルの活用効果が一気に高まります。

このように、経済モデル上にモデル整理することは非常に重要なことです。

以上です。

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