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日本人が中国人に良いイメージを持たないのは何故?中国人についての本質に迫る。

残念ながら、日本で耳にする中国や中国人に対するイメージはいいものがないのは事実だと思います。こんなことあまり書きたくないのですが、「うるさい」「公共マナーを守らない」などのイメージは確かに存在しているんだと思います。正直に話すと、私もその一人でした。中国で仕事をし始めて、そのイメージは変わりました。そして、中国のことを勉強すればするほど、なぜ中国の方が「日本人には理解できない」行動をとるのかという本質部分を捉えられるようになりました。

本記事では、日本人が理解できない中国の方の行動のルーツを紐解いてみようと思います。

本質理解の大切さ

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『Factfulness』は日本でも2018年頃からとても人気のある書籍の一つとなりましたのでご存知の方も多いと思います。
話を深くしていく前に、まずは我々がいかにメディアの情報に左右されているのかについて、認識を合わせておく必要があると思います。

日本のメディアを通じて耳にする中国関連のニュースはあまりポジティブなものは少ないような気がします。ワイドショーでは訪日中国人旅行客のマナーの悪さを題材にしたり、空気の悪さを強調する報道が目立ちます。
また、報道番組でも政治関連で印象のいいニュースを耳にすることは、ほとんどありません。

しかし、中国にもたくさんいい話はあります。ハートフルな話もたくさんあります。なぜ、それらは報道されないのでしょうか?

Factfulnessを読んだことがある方はすぐにお分かりでしょうが、そんなものをニュースにしても面白くないからです。言い換えると、視聴率が取れないからです。少し話がそれますが、飛行機は毎日安全に離着陸を繰り返していますが、世界で何万機も飛んでいるうちの1機が墜落すると、その時だけ報道をしますよね。毎日安全に離発着していますというニュースに人々の興味が注がれないのは間違いありません。人によっては報道の仕方次第で飛行機に乗ることができなくなるケースも発生しかねません。

このように、報道によって我々が何かに対して持つ印象は、操作されているということです。自分の目で確かめ、自分で学習し、体験することがいかに重要かということです。

中国についても同様のことが言えるでしょう。
この記事を読んだ後には、なるほど!だから、中国の方ってあんな行動をとりやすいんだ。とわかるようになると思います。
もちろん、これも一つの見方に過ぎません。興味を持った方はご自身でも調べるようにしてみてください。

それでは、中国人の価値観を探る旅に出かけましょう。

日本人のルーツは?中国人のルーツは?

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日中の比較で見ていったほうが理解がしやすいので、日中比較の視点で話を進めていきます。まずは日本人と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
少し難しいかもしれませんが、外国の人なら「侍」や「武士」などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?

対して、中国人と聞いて思い浮かべるルーツは?と聞かれると少し難しいですよね?今の中国の文化や人を作ったと言えるのは、「文人」であると言われているようです。

文人とはつまり官僚達のことで、国家中枢にいた人たちのことを指します。
日本も武士は国家の中枢にいたので、その点でいうと似ていると思います。

文人とはどんな人たちなのか?

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それでは、文人についてもう少し見ていきましょう。

武士になるためには、親が武士である必要があります。つまり武士になれるかどうかは生まれたときに既に決まっています。

文人になるためには、勉強を頑張って「科挙」と呼ばれる、世界で最も難しいと言われた試験に合格する必要があります。つまり、文人になれるかどうかは試験に合格するかどうかで決まるのです。そのため、中国人にとって、文人は高嶺の花であると言えます。

中国史は名ばかり封建性?

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中国大陸で産まれた歴史はとても長く、ルーツを遡るためには紀元前にまで戻る必要があります。

紀元前11世紀の西周王朝の時代に中国で初めて封建制度が導入されます。
しばしの安定した時代の後、三国時代などでも有名な、春秋戦国時代がやってきます。この乱世の時代は役500年も続いたと言われています。

封建制度とは、御恩と奉公の関係性で成り立っており、統治者が土地などを大名などに与える代わりに、裏切りを侵さない契としての奉公を求める、いわゆる契約関係です。封建制度と聞くと昔のイメージですが、契約関係と聞くと近代的な印象を受けます。

そう、日本では社会基盤が既に出来上がっていたのです。天下統一を果たした徳川はこの契約関係を作ったことにより、安定した政治を200年以上も続けることができました。

中央集権の社会では、一方的に支配を行うため、契約関係は生じません。
世襲制度を取らなかった中国の仕組みでは、誰もが天下を取ろうと思えば取れたということになります。そのため、歴代の王は部下の反逆を常に恐れていたようです。そのため、優秀な子を残さないように側近を去勢させたり、少しでも反抗的な様子を見せたものには、見せつけのような処罰を課したのです。

古代中国では封建制度は形式上取られるのですが、実際のところは中央集権化していたようです。

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儒教の誕生

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春秋戦国時代に中国思想を形作る、大事な哲学が生み出せれます。
諸子百家とも呼ばれる、哲学家や宗教家の台頭です。その中でも有名なものとして、儒家の儒教と兵家の兵法があります。この儒教が産まれたことが今後の中国人の思想を作っていくことになります。

儒教は礼儀と仁愛を重んじ、徳を持って世の中を治めようと説きます。
しかしながら、春秋戦国時代を制した、秦の始皇帝には理解されず、
焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)で有名な自分にとって都合の悪い哲学思想などを排除する行動を取ります。秦の時代は、始皇帝の支配力で凄まじく繁栄しますが、その暴挙によってわずか5年で消滅してしまいます。

その後、漢王朝が誕生し、現代の中国の礎を築く文化を多数作り上げます。
漢字の「漢」ですし、漢方の「漢」ですね。※漢字の起源は殷の時代です。

宗法制度

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その漢王朝では、儒教を基盤とした政治体制をとります。
儒教の考えには五倫という考えの基盤があります。簡単に言うと、目上の人を大切にし、父親や家族を大切にするということです。

つまり、家族を大切にするということです。
この考え方を政治に用いたのが、宗法制度です。
国家という言葉には、家族の「家」という漢字が含まれています。

つまり、天子と言われる国家のトップは全国民の父親であるということなんです。この親に歯向かうなんて言うことは、儒教の考えを大切にする国民性のもとではあり得ないことです。

中国ではこのような制度を作ることで、長く安定した政権を作ろうとしたのです。

家族という枠から出られない中国

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ここまで、中国の歴史を紐解いてきました。ここからは、その家族という枠が強い中国とあまりそうではない日本を比較してみようと思います。

中国では家族の枠が基本となることはわかっていただけたかと思います。
それ故に、自分の家族がどういう環境にいるかによって、周りからの見られ方も変わるようです。貧しい環境に住んでいる場合、貧しいというレッテルが貼られてしまい、家族を重んじないといけないという想いと、そんなふうに思われたくないという葛藤が働きます。そのため、横の家より少しでも見栄を張りたい。少しでもいい暮らしをしているように思われたいという思いが働くようです。

日本は何故儒教社会にならなかったか

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なぜ日本は儒教社会にならなかったのでしょうか?実は徳川家康は儒学を進んで勉強していました。そして、その考え方に共感を示していたのです。しかし、日本は中国のように宗法制度を取り入れることなく、また国家思想として儒教を取り入れることもしませんでした。

その理由はいくつかありますが、まず日本には絶対的地位の天皇がいたことが大きな理由として挙げられます。つまり、神道があったのです。
だから、新しい考え方を今更入れなくても良かったということです。加えて、日本は封建制度による契約関係ができていたため、政府は家族という考え方を取り入れなくとも、安定した政権運用が可能でした。

そうして、日本では儒教は政治的利用ではなく、学問として受け入れられることになりました。

江戸時代は会社組織そのもの

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先程、契約関係という言葉を出しましたが、まさに江戸時代は近代の会社的な組織を持っていたと言われています。こんなことを言うと怒られそうですが、悪気はありませんのでご容赦いただきたいのですが、天皇陛下は会社でいう名誉理事長といったところでしょうか。将軍がCEOで大名が支社長です。ここに家族の関係性はなく、ビジネスライクな関係を築いていたといえそうです。

同じ言葉でも捉え方が違う

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日本人は家族を大切にしないということを言いたいわけではないのですが、中国と日本とでは家族への捉え方が異なるとお思えるエピソードがあります。

出家と聞くと皆さんはどのようなイメージを思い浮かべますか?
中国人は家族との血縁を断って、僧侶になるというイメージを持つようです。
「家族」との血縁を経つんですよ?もう一度いいます。家族と離れるんです。
もうお分かりかと思いますが、中国は国家そのものが家族です。出家するということは家族(国家)と一線を画するということにほかなりません。
つまり、社会から出ていくことを指すのです。

一方で、日本では出家しても、家族との血縁関係はなくならないのではないのでしょうか?だんだん分かってきましたか?

日本では、家族は国家と繋がっていないのです。

社会型の日本はルールが必要

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日本人にとっての国家とは社会そのものであり、家族ではありません。
そのため、社会を構成するためにはルールが必要になります。いわゆる契約関係や公共のルールですよね。

従来日本では、社会で生きていくためにはこのルールに従って生きていく必要がありました。だから、日本人はルールを守る傾向にあるのではないでしょうか?だから、日本人はマナーを守る傾向にあるのではないのでしょうか?

中国人にとっての官僚は遠い存在

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中国で偉くなるためには、文人になればよかったと冒頭で話したことを覚えていますでしょうか。そして、文人になるためには果てしなく難しい科挙という試験に合格する必要があります。この試験に合格できる人は本当に僅かです。そんな人は一般人からすると、遠い存在だったはずです。

つまり、自分たちの外にいる人達なんです。
外と分類された官僚たちは、自分たちとは異なる存在となります。
つまり、「内と外」の内側が民間、外が官僚ということです。

内の人(民間人)は、官僚になれるはずもないため次第に彼たちに対して無関心になっていきます。

「俺だって偉くなりたいけど、どうせ偉くなんかなれないし、どーでもいいや。文人たちはすごいけど、すごすぎてなんかどうでもいいや」という感じに。

横並びだから生まれた優越感。遠い存在に向けられた無関心さ

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それ故に、官僚(国)に対しては、傍観者となってしまいます。興味がないんです。そして、民間という内の枠に収まっている人たちは、上を見てもどうせ遠い存在に追いつけるはずもないから、今度は横比較を始めるのです。

優越感を感じる方法として、横の人より良い生活をしたい!と思うようになります。ブランド品を持ち、いい家に住み、いい暮らしをすることは、もしかすると、ここにルーツがあるのかもしれません。

まとめ:中国人はなぜうるさくマナーを守らないと思われるのか?

ここまでお話すれば、もうわかっていただけたかと思います。
中国では従来、国家を社会というより、家族としてみなしてきました。
家族だから、ある程度の失礼や自由は許されますよね?
おそらく、そのような考え方がルーツにあることで、今の中国が出来上がっているのではないかと思われるのです。


もちろん、今の中国人が国家を家族と思っているかというと、そこまでは思っていなと思います。中国では元来、募金活動はうまく行かなかったと言われています。これも、家族の枠組みが影響しているようです。しかし、現代は募金は集まりやすくなっており、中国人のマナーも良くなってきていると言われています。

これから、どのように変わっていくのかを見ていく上で、少しでもお役に立てる情報や気付きとなっていたら嬉しい限りです。


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