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ゲームゲノムを観て

先日、NHKで放送された「ゲームゲノム」という番組を鑑賞しました。

この番組はテレビゲームを“文化”として捉え、名作の魅力を深堀りするNHK初の教養番組です。MCはゲーム好きで有名な本田 翼さんが務めます。

ゲストは星野 源さんとゲームクリエイターの小島 秀夫さん。

ゲーム好き、源さん好きの自分としては、この番組の情報を入手した瞬間、すぐさまスマホのカレンダーに入力し、リマインドをかける程心待ちにしていました。

今回取り扱う作品は2019年発売の「デス・ストランディング」です。(以下、「デス・スト」)

■DEATH STRANDING(デス・ストランディング)とは


日本で初めて、隠れる事を趣旨とする"ステルスゲーム"というジャンルを確立した「メタルギア・ソリッド」シリーズの生みの親、小島 秀夫さんが前所属のコナミを脱退後、新スタジオ「コジマプロダクション」を立ち上げて初めて開発した完全新規のタイトルです。

<ゲームの概要>
舞台は、近未来の北アメリカ。「デス・ストランディング」と呼ばれる怪異によって都市間の繋がりが分断されていた北アメリカを再び1つにするため、「伝説の配達人」である主人公・サムは、各地の「カイラル通信」(※1)の起動を大統領より依頼される。謎の敵BTや、配達依存症(※2)の人間達を退けながら、サムは冒険に出る。

※1:「デス・スト」内の拠点と拠点を繋ぐ通信環境で、インターネット回線のようなもの。 このゲームの目的は、各地の拠点にカイラル通信を繋げてカイラル通信エリアを拡大し、アメリカを再び統合することです。

※2:分断前の北アメリカではAIとドローンの配達によって、人は配達に関与しない世界でした。しかし、その結果、配達に関与しない事に不安を抱えてしまう”ドローン症候群”と呼ばれる症状に悩まされる人々が発生してしまったので、これを機に、また人が配達に関与するようになります。

配達をする事に使命感を感じ、「自分達こそが世界を支えているんだ!」という自己満足に浸ってしまう人々の症状が「配達依存症」です。配達する事が主目的になってしまっているので、主人公サムの荷物を強奪しようと襲ってきます。

■テーマは「繋がり」

「分断された世界を再び一つにする」というゲームコンセプトは、トランプが築いた国境の壁や、イギリスのEU離脱など、「分断」と「孤立」が至る所で起こっている現実の世界情勢から着想を得たと小島監督は語ります。

その後のパンデミックの影響で「分断」と「孤立」は一気に加速し、もはや人間と人間の距離感までも変えてしまい、僕たちは今までと同じよう生活にはもう戻れない状況になってしまいました。

こんな状況下だからこそ「繋がり」をテーマにした「デス・スト」が、今再び注目を集めています。

このゲームの醍醐味の一つに「ソーシャルストランドシステム」というものがあります。

オンライン状態にして、ゲーム内で先ほど説明をしたカイラル通信の接続を行うと、その周辺で他の「デス・スト」プレイヤーの痕跡が見えたり、あるいは作ってくれた橋や道などが使えるようになります。

例えば、最初通る時は、急すぎて登る事が困難だった山道が、通信を繋ぐと獣道が出来たりする事があります。さらに、他人の作ってくれた陸と陸をつなぐ橋などの施設には「いいね」することも出来ますし、逆に自分もそれをもらうことができます。

このシステムにより他人と繋がりを持つことで、プレイヤーは孤独なゲーム内の世界で自分の存在を意識出来るようになるのです。

発売当初と今プレイするのでは、このゲーム印象は全く異なってくる事でしょう。

■世界は常に表裏一体

「デス・スト」には、分離破壊主義者(ディメンス)と呼ばれるアメリカ再建を阻害しようとしてくるテロリスト集団が登場します。"繋がりこそが生き辛さを生み出す鎖のようなもの"だと彼らは主張します。

果たして、そんな彼らを一概に「悪」と呼ぶ事は出来るのでしょうか。

小島監督が番組内で語った言葉がとても印象的でした。

人間の手は、握れば人を傷つける拳になるし、開けば握手が出来るし、"いいね"だって出来る。

世界中の誰もがいいと思う物が存在するのであれば、この世に争いは生まれません。例えば、多くの人が便利だと思って使っているインターネットだって、個人情報の流出や匿名の誹謗中傷など、有益ではない側面があります。常に物事は表裏一体です。

人はそれぞれ色んな考えを持っているので、一方が悪だと思っていても、もう一方にとっては正義なのです。

みなさんは果たして"サム"か"ディメンス"か、はたまた"それ以外"かどれでしょうか?

■おわりに

「優れた作品は未来を予見する」という考えがありますが、このデス・ストもその内の一つなのかなと思います。

星野源さんがステイホーム期間中に「うちで踊ろう」という作品を発表し、インスタグラムなどのSNS上でバズリました。

この曲の歌詞に次のようなフレーズがあります。

うちで踊ろう ひとり踊ろう
変わらぬ鼓動 弾ませろよ
生きて踊ろう 僕らずっと独りだと諦め進もう
ひとり歌おう 悲しみの向こう
全ての歌で手を繋ごう
生きて抱き合おう いつかそれぞれの愛を重ねられるように

小島監督と同じく、意識的に「繋ぐ」という言葉を使っています。

つくづく思うのですが、優れたアーティストやクリエイターは、いつも先んじて起こりうる世界を表現してくれるし、適切なタイミングで今しなければいけない行動や発言を世間に発信してくれます。

是非、気になった方は「デス・スト」をプレイしてみてください。

参考元一覧
■https://dswiipspwikips3.jp/death-stranding/contents/glossary.html
■https://h1g.jp/death_stranding/?%E7%94%A8%E8%AA%9E%E9%9B%86
■https://assassinscreed.hateblo.jp/entry/whatismules_

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