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スポーツは、アスリートは、変化しなくてはならない。ーホモ・ルーデンスを読んでー

COVID19がスポーツ界に与えた影響

20世紀を代表する歴史家ヨハン・ホイジンガはその著書「ホモ・ルーデンス」の中で、遊びは「日常生活の外にあるもの」と定義しています。

現在スポーツなどの「遊び」は、その「日常生活の外にあるもの」という特徴ゆえ、危機に立たされています。
疫病、戦争、経済危機など、人々の生命が危機に貧した時、真っ先に煽りを受けるのは「日常生活の外」にある「遊び」です。

一方で、スポーツは社会においてその存在感を増し、日常の外にあるスポーツを極めることにより、生活の糧を得るプロアスリートという存在を生み出しています。
現在、COVID19で最も危機に貧している職業の一つが、スポーツという不要不急の活動で生活の糧を得ているプロアスリートであることは間違いありません。

これまで、プロアスリートは主に「試合」においてその価値を証明し対価を得てきました。
しかし、COVID 19はプロアスリートからその活躍の場を根こそぎ奪っていきました。
自らの価値を表現しようにも、その場がない。
プロアスリートはそんな佳境に立たされています。

プロアスリートの真価とは

一方で、プロアスリートの中に、新たな動きを見せる人たちが出てきています。
それは、スポーツを"通して"価値を生み出そうとする人たちです。
これまでもスポーツを通じた国際交流やスポーツ教室などの取り組みはされてきましたが、「試合」という表現の場がなくなった今、その流れが一気に加速しています。


COVID19によりプロアスリートに求められる「真価」が浮き彫りになったとも言えます。
これまで、プロアスリートは「試合」でプレーし、勝利することによりその対価を得ると考えられてきました。
しかし、その構造をより詳細に見ていくと、その対価はプレーや勝利そのものではなく、それらによる、観戦者の興奮(チケット代)やスポンサーの広告効果(スポンサー料)に支払われていたことがわかります。

つまり、プロアスリートの仕事とは
単にスポーツをプレーすることではなく、
「スポーツを通して価値を生み出すこと」だったのです。

アスリートは、スポーツは変化しなくてはならない

COVID19によりスポーツに副次的な価値が求められるムーブメントが加速し、これから止まることはありません。
プロアスリートに求められる能力は複雑化し、「スポーツが上手くプレーできる」だけではいけない時代がやってきます。
プロアスリートは、スポーツは、その時代の流れに対応していかなければなりません。

一方で、ホイジンガは、スポーツが職業化されることにより、スポーツにより生み出される副次的な価値ばかりが重要視され、その「遊び」としての魅力が失われることを嘆きました。
スポーツの目的は「プレーすることそのもの」にあり、スポーツに生活の糧や副次的な価値ばかりを求めると、その軽やかさが失われてしまうとの考え方からです。

これから来る「価値至上主義」の時代に適応しつつも、「遊び」としての魅力を途絶えさせない。
これからのスポーツに求められる最大の課題のひとつです。
でも、スポーツにはそれができる。

目の前の困難にチャレンジし、楽しみながら乗り越えていく。
それがスポーツだから。



【今回読んだ本】
ホモ・ルーデンス
ホイジンガ著 高橋英夫訳

https://www.amazon.co.jp/ホモ・ルーデンス-中公文庫-ホイジンガ/dp/4122000254


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