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「経済学で、ビジネスを動かせ!」:経セミ 2023年4・5月号より

『経済セミナー』2023年度最初の4・5月号
特集は、「経済学でビジネスを動かせ!」です!!

■ 今回は一冊丸ごと、経済学の実践!

今回の特集では、以下のような具体的な経済学の実践例と、それを可能にするためのスキル・知識の習得について、登壇者・執筆者の実体験に基づいて詳細に解説します。

特集で紹介される事例と記事ラインナップ

  • Sansanやサイバーエージェント、ZOZO、Uberなどといった企業で、プロダクト設計、事業運営、オススメ商品の提供や顧客の離脱を防ぐためのアルゴリズムの提案など、さまざまな経済学の実践例

  • 東京大学エコノミックコンサルティングによるクライアント企業への経済分析を通じた価値の提供

  • 株式会社エコノミクスデザインが行った経済理論に基づく商品評価集計(レーティング)システムの設計

  • 東京大学マーケットデザインセンターが実践したマッチング理論の新入社員配属制度への実装

2010年代以降、アメリカのIT企業を中心に、経済学のデータ分析や理論分析をビジネスに実装する、それができる経済学者が企業で活躍する、といったトレンドが生まれ、日本でも徐々に広がりつつあります。

また、座談会と寄稿をいただいた安田洋祐先生のように、起業する経済学者も登場しています(2020年6月に株式会社エコノミクスデザインを共同創業)。

はたして、経済学はビジネスの世界にどんな価値をもたらすことができるのか? 本特集では、経済学を武器にビジネスなどの実務の現場で活躍する皆さまにお集まりいただき、多彩な経験に基づいて、さまざまな事例を挙げつつ解説をいただきました。以下のようなラインナップで、座談会と3つの寄稿を通じて、「経済学実践のフロンティア」をお届けします!

『経済セミナー』2023年4・5月号、特集「経済学でビジネスを動かせ!」

なお、本号巻頭の座談会は、2022年10月8日に開催された、日本経済学会サテライトイベントのパネルディスカッションの内容をベースに再構成・執筆されています。

特集以外の記事でも経済学実践!

実は本号は、上記の特集以外にも「経済学の実践」を紹介した記事が掲載されています。たとえば、

成田悠輔・矢田紘平「データで社会をデザインする」、第11回「未来を創造する (3):強化学習の応用」

では、日本最大級のオンライン・ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」で成田先生たちがバンディットアルゴリズムを応用して実装したファッションオススメアルゴリズムについて詳細に解説しています!

成田悠輔・矢田紘平「データで社会をデザインする」
第11回「未来を創造する (3):強化学習の応用」

また、海外論文SURVEYに掲載された、ノースウェスタン大学の奥村恭平さんによる以下の記事では、難民の再定住先の割当のために考案されたマッチングアルゴリズムの理論と実装について、論文(Ahani, et al. 2021 “Dynamic Placement in Refugee Resettlement,” EC’21: Proceedings of the 22nd ACM Conference on Economics and Computation, Association for Computing Machinery)を取り上げて詳細に解説しています!

奥村恭平「マーケットデザインの最先端:難民再定住アルゴリズムの設計と実装」海外論文SURVEY、vol.119
奥村恭平「マーケットデザインの最先端:難民再定住アルゴリズムの設計と実装」
海外論文SURVEY、vol.119

■ 特集で取り上げた事例を少しだけ紹介!

ここでは、特集記事で取り上げられた事例と、その関連・背景情報を少しずつご紹介します!

上武康亮「経済学はビジネスでどう使えるのか?」

特集記事の1本目、上武康亮先生による「経済学はビジネスでどう使えるのか?」では、上武先生方現在教えているビジネススクール(イェール大学ビジネススクール)で、経済学がどのように教えられているか、ビジネス・経営学関連の科目とどんな関係にあるか、から始まり、さまざまな経済学の理論・データ分析のビジネス実践の成功例・失敗例を解説しつつ、「実際、経済学で儲けられるの?」という問いに答えていきます。

特に、上武先生ご自身が取り組んだ。ZOZOTOWNにおけるカスタマーリレーションシップマネジメント(顧客関係管理)の要点である、顧客の離脱を防ぎ、ロイヤルカスタマーに育てるためのコミュニケーションアルゴリズムの設計事例についても紹介いただいています(上武先生による、以下の2つの記事も参照)。


安田洋祐「レーティングの仕組みは経済理論で創る:エコノミクスデザインの実践」

特集記事の2本目、安田洋祐先生による「レーティングの仕組みは経済理論で創る:エコノミクスデザインの実践」では、私たちにとっても非常に身近な、ネット通販サイトなどでよく見かける商品・サービスの評価の点数、★の数をどうやって作るべきか? を考えます。そして、その「レーティング方式」の設計に、経済理論(社会選択理論)を活用し、集計の理論的な性質に基づいて仕組みをデザインした事例を紹介します。安田先生たちが共同創業した株式会社エコノミクスデザインと、株式会社マイベスト株式会社AppBrewが共同で設計・開発して導入した仕組みの理論的な特徴を解説。経済学の実装というとデータ分析に関心が集まりがちですが、一見役に立たない(?)ように思われる経済学の理論をビジネスの現場でフル活用したおもしろい事例です。

プレスリリース:「商品やサービスに対する新たな評価手法を、おすすめ情報サービス「mybest」がエコノミクスデザインの慶大教授と開発
プレスリリース:「国内最大級の美容クチコミプラットフォーム「LIPS」、レーティング方式設計の専門家とクチコミの商品評価点数のアルゴリズムを開発

マイベスト×エコノミクスデザイン、AppBrew×エコノミクスデザインの取り組みについては、以下の動画や記事でも詳しく語られています!


小田原悠朗「企業の人事にマッチング理論を実装する:東京大学マーケットデザインセンターの実践」

そして、特集記事の3本目、小田原悠朗先生による「企業の人事にマッチング理論を実装する:東京大学マーケットデザインセンターの実践」では、新入社員の配属システムを、経済学のマッチング理論に基づいて設計し、実際に企業で運用されている実践例を紹介します。これは、東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)が、医療機器メーカーのシスメックス株式会社と取り組んできた共同研究プロジェクトです。

新卒社員の希望を適切に配属に反映し、社員の組織へのエンゲージメントを高めつつパフォーマンスを発揮してくれるような、より望ましい配属制度を設計するという目的で、現場とUTMDの研究者たちが共同で取り組んだ事例です。記事では、配属制度を設計するうえで満たすべき理論的な条件なども紹介しつつ、現場に導入する際にどんな苦労や障壁がありうるか、どんな工夫でそれを乗り越えていくか、といった実践経験に基づく解説も行われています。

実際にこのアルゴリズムはシスメックス社のホームページにも記載されています。

また、シスメックス社の視点からこのプロジェクトについて語られた記事も「日本の人事部」サイトで公開されていますので、本誌とあわせてぜひご覧ください!

■ おわりに

以上、『経済セミナー』2023年4・5月号の内容を、特集部分を中心にご紹介しました。改めて本号のラインナップを以下に紹介します。連載記事も多数収録しているので、ぜひご注目ください!!

また本号では、2022年11月にご逝去された、ゲーム理論の黎明期から、その発展と普及に多大な功績を挙げられた鈴木光男先生(東京工業大学名誉教授)の足跡を振り返る記事「追悼 鈴木光男先生 ゲーム理論とともに歩んだ人生」も掲載しています。ご自身もゲーム理論に関する論文・著書を多数発表している、鈴木先生の教えを直接受けられた、岡田章先生(一橋大学名誉教授)にご執筆いただきました。こちらもぜひ、ご覧いただけたら幸いです。

連載のサポートnote


サポートに限らず、どんなリアクションでも大変ありがたく思います。リクエスト等々もぜひお送りいただけたら幸いです。本誌とあわあせて、今後もコンテンツ充実に努めて参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。