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地方銀行の「高額報酬」に違和感:地域貢献は嘘か誠か

先日、ある記事を読んで違和感を感じました。

地方銀行による外部専門人材獲得の記事です。

地方銀行がメガバンク並みの報酬を払ってまで外部から専門人材を獲得しようとする戦略は、一見効果的に思えます。

しかし、これには様々なリスクが伴います。

最近、多くの地銀が採用しているこの手法は、地方銀行としての存在価値や地域社会との結びつきを脅かす恐れがあると私は考えます。

本記事では、地方銀行の新たな人事戦略の背後にある潜在的なリスクについ考察してみます。

高額報酬が銀行と地域社会にどのような影響を及ぼすのか、考えてみましょう。

高額報酬導入による問題

記事に書かれているように、山口FGが導入を検討しているメガバンク並みの報酬体系は、一見すると優秀な人材確保に有効な手段と思われがちです。

しかし、これには2つの問題があると考えます。

一つは高額報酬が業績に見合わない場合、誰が責任を取るのかというものです。

また、もう一つの問題は、一部の人材への高額報酬が社内での不公平感を生み、従業員のモチベーション低下を招く可能性です。


定量化の課題

外部から採用される人材がもたらす「付加価値」を具体的な数字で示すのは実際困難です。

たとえば、市場部門での債券トレーダーの実績は定量化しやすいかもしれません。

ただ、その成果がその人物のスキルに起因するのか、市場の動向によるものなのかを区別するのは容易ではありません。

また、長期にわたる影響などは正確に測ることは出来ません。

さらに「優秀」や「専門性」「能力」の定義が曖昧な場合、採用担当は出身大学や、企業、資格などで判断してしまいます。

そのため、必ず成功に結びつくとはいえません。

仮に成果が乏しかった場合、本来は採用した側に問題があるという話になってもおかしくありません。

しかし、日本の会社で人事担当者が採用を誤まったからといって処罰されるケースは、ほとんどありません。

新卒同様、いわゆる「責任なき採用」となる可能性が高くなるだけでしょう。


短期的成果の追求

また、高額報酬を意識して短期的な成果を追求する人が増えるかもしれません。

これは大きなリスクを伴います。

例えば、短期間で高いリターンを求めるあまり、彼らが過度なリスクを取ることも考えられます。

もしかすると、行政から罰せられるような取り組みに加担する可能性もあります。

高額報酬のプレッシャーによって、そのようなことが起こる可能性も考えておくべきでしょう。


社内の公平性とモチベーション

高度な専門性を持つ人材が高額報酬を得る場合、一般従業員との間で不公平感が生じるリスクもあります。

これは、報酬と実績が直結しない場合、特に顕著となるでしょう。

一般従業員の長年の努力や貢献が適切に評価されず、一部の人材が高額報酬を得ることに不満を持つのは当然かもしれません。

結果的に、全体のモチベーションに影響を与え、職場全体の生産性が低下する恐れもあります。


地銀に高度専門人材は必要か?

そもそも地方の銀行に高度専門人材は必要でしょうか。

私は山口県のような田舎にある銀行が、大手メガバンクと同様の戦略を採ること自体に問題があると考えます。

本来、地銀は地域に根ざした運営が求められ、地元の顧客との関係性や地域社会への貢献が重要のはずです。

山口県で集めた資金を東京で運用するという考え方自体、地方銀行としての役割を放棄しているようにも感じます。

地方で働く人材が、高額報酬を得られないのであれば「地元で働きたい」と考える若者はどんどん減っていくだけです。

これが地域密着といえるでしょうか。

地域との結びつきよりも利益追求を優先する姿勢が強まるのは、地銀としての本来の役割から逸脱する恐れがあると考えます。


人材流動化に伴うリスク

山口FGの社長が指摘する通り、人材の流動化が活性化すれば、経験豊富な人材が他の大手金融機関に流出するリスクは高まるでしょう。

特に専門性が求められる分野では、キャリアアップを求める人材が失われていくかもしれません。

知識や技術が東京などの大都市に流出することは地方銀行にとって大きな損失です。

地方銀行が東京に拠点を置けば、首都圏からの人材獲得が可能になる一方で、地方銀行としての存在価値を維持するのは、さらに困難になります

地方での雇用創出や地方経済への寄与という面では、地元での人材育成や採用にもっと力を入れるべきでしょう。

地元のことを考えずに、東京で人材を採用して稼ごうとする姿勢は、地方銀行の経営者として失格ではないでしょうか。


新卒と中途の採用バランス

また、インタビューの中で山口FGの社長が「新卒と中途の採用比率をイーブンに持っていく」という方針を述べています。

この考え方は、組織の多様性に寄与すると思いますが、新卒採用を減らせば結果的に若手のチャンスを狭めます。

結果的に、エンゲージメントもモチベーションも低い社員ばかりになり、組織の長期的な成長を損なう恐れがあるのではないでしょうか。

調べてみると、山口FGはデカデカと「地域貢献」を掲げていました。

しかし、社長のインタビューからは全く「地域貢献」を感じません。

山口FG HPより転載

まとめ

山口FGの人事戦略の記事は、一見すると競争力の強化を意図していますが、多くのリスクを内包しています。

地銀として、地域に根ざした持続可能な経営の構築を放棄している戦略にも思えます

したがって、高額報酬の採用などは、単に出身大学や経歴だけでなく、その人材が組織全体に与える影響を慎重に評価する必要があると思います。

また、その報酬が公平かつ企業の長期的な利益に合致するものであるかどうかを見極めるのが、地銀の持続可能な成長には不可欠でしょう。

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