これは地銀の改革か?「地名+銀行」からの脱却
近年、地方銀行の名前から「地名」が消えつつあります。
かつては「地名+銀行」という命名が一般的でしたが、今では地域に縛られない新しい名前が選ばれるケースが増加しています。
その背景には、ブランド戦略、序列の回避など、さまざまな要因が関わっていると考えます。
本記事では、地名を使わない銀行名の増加の理由について考察します。
名前に込められた戦略と意図を理解し、銀行の変化を感じ取ってみたいと思います。
地方銀行が地名を使わない理由
地方銀行の名称は、かつては「地名+銀行」という伝統的な命名が主流でしたが、最近では地域名を使わない銀行名が増えています。
この背景には、地方銀行の意識変革やブランド戦略などが影響していると思います。
地名を外した銀行名の増加
例えば、茨城県の常陽銀行と栃木県の足利銀行が経営統合して誕生した持ち株会社「めぶきFG」も、地域名を外した行名の例です。
この選択には商標問題が関わっているようです。
茨城県と栃木県は関東地方のため、「関東」などの地域名を使用する考えもあったと思います。
しかし、地域名は、既に他の企業や金融機関によって商標登録されている場合があり、商標侵害のリスクを避けるために、地域名を社名から外すケースが近年は増えています。
地名を使っていない銀行
以下に、地名を使わない銀行名の例をいくつか挙げます。
七十七銀行
宮城県を中心に営業する銀行で、設立七十七番目の国立銀行に由来しています。八十二銀行
長野県に本拠地を持つ銀行で、第十九銀行と第六十三銀行の合併により誕生しました(19+63=82)。百五銀行
三重県に拠点を置く銀行で、第百五国立銀行として創業しました。百十四銀行
香川県を本店とする銀行で、第百十四国立銀行として設立されました。きらやか銀行
山形県を中心に営業し、明るく輝くイメージを持たせた名前です。みなと銀行
兵庫県の神戸港を象徴する「みなと」という言葉を用いています。もみじ銀行
広島県の県木である紅葉をシンボルにしています。東和銀行
群馬県に拠点を置き、「東国(関東地方)の和」を意味します。新生銀行
日本長期信用銀行の再編により誕生し、「新しく生まれ変わる」という意味を込めています。関西みらい銀行
関西アーバン銀行、近畿大阪銀行、大正銀行が合併して誕生し、「関西の未来」を担うという意志を込めています。
地名を使わないメリット
銀行が「地名+銀行」という伝統的な命名方法ではない理由として、いくつかの要因が考えられます。
以下に主な要因を挙げていきます。
商標問題の回避
多くの銀行名はすでに商標登録されており、特に「東京」「関西」などの大都市や広域地域の名称は、他の金融機関や企業によって商標が取得されている可能性があります。
そのため、既存の商標と競合しない独自の名称を選ぶ必要があるのではないでしょうか。
ブランド戦略
新しい名称を採用すれば、従来の地域に縛られない広域な展開や、新しいイメージを構築しやすくなります。
例えば、「みずほ銀行」や「りそな銀行」のような抽象的な名前は、国際的にも通用しやすく、ブランドとしての独自性を持たせることができます。
合併による序列問題の回避
銀行の合併は、前身の銀行の「序列」が行名に反映される傾向があります。
ただし、合併した銀行間の上下関係や力関係が名前で示されるのは、行員や顧客などに、あまり良い印象を与えません。
そのため、新しい行名を選ぶ際には配慮が必要です。
そこで、全く新しい名前にして、こうした問題を避け、平等な立場を示す場合があります。
例えば、広島の「もみじ銀行」は第二地銀の「広島総合銀行」と「せとうち銀行」が合併して出来た銀行ですが、両方の名前に関係ない名称を選んでいます。
親しみやすさと差別化
「トマト銀行」や「きらやか銀行」のような名前は、親しみやすさがあり、地域住民が覚えやすく、銀行の存在感を高める効果もあると思います。
また、他の銀行との差別化を図るためにも、ユニークで印象的な名称が選ばれることがあります。
地域に限定されない名称
従来の「地名+銀行」という命名は、その地域に特化したサービスを強調する意味では効果がありました。
しかし、その地域に留まらず、広域にわたるサービス展開や国際的な業務拡大を目指す場合などは、地域の名称が足枷になる可能性があります。
そのため、地域に縛られない名前が選ばれるパターンもあります。
「コンコルディアFG」や「めぶきFG」のような名称は、特定の地域に縛られない開かれた金融グループを目指すというメッセージを伝えるために選ばれています。
こうした名前は、既存の営業エリアにとどまらず、より広い範囲での金融サービスを提供する意思を示していると考えます。
数字の銀行について
国立銀行として設立された銀行の名称は、ブランド戦略などとは異なる背景を持っています。
これらの銀行名は、明治時代に設立された国立銀行の番号に由来しており、その番号をそのまま行名として使用しています。
地名ではなく番号を用いることで、銀行の歴史的背景を強調していると思われます。
日本国内に数字の銀行が残っているのを知ると、銀行が時代背景や制度に大きく影響されてきたのがわかります。
おわりに
地名を使わない新しい銀行名は、現代の銀行としての新しいイメージを打ち出すための戦略でしょう。
今後、地域に縛られない名前を選ぶのがトレンドになっていくかもしれません。
ただ、銀行名が利用者に与えるインパクトは大きく、銀行間の合併が進めば名前の重要性はますます増していくことは間違いありません。
名前負けしない、銀行が誕生することを願っています。
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