11、手入れの気持ち
手入れは仕事終わりにしておきなさい。
延は時々、兄弟子たちがそういうのを聞き
改めて手入れをするようになった。
砥石を使えば減ることはよくわかったが、同時にヘラやハケも使えば減る。
刃物もへたるし全ての道具は使えば減る。
漆の下地を使ったヘラは必ず減るし、仕事上がりに、少し荒れてしまったヘラ先を塗師屋包丁で調整したら5厘ぐらいはどうしても減ってしまう。
もったいない気もするが、そうしておくと何かスッキリして気持ちがいい。
道具の手入れをすると、何か上手くなったような気がする。
ただ、仕事終わりはへとへとになるので、賄いをいただいて、寝る前の時間、ランプの灯火をあまり使うともったいない火事も怖いから、時間を決めて手入れをする。
夏場は明るいが冬場は陽が落ちるのが早い。
ただ、何か今日の仕事の仕上げをしているようで、何か充実した気になるので、手入れの時間は、延は結構好きだ。