身の程なら痛いほど知ってる


 自分が所属している場所に、お前は必要ないと言われることが一番怖い。そう言われてしまうくらいなら、美しいまま思い出にしてしまいたい。自分からそこに関わることができなくなる理由を探せば、それはいくらでもあった。大学が忙しいとか、他にやりたいことができたとか。

 一度離れることを考えるとそれは底無し沼のように広がり僕の心を蝕んだ。そもそも僕は所属しているだけで必要とされていたのか?否、否、嫌、されていなかった。僕は知っている。身の程なら痛いほど知っている。僕は彼らのようにこの国で一番の大学には通えなかった。日本でも同じだ。僕の人生は繰り返し、中学校も所詮井の中の蛙、高校は第一志望にしていた県内一位の公立を目指すのをやめ、奨学金という言い訳をつけてそこそこの私立へ、大学もそうだ。公立をお金や専攻の問題と言い訳をつけて、落ちるのが怖くて、受験しなかった。他人から見れば、よほど恵まれているし、良い学歴を積んできた自覚はある。しかし僕はそこを含め、身の程を知っている。

 僕は知っているが故に強く出ることができない。前々から、僕に協力して欲しいと言っていたはずが、実際に日が迫り予定を聞くと、まだ君の立ち位置は決まっていないと言われた。決まっていないのではない、はっきりと言ってくれ、僕は必要ないと、僕である意味はないと。言わないでくれよそんな非情なこと。

 そうだ、深く考えるな。忙しいんだから、僕一人のことを考えていられないはずだ。僕だけじゃない…きっとまだ決まっていないことばかりなのに僕が早とちりしているんだ。しかし、悪気のない情報がSNSから僕の目に入る。Facebook、Instagram、LINE、こんなもの無ければ!無ければ、無ければ生きていけない。

 僕は確かにそこに所属していた。しかしそれは自分が思っていたほどのものではなかったのだ。そこには僕より優秀な人間なんていくらでもいる。たかがしれた経験しかない、肩書きもない僕の身の程、それがここだ。この沼、最底の、彼らには到底理解し得ない場所だ。僕もまた彼らを理解できない、そもそも見えない。

 あれ、僕はなんでそこに拘っていたんだ。どうして僕の居場所があると感じたんだ。最初から全て虚像だったのか、それならそうと、早く思い出にしてしまおう。この素晴らしい僕の居場所を、美しいままに残したい。僕は嫌なんだ、僕の美しい素晴らしい居場所を、思い出したくもない自尊心を傷つける場所にしてしまうのは。もったいないじゃないか。


否、否、嫌、違う。全部間違っている。ただ怖いだけだ。認めたくないだけだ。知っていると明言することで、線を引いているだけだ。


それではまた明日。

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