幼馴染と僕

 僕には幼稚園からの幼馴染がいる。人生のどの時代を思い返しても彼がいたのに、今では連絡すら業務的で笑ってしまう。人との関わりというのはこんなにもあっけないものだったか。距離が近いとそれに甘えてしまって、離れた時どんな接し方をすればいいのかわからなくなってしまった。連絡の取り方がよくわからない、今まではそんなもの必要なく会いに行けばよかったからか。さて、正直ここに収められるかいまいち自信がないのだが、今回は僕たちについて高校卒業までを時系列に沿って少し書いてみようと思う。半ば備忘録のようなものになりそうだ。

 僕らはとても近くに住んでいて、同じ幼稚園に通っていた。しかし僕にはもう一人仲の良い友人がいて、彼と二人でよく幼馴染にいたずらをしていた。つまりここでの関係というのはあまり良いものではない。僕らが悪いのだが、幼馴染の母親にあまり友好的思われていないのはこの時代があるからだろう。そんな関係がダラダラと3年間ほど続き、小学生になった。

 二人揃って同じ受験校の小学校に合格したため、当然同じ学校に通うわけだが、登下校などは別だった。僕には同じ地区から通う友人が他にもいたため、彼らと登校していた。クラスも離れ、そのまま僕たちの関係は希薄になる。そこから紆余曲折あり、五年生に上がった時同じクラスになった。僕の友人関係は一年生の頃とはすっかり変わっており、幼馴染と話すようになるまでに時間はかからなかった。しかし、ここからが問題なのだ。この頃の僕は非常に荒れていて、すぐに手が出てしまうどうしようもないやつだった。幼馴染とは喧嘩ばかりで、前期に何度か隣の席になった時は授業中でも大喧嘩になってしまうため、後期は担任に席を離されていた。どうしても家が近いせいで会ってしまうのが嫌で、登校は時間をずらし、下校が被ると互いに存在を無いものとしていた。二年に一度のクラス替えだったので、六年生も同じクラスだった。僕たちは喧嘩ばかりしていたが、ある時幼馴染がクラスのいじめっ子たちに絡まれているのを見た。その日の帰り、僕たちは久しぶりに少し長く話した。それから少しづつ話すようになったが、相変わらずだったので喧嘩の量も増えた。僕はすぐ手を出したが、幼馴染は僕に手を出さなくなった。後期になるにつれ僕も落ち着き出して、卒業する頃にはかなり平和な関係を保っていた。登下校時も顔を合わせれば楽しくゲームの話なんかをしていた。

 中学校に進学した。ほぼ一貫なのでまた同じ学校に通うことになる。僕たちは小学校から同じクラスにしないように言われていたため、3年間同じクラスにはならなかった。それでもこの3年間が僕たちの仲を一気に縮めたのは言うまでもない。しかしここでの話は正直あまり覚えていないので、身バレ防止のためのフィクションが織り交ぜられていると考えてほしい。ちなみに僕は一年生の頃にもう暴力はしないと決めたので、ここから先の喧嘩というのは口先だけのものだ。成長とともに力も強くなり、彼を深く傷つけてしまうことが増えたからだ。廊下で何度か喧嘩をしていたが、内部進学をした生徒は僕たちの様子を見慣れていたので特に大事には至らなかった。

 二年に進学した頃だろうか、幼馴染は恋愛という感情と向き合っていた。家の近くで二人ベンチに座って、僕は相談を聞いていた。僕はこの時、相手からも話を聞いていたため板挟み状態になっていたが、とても幼馴染には言い出せなかった。僕は知っていた、うまくいかないであろうことを。それでもプレゼントに悩む姿や彼女について真剣に考え込んでいる彼の話を聞くことしかできなかったのだ。しばらくして彼は僕を呼び出していろんなことを聞いたが、その時本当に久しぶりに涙を見て、なんてできた人間なんだろうと思った。僕を責めることもせず、ただ本当に彼女を大切に思って流している。それと同時に自分はなんて薄情なやつなのだと自分を責めた。今考えるべきことでは無いそれを隅に追いやって慰めの言葉をかけた。この時から、僕は幼馴染に対する印象が変わった。彼はあまりにも優しく、真っ直ぐで、失わせたくないと思った。気づけば、僕は彼に起こりうる限りの災難を排除するよう努めていた。

 その後は僕にも色々とあり忙しくなってしまったため、僕らの話は三年生の冬に飛ぶ。受験シーズンを迎え、何かと寂しくなる季節だ。塾の帰りに迎えに来てくれたり、土日に勉強を教えてくれたり、そんな日常の中で彼は僕の志望校についての話をした。僕は、少し離れた場所にある高校に奨学金を狙って受験を決めていた。元々は幼馴染と同じ高校を受験する予定だったが、大学のことを考え変更に至った。このことを話すと本当に残念そうにしていた。僕自身、幼馴染と違う環境に行くことを怖がっていた。孤独を感じていたし、僕らの間に理解し得ない何かができてしまうのでは無いかと思った。それは僕の幼馴染への依存を明白にし、この時ようやく、どれだけ自分の人生で彼が大きな存在になっていたかを思い知らされた。彼は今からでも同じ高校に通いたいと何度も言ってくれたが、僕の将来の話を聞いて背中を押してくれた。僕たちの想い描く将来は全く違っている。どうしても、別々の道を歩むことになるのだ。ここは、そんな将来への第一歩だった。卒業式が近づいてきたある日、僕は言わなければならないことがあった。「小学生の頃はごめん、僕が悪かった。3年間ありがとう」「俺は幼馴染が君でよかった。高校は離れるけどさ、いつだって会えるよ。これからもよろしく」余程嬉しかったのか、僕は今でもこの会話を覚えている。当日は小学校の先生方も別れの言葉を告げに来てくれた。僕らを見て、六年生時の担任は成長したな、と涙ぐんでくれた。学校の前に立ち、二人で写真を撮った。これまで二人の写真はあまり持っていなかったから、なんだか新鮮だった。

 ここまで長く日本語で文を書くのは久しぶりのことで、イマイチ自信がない。それにしても、思っていたよりだらだらと書いてしまった。高校編はまた今度にしようと思う。

 それではまた明日。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?