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朝食にミーフン 〜マレーシア編〜

ディナーとは、本来は1日で最も大事な食事のことを言うが、現在では夕食のこととされているらしい。一方、私の中では、朝食もとっても大事なのだ。

今から10年くらい前の話だ。その頃は、マレーシアのジョホール州にあるバトゥ・パハッに取引先があったため、頻繁に出張で訪れていた。イスラム教徒が多いこともあり、早朝の礼拝の時間になると、モスクからアザーンという呼びかけがあって、それがスピーカーを通してバトゥ・パハッの街中に響く。そして、実質私の目覚ましともなり、かなり早く起きるという流れがいつもだった。

私は、基本的には「朝食がまあまあの古いホテル」と、その近くにできた「朝食が不味い新しいホテル」のどちらかに滞在していた。最初は、古いホテルに滞在していたのだが、一瞬お化けを見たような気がして、それ以来、新しいホテルに滞在するようになったのだ。ちなみに、私に霊感はないはずなので、単に疲れていたのか、幻覚を見ただけなのかもしれない。

新しいホテルは、表面的には綺麗でモダンな雰囲気である一方、よく見ると細部は安っぽかったり、シャワーや蛇口の場所が少し変な位置で使いにくく、お湯が出ない日もあったように記憶している。何より、朝食は、早い時間でも、どこかの残りものなのか、ラップがかかっているのに乾涸びていて、1、2度食べてみたが口に合わなかった。

なので、私は近くのコンビニのようなお店にて、小さなボトルに入ったあの日本の乳酸菌飲料を発見してからは、それを朝食代わりにしていた。クイッと飲んで、ヨォ~シ!と取引先に向かうという習慣ができていた。異国の地にいても、不思議と体調やメンタルさえ安定する気持ちになれた。でもそれだけだと、直ぐにお腹が空いてしまうことは多かった。

ある日、取引先の女性が、そんな私のために、彼女が息子たちに食べさせているという朝食をタッパーに入れて持ってきてくれた。私は驚きながらも、朝食事情を話したことで気を遣わせてしまったのだと知り、後悔し何だか申し訳ない気持ちになったのだった。

ゆっくりとそのタッパーを開けた。中に入ってたのは、ミーフンだった。(日本ではビーフンと呼ばれている細めの米の麺を炒めたもの)正直なところ、最初は、えっ朝からこれ食べるんだーと感じていたし、せっかくだしいただかないとだねくらいの気持ちだった。

全体にうす茶色で、確か具材のひき肉と野菜は少しだけ入っている程度で、細目のミーフンがふわふわとした軽い食感になるように炒められているようだった。でも一口食べて、予想外の美味しさにものすごく感動したことだけは鮮明に覚えている。朝食にぴったりで、全くあぶらっこくないし、お腹にやさしく入っていった。レストランで出てくるようなシーフードやお肉や野菜が盛り沢山のヘビーなミーフンではなくて、まさに気取らない家庭の味というやつだ。

今でも忘れられない、マレーシアの味の一つだ。

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いつかこの「地球人のおもてなし」がNetflixでドラマ化されたらいいなと夢みながら😴💫

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