シルバニアファミリー アニメ(2016〜2022)全話レビュー
文責:みん
はじめに
シルバニアファミリーは、エポック社から販売されているドールハウスおよび人形のことである。動物達が、欧米の田舎のような世界で生活する独自の世界観が形成されている。海外向けには何度もアニメ化されている他、2007年には日本向けにOVAが販売されている。
この記事では、2016年公開のWebアニメ「シルバニア村のたからもの」を起点としたシリーズ(Webアニメ全3話、ミニストーリー全4期、2022年アニメ全1期)の全話についてレビューを行った。本記事における批評及び解釈はあくまで個人の感想・意見であり、シルバニアファミリー公式の見解とは何ら関係がない。また、直接的に内容に触れる説明は少なめにしているが、それでも本編のネタバレが多数含まれている。本記事で扱う作品は、シルバニアファミリー公式YouTubeやdアニメストアで視聴可能であるので、是非一度視聴してみて欲しい。
基礎情報
2016年以降のアニメ「シルバニアファミリー」は、二足歩行の動物達が暮らす世界が舞台の3DCGアニメである。各作品は基本的に同じ世界の出来事で、放送順と作品内時系列が一致しているものと考えられる。ただし、設定が後から固まったキャラクターも多いので、出来事以外では整合性が取れない部分も多数ある。後から設定が加えられた要素の中でも、シルバニアファミリーの特筆すべき特徴として「Season3までキャラクターに名前がない」という点が挙げられる。名前が無いため、Webアニメ3作およびミニストーリーSeason1,2は全員お互いを「ショコラウサギちゃん」のように種族名で呼んでいる。また、同種である家族間では種族名で呼べないため、「お父さん」「お姉さん」等の親族呼称を利用することで成り立たせている。名前の有無のせいで混乱しがちだが、名前が付く前と後は基本的に起きた出来事は共通している。SF的に解釈するならば、起こる出来事は同じながら名前の有無という点が異なる2つの平行世界がある、と言えるかもしれない。
Webアニメ:シルバニア村のたからもの
2016年よりYouTubeで配信されているWebアニメで、今回取り上げる作品群の中では一番最初に公開された。一般的なアニメ1話分の長さ(約22分)であり、1話あたりの長さとしては全作通して一番長い。監督は作田ハズムさん、脚本は武藤京さん。
村のお祭りで「シルバニア村で一番素敵なものコンテスト」が開かれることになり、主人公もコンテストに参加することになる、という話。一作目ということもあり、以降の作品と比べると3DCGには若干ぎこちなさを感じる。また、食いしん坊のクマくん以外のキャラクターは殆ど設定が固まっておらず、後から視聴すると違和感を感じる部分も多い。しかし、作品としては非常に丁寧な作りで見応えがある。22分程度ながら登場人物一人一人に見どころがあり、話のテンポも良い。特に伏線が丁寧に回収されるラストシーンのカタルシスは圧巻である。ミニストーリーでよく使われるあの曲が終盤で劇伴として使用されるなど、後から見返して楽しめる要素もある。
Webアニメ:夢膨らむあこがれのまち
2017年よりYouTubeで配信されているアニメであり、同年秋から放送されたミニストーリーSeason1に先駆けて配信された。主人公のショコラウサギちゃんが、街でデザイナーをしている姉に会いに行く話。脚本・監督は「シルバニア村のたからもの」と同じ。
Web配信の続きだが、尺は11分と前作の半分程度になっている。そのため、前作と比べると伏線回収等の要素は少なく、あっさりした内容と言える。映像面では見どころが多く、モーションやライティングなどの面で3DCGのクオリティが上がっており、2022年版のアニメと比較しても遜色ない出来になっている。以降のスタイルはここで確立されたのだろう。また、ラストシーンでちょっとだけ登場する人物など、後のシリーズに繋がる伏線も用意されている。作品の雰囲気・方向性を決めた1話と考えられる。
シルバニアファミリー ミニストーリー Season1
2017年に放送された全12回の5分アニメ。監督は神谷桃子さん。脚本は水月秋さんが全話担当している。繰り返し(天丼ネタ)をベースにしたテンポの良い会話劇で、各キャラクターの個性を際立たせつつギャグ調でまとめるスタイルが多い。最初のシーズンながら、おおよそのキャラクター設定や話の方向性はここで決まっている。
第1話:ショコラウサギちゃんとみんなの夢
将来の夢をみんなで紹介しあう話。単に断続的な紹介が繰り返されるのではなく、今敏監督「千年女優」のようにそれぞれの空想の話がさも現実のように描かれ、スムーズにリンクしていく描写は見ていて心地良い。会話劇としても非常にテンポが良く、笑いどころもあり、子供向け5分アニメの1話としては完璧なスタートだろう。
第2話:秘密のツリーハウスツアー!
くるみリスくんが自分のツリーハウスを紹介する話。お調子者で不憫な役回りになりがちなくるみリスくんのキャラが完全に確立された回である。同時に、1話と同じ登場人物を活用することで、視聴者に主要メンバーを印象付けることにも成功している。それだけに、やはり各キャラクターにまだ名前が決まっていないのが悔やまれる。
第3話:いつもにぎやかショコラウサギファミリー
主人公ショコラウサギちゃんの家庭での日常を描いた話。善意100%で他人を面倒に巻き込むショコラウサギちゃんのキャラがある程度確立されているが、このキャラクター性が存分に発揮されるのは2022年版アニメになってからになる。Season1はキャラクターの名前が決まっていないため、「ショコラウサギファミリーはみんなショコラウサギしか名前がない」という大きな問題があるのだが、「お父さん」「お姉ちゃん」等の呼び名でうまく誤魔化している。逆に、姉や兄から妹を呼ぶ場合や、両親から子供を呼ぶ場合など、名前呼びでなければ違和感があるパートは綺麗に回避されており、銀河英雄伝説OVA「わが征くは星の大海」で卿(けい)呼びを上手く回避した首藤剛志さんの脚本のような技巧を感じさせる。
第4話:ハロウィン大作戦!
季節に合わせたハロウィン回。前回に引き続き家族間での呼び名を違和感なく誤魔化す手腕は流石である。Webアニメから一貫した食いしん坊でわかりやすいクマくんの性格を天丼ネタでダメ押し的に強調しつつ、既にキャラが周知されたくるみリスくんでオチを作っている。シンプルかつ綺麗にまとまった1話となっている。
第5話:お誕生日ケーキ・プレゼントレース
ショコラウサギちゃんにどのケーキをプレゼントするかをレースで決める話。「食べ物が無駄になるような描写は絶対に避ける」あたりに子供向けアニメとしての責任を感じる。純粋な善意から始まったレースで、全員を評価しつつも最終的には慎重な性格のシルクねこちゃんを立てるスタンスは、現代的な価値観で再構成された「うさぎとかめ」と呼べるかもしれない。
第6話:大きな海でバケーション!
「シルバニア村のたからもの」でのキーキャラクターだったショコラウサギちゃんの祖父・祖母が再登場している。勘違いから始まるドタバタ劇のテンポの良さや、水中から飛び上がるシマネコちゃんの「アニメらしい」動きなどが特徴的だが……この話、百合アニメで言われるような尊さがあると思う。ショコラウサギちゃんとシルクねこちゃんの友情や、シマネコちゃんに惚れるおばあちゃんなんかに「らしさ」を感じる。あとシマネコちゃんのイケボがかっこいい。すごい好き。
第7話:すてきな街のショコラウサギのお姉さん
街で働くお姉さんにフォーカスした話。妹への手紙という形で街にいる登場人物を紹介しながらも、次回に繋がる話になっており、わかりやすさを重視した丁寧なシリーズ構成が垣間見える。ショコラウサギちゃんだけでなく、シルクねこちゃんなどのお姉さんも登場するためか、珍しくテロップでキャラクター表記が入る。また、この話までは頑張ってきた呼び名の回避はここで限界が来たのか、ショコラウサギのお姉ちゃんが妹を「ショコラウサギちゃん」呼びするシーンが入っている。あなたもショコラウサギですよね……? 一応、お姉さんの方は周囲の人から「ショコラウサギさん」と呼ばれているので、区別はできている。繋ぎの話故か、オチも無く単調気味なのが少し残念ではある。
第8話:お誕生日の素敵な魔法
ショコラウサギのお姉さんが、誕生日を祝う手紙の差出人を探す話。お姉さんが働く場所はまだ「夢が膨らむ憧れの街」という呼ばれ方をしており、キャラクターの名前同様しばらく名称は用意されない。前回登場した街の登場人物が、各キャラの持ち味を活かしつつ再登場しており、それぞれの特徴がしっかり印象付けられる構成となっている。ショコラウサギのお姉さんの恋人(と思われる人物)が「夢膨らむあこがれのまち」以来の再登場となるが、Webアニメと同様に一切喋らないし顔も映らない。エロゲ主人公か何か?
第9話:お姉さんたちのドリーム・デート!
「夢が膨らむ憧れの街」に住むお姉さん3人組が憧れのデートを交代交代で妄想する話。妄想のたびに彼氏役が誰かしらに押し付けられるのだが、その際には女性声優さんのイケボ演技が聞ける。かっこいい。恋バナでキャッキャと盛り上がる描写は、このアニメのメイン視聴者層と思われる女児の皆さんには受けるのではないだろうか。
第10話:たすけて!トイプードルちゃん
第1話から何度も登場はしていたが、メイン回のなかったトイプードルちゃんの回。結局シマネコくんのメイン回はなかったか……。「ハロウィン大作戦!」に近い天丼ネタだが、今回はオチを担う不憫な役回りがくるみリスくんではなくクマくんに変わっており、キャラクターに向けられるヘイトが巧みに調整されている。ただ、くるみリスくんやクマくんのような個性的なキャラに囲まれたせいか、他のキャラと比べたトイプードルちゃんのキャラ付けの薄さが強調されてしまっているようにも見える。
第11話:どきどき演奏会
ショコラウサギちゃん達が演奏会をする話。ライオンさんの緊張しがちな性格がギャグのベースになっているのだが、くるみリスくんの謎の人脈パワーの方が気になる。どんな交渉したの? 驚きの描写や最後の終わり方などに古典的というか、アニメ的な演出が使われており、わざとらしい号泣シーンも含めてこれまでの話よりもギャグアニメ色が強い。ここで活用された驚き演出は以降のシリーズのギャグ回でも多用されており、第11話は作風の幅を広げた重要な回と言える。
第12話:お姉さんたちのドリーム・プレゼント!
クリスマスに欲しいプレゼントをお姉さん3人組が妄想する回。第9話の構成を繰り返す形である。予想通りの流れから、あえて家族愛を感じさせるパートを最後に持ってくることで第9話の流れから少しずらしつつ、その後に予想通りの恋バナパートを入れてまとめる構成は、意外性とまとまりのバランスが良い。それはそれとして、Season1最終話なのに主人公が一度も喋ってないのはどうなのだろうか……。
シルバニアファミリー ミニストーリー Season2(アイビー)
2018年に放送された全12回の5分アニメ。Season1と同様に監督は神谷桃子さんで、脚本も引き続き水月秋さんが全話担当している。ライティングの調整がシルバニアファミリーにあった暖かみのある表現を生み出しており、3DCGのクオリティ的にはこのSeasonで完成されたのではないだろうか。
第1話:おはよう!ショコラウサギファミリー!
寝坊した父の代わりに、ショコラウサギファミリーの3人が朝食を作る話。冒頭の家のシーンの柔らかなライティングや、朝食作り中のキャラクターのテンポの良い動きなど、Season1からの進化が垣間見える。Season1第3話で若干描写されていたショコラウサギちゃんの「善意100%で他人を面倒に巻き込む」キャラが、メシマズ属性追加でさらに強化されるなど、キャラクター性を強化する試みも確認される。
第2話:わくわく!森のたのしいようちえん!
ショコラウサギちゃんの妹が通う幼稚園の話。興味の方向性がちょっとしたことで変わったりする幼稚園児の描写が微笑ましい。これまでフォーカスの当たっていなかった主要メンバー達の妹・弟に焦点を当てつつ、演出的にも新しい手法(イメージ映像に白枠のキャラを合成するスタイル)も取り入れるなど、Season2ならではの挑戦が詰まった回と言える。ショコラウサギちゃんの妹は本編前の紹介で「ショコラウサギの赤ちゃん」と呼ばれているが、ショコラウサギ一家にはもっと小さい赤ちゃんが家族に2人おり、名前が無いことの辛さが滲み出ている。赤ちゃん呼びで本当に良いのか? ちなみに、ここで初めて登場する幼稚園バスのナンバープレートは「H4P9Y」と謎にleet表記になっている。ついでに言うとショコラウサギちゃんの家の車のナンバープレートは「F4M1LY」である。
第3話:みんなの憧れ 街のすてきなカップル
ショコラウサギのお姉さんが働く「夢が膨らむ憧れの街」の話。初登場から2年、ついにショコラウサギのお姉さんの彼氏、シナモンウサギのお兄さんが顔出し声付きで登場。今はちょっと名前を出しにくいあの人がイケボ演技を披露している。演奏会が引き続き行われている描写があるなど、Season1からの繋がりを感じさせる回でもある。今回もくるみリスくんが演奏会をプロデュースしたのだろうか……。
第4話:助けて!森のお助け隊!
お祭りの準備で起きるトラブルを、森のお助け隊ことマシュマロネズミの2人が次々と解決していく話。天丼ネタをしつつキャラを立てるスタイルはもはやお決まりのパターンと言える。マシュマロネズミの2人は得意分野がはっきりしており、初登場ながらキャラが立っている。片方は後に役割を奪われることになるのだが……。ラストシーンで事件の元凶が一緒になって助けを呼ぶあたりのシュールさは、笑いの方向性としてシルバニアファミリーでは新しさを感じる。
第5話:わくわく!赤ちゃん演奏会!
第2話に続き幼稚園を舞台にした話。ショコラウサギちゃんのバイオリン演奏能力が活かされている他、ショコラウサギの赤ちゃんの常識人キャラも強調されている。保育士であるみるくウサギのお父さんなどは、登場2回目ながらもう苦労人キャラが板についている。キャラを立てつつオチも綺麗に決まっており、素直ながらよくまとまっている。脚本の水月秋さん的にも筆が乗るのか、以降も幼稚園児組が活躍する回は多い。
第6話:メイプルネコさんの落とし物
「夢が膨らむ憧れの街」で、街のトラムを運転するメイプルネコのお父さんに主題を当てた話。落とし物探しでメイプルネコのお父さんのうっかりした性格を見せつつ、Season1で活躍した街のお姉さん3人組を紹介していく流れで、Season1第8話と構成が近い。こちらは、メイプルネコさんの口癖でオチとしており、Season1第8話と比べてコメディ寄りの話となっている。
第7話:お兄ちゃんを追いかけて
くるみリス兄弟に焦点を当てた話。幼稚園児組の掘り下げ回であると同時に、くるみリスくんの兄としての側面を描いた微笑ましい回でもある。ウケが良かったのかそれとも書きやすかったのか、くるみリス兄弟の話は後の「フレアのハッピーダイアリー」でも何度か登場する。くるみリス兄弟とショコラウサギ姉妹に加えそれぞれの母親が同じ空間にいるため、呼び名的にはかなり難しい状況ではあるが、上手く混同しないようにまとめられている。
第8話:ショコラウサギのお姉さんのお仕事ダイアリー
「夢が膨らむ憧れの街」で働くショコラウサギのお姉ちゃんのお仕事の話。抽象的で無茶振りな発注に全力で応えるお姉さんの苦労が伺える。途中のスローモーションシーンは、わかりやすい構図と綺麗な演出が組み合わさったSeason2屈指の名シーンだと個人的に思っている。話は普通によくできているが、くるみリスのお母さんのキャラが非常に強く、内容以上に印象がそっちに引っ張られてしまう。
第9話:ツリーハウスの謎
ツリーハウスにお化けが現れるという噂をみんなで確かめに行く話。微妙にホラーな雰囲気だが、Season1第11話の驚き演出が天丼的に活用されることでギャグっぽい印象も付与され、上手くバランスが取れている。この回で「くるみリスの女の子」が初登場するが、初登場にも関わらず「普段とは印象が違う」と言われ、その後に印象が違う理由を淡々とくるみリスくんが説明するパートが入るのだが、このあたりは説明的すぎて正直不自然さを感じてしまう。ちなみにこれ以降、くるみリスの女の子の出番は無い。一体何者だったんだ……。
第10話:ハリネズミちゃん、街へ行く
「夢が膨らむ憧れの街」にドレスを選びに来たハリネズミちゃんの話。ハリネズミちゃんは、都会のレディに憧れるお調子者な田舎者という印象で、1話ながらキャラが立っている。そういえばショコラウサギちゃんやくるみリスくんは初登場時から異様に都会慣れしているが……もしかしてシルバニア村には後から移住してきたのだろうか。これまでは緊張しがちな面ばかり強調されていた、ライオンさんのイケメンっぷりが発揮された回でもある。この回でもSeason1第11話の驚き演出が活用されている。
第11話:わくわく!赤ちゃんおゆうぎ会!
再びの幼稚園のお話。劇の最中ながらやりたい放題動く赤ちゃん達と、それに翻弄されるみるくウサギのお父さんが描かれ、第5話と近い構成の回になっている。何話ぶりかの天丼ネタということか、オチもあえて同じパターンが流用されている。見てて楽しいし書いてる方も楽しいだろうなと感じる話である。
第12話:うきうき!おめかしタイム!
これまでとは逆パターンで、「夢が膨らむ憧れの街」にお姉ちゃん3人組が帰ってくる、という話。子供だけでお化粧をしてみたらやりすぎちゃった、というよくあるパターンの話だが、シルクネコのお姉さんもSeason1でお客さんにかなり奇抜で濃いお化粧をさせてたような……。3組の姉妹愛で終わるあたり最終話らしくまとまりが良い話になっている。
Webアニメ:空飛ぶみんなの大きな夢
2019年よりYouTubeで配信されているアニメ。Season3に先駆けて配信された。Webアニメの2つ目「夢膨らむあこがれのまち」と同様に時間は11分である。監督、脚本、演出、CGディレクターを神谷桃子さんが担当しており、Season1,2で脚本を担当した水月秋さんも脚本協力としてクレジットされている。同様に、三宅隆太さんが脚本協力として参加している。
話自体はシンプルでわかりやすく、そこに力強い劇伴が加わり、まるで劇場版のような盛り上がりを感じさせる。ミニストーリーではあまり扱っていない「父と息子の関係」にフォーカスを当てたのもスペシャルらしさがあって良い。話の本筋に当たるログハウスの組み立てはやってることがかなり無茶苦茶なのだが、玩具が元のコンテンツらしい発想という意味では面白い。実際、アニメでも建物やキャラクターの家の3DCGは意図的に「おもちゃっぽさ」を出して作られている。というか、形状は多分おもちゃの家そのままである。話のテーマやおもちゃを合体させるような描写を考えると、ミニストーリーよりも男児向けに作られた話のようにも思える。
シルバニアファミリー ミニストーリー Season3(クローバー)
2019年に放送された全12回の5分アニメ。監督はSeason1,2から引き続き神谷桃子さん。脚本は「小学館ミュージック&デジタル エンタテイメント(SMDE)」が担当したことになっており、個人名はわからない。脚本協力としては、「空飛ぶみんなの大きな夢」と同様、水月秋さんと三宅隆太さんが参加している。今Seasonからキャラクターに名前が付与され、呼称がわかりやすくなると同時に、脚本・表現の幅が大きく広がっている。
第1話:チョコレート一家のピクニック
一家でピクニックに行くはずが、お父さんが間違えて車を修理に出してしまい……という話。「シルバニア村のたからもの」で登場したキラキラ湖がピクニック先になるなど、過去作視聴者へのサービスも見られる。強調したかったのか、それともこれまで我慢していた反動か、お父さんからの「フレアちゃん」呼びが異様に多い。むしろよく今まで回避できてたな……。お父さんの猛ダッシュなど、テンポの良い動きも見どころ。フレアちゃんの描くスケッチなど、細かい部分にも力が入っている。
第2話:ドタバタ!たのしいピザ作り
村のみんなでピザを作る話。Season2第4話で活躍した森のお助け隊が再び大活躍する。また、これまでトラブルメーカー的な役回りばかりだった、クマくん改めピアーズくんの珍しく真っ当な活躍回である。テンポの良い天丼ネタと少しずらしたまとめ方が面白い。また、今回に限った話ではないが、食事の3DCGは全体的にクオリティが高い。特にピザは本当に美味しそう。深夜に見ると飯テロになり得るので注意が必要だろう。
第3話:たいへん!家出しちゃった!?
フレアちゃんの妹、クレムちゃんが姉妹喧嘩を理由に家出する話。家出とあるがシリアスな展開ではなく、ギャグ寄りの話となっている。演出・表現は丁寧で、物置からクレムちゃんが出てくるシーンでは、立つクレムちゃんの姿がフローリングに反射する様子まで丁寧に描写されている。その反面、遠景から撮ったシーンではキャラクターの地面の影が省略しており、リソース調整を図っているようにも見える。
第4話:わたしはお姉ちゃん!
お母さんの頼みでおつかいに行ったフレアちゃんと、勝手について行ったクレムちゃんの話。フレアちゃんが見ていないところでお菓子をカゴに入れるクレムちゃんの描写は、子供受けする王道のギャグシーンだろう。それでいて、親子の話を交えつつフレアちゃんの成長を描くあたり、子供向けアニメとして非常にバランスが良い。
第5話:あこがれのおへや作り!
幼稚園のみんなのあこがれの部屋を作ってみよう!という話。幼稚園児組に大人組が振り回されるというお馴染みの構成だが、幼稚園児組がちゃんと敬語で「お願い」をするようになるなど、Season2からの成長を感じさせる。主人公フレアちゃんが大人側にいる点も興味深い。
第6話:お姉さんたちのファッションショー
「夢が膨らむ憧れの街」で、フレアちゃんの姉、ステラさんがドレスのカタログを作る、という話。カタログ作りの撮影のはずが、みんなで盛り上がってしまい……というところまではシルバニアファミリー定番の流れだが、最後に忘れていたカタログ作りのことを指摘され直しても開き直れるあたりにステラさんの大人の余裕を感じる。「ここでフレアちゃんなら照れるか慌てるかした後にカタログ作りに戻るだろうな」と容易に想像できるあたりは、3クール目の貫禄がなせる技と言える。ファッションショーパートではシルバニアファミリーらしからぬ曲調のBGMが使用されており、結構かっこいい。
第7話:月のようせい
お楽しみ会の出し物の練習をするフレアちゃんとローズちゃんの話。お楽しみ会の場所や出し物を行うメンバーなど、「シルバニア村のたからもの」を元にした描写が多く、過去作視聴者へのファンサービスを感じる。ただ、今回登場するローズちゃんは初登場の新キャラなのだが、話の展開はありふれた友情ものでありローズちゃんを出す必要性が少ない。以降もローズちゃんの出番はほぼなく、代わりにシマネコくんあたりの掘り下げをすべきだったようにも思える。ちなみにシマネコくんは、ミニストーリーでは主要キャラの1人みたいな立ち位置の割に出番が少なく、「フレアのハッピーダイアリー」ではついに出番が無くなってしまった。
第8話:サプライズプレゼント
「夢が膨らむ憧れの街」で、ステラさんが彼氏にサプライズプレゼントをする話。彼氏にはウィリアムという名前が付けられた。特にオチもなくステラさんとウィリアムさんのイチャイチャを5分間見させられ続ける。ちなみにウィリアムさん、服を一目見ただけで「サイズが自分にぴったり」だと判断している。流石に早すぎないか?
第9話:園長先生のお誕生日パーティー その1
もはやお馴染みの幼稚園回であり、なんと前後編である。めちゃくちゃウケが良かったのか、それとも作ってて楽しいのか、どっちだろうか……。幼稚園児たちが、お世話になっている園長先生へのサプライズ誕生日パーティーを企画する話。パーティーの準備過程を一枚絵の連続表示で示したり、キャラの足元を映さず背景+立ち絵だけで話すシーンを入れるなど、作業量を減らす努力が伺える。
第10話:園長先生のお誕生日パーティー その2
第9話の続き。驚き演出が活用されテンポが良く、それでいてラストはほのぼのとした微笑ましいものになっている。粘土がぐにゃりとする動きがリアルでとても良い。ちなみに園長先生にはケイトさんという名前があり、エンディングではその表記になっているのだが、劇中ではずっと園長先生呼びである。混乱しないのだろうか。
第11話:すてきな記念日
「夢が膨らむ憧れの街」で、ウィリアムさんがステラさんと付き合い始めた記念日をお祝いする話。第8話の服を着用したウィリアムさんがダンスでサプライズする愉快な話である。突然踊り出すあたりにミュージカルらしさを感じるが、歌うパートがなかったのは尺の問題だろうか。
第12話:いつもなかよし、チョコレート一家!
フレアちゃん一家がシルバニア村の家に大集合してお祝いをする話。Season2の最終回がお姉さんだけだったのに対し、Season3では祖父祖母も帰ってきて、一家揃って賑やかになっている。第1話、第4話など、Season3は家族愛ベースの話に重きを置いているのかもしれない。そしてなんと、Season2第1話のクソマズ激甘オムレツが美味しくなって再登場。オムレツにグミとかどうやったら美味しくなるんだ……?
シルバニアファミリー ミニストーリー Season4(ピオニー)
2020年に放送された全12回の5分アニメ。監督はこれまでに引き続きの神谷桃子さん。脚本が複数人が交代交代で担当している。5分アニメのミニストーリーとしては現状最後のシーズンとなる。基本的にはこれまで通りSeason3から続く物語なのだが、実はキャラクター設定を注意深く観察すると、Season3と4にはかなり間が空いている可能性が示される。詳しくは第3話のレビューを参照して欲しい。
第1話:いつだってレッスン!
ファミリーダンスコンテストに出場することになった主人公一家の話。脚本は米内山陽子さん。これまで出番の少なかったフレアのお母さん、テリーさんに焦点が当てられている。細やかなダンスの動きなど見どころは多いが、話は単調気味で、これまでのSeasonにおける「テンポの良いギャグ」の印象が良くも悪くも薄まっている。
第2話:ハッピーイースター!
幼稚園でイースターの準備をする話で、脚本は鈴森ゆみさん。これまでは放送時期に合わせてハロウィンやクリスマスをやっていたが、今回は放送時期を無視してイースターを扱っている。オチも含めて定番のパターンだが、セリフや外見、服装からはクレムたち幼稚園児組の確かな成長を感じられる。全体的に激しい動きが減ったことと、BGM的にドタバタEND感が薄れてしまったのが個人的には残念ではある。
第3話:ドタバタ☆ペルシアン一家
ペルシャネコのペルシアン一家の話。脚本は、Webアニメ3つ目やSeason3で脚本監修をしていた水月秋さんと三宅隆太さんの2人が担当している。シリーズの大半を担当する水月秋さんが担当ということもあってか、ギャグや会話のテンポがとても良い。ペルシアン一家は今回が初登場となる一家なのだが、お父さんのルーカスさんのキャラがとにかく濃い。話自体はシンプルだが、癖の強さでは全Season通してトップのエピソードではないだろうか。
さて、このペルシアン一家は本編初登場と言ったが、実はこの表現は正確ではない。既にSeason4第2話の時点で、ペルシャネコの赤ちゃん、ライアンくんが登場している。しかし、幼稚園児の数は変化していない。そう、ライアンくんに変わって、これまでいたはずのシルクネコの赤ちゃん、ギリーちゃんがいなくなっているのである! それだけでなく、これまでメインキャラの一人だったシルクネコちゃんことティファニーちゃんはSeason3第7話以来登場しておらず、後のSeason4第5話や第9話、第12話ではティファニーちゃんが担当していたはずの友人ポジションをペルシャネコのライラちゃんが担当しているのである! これだけならシルクネコ一家からペルシャネコ一家に設定の変更があった、で済むのだが、街に暮らす仲良しお姉さん3人組の1人は、Season4第11話では依然としてシルクネコのお姉さん、ルルさんが担当している……。つまり、街にいるお姉さんはそのままに、シルバニア村のシルクネコちゃん一家はSeason3と4の間で他の村へ引っ越し、その後すぐに主人公たちの仲良し5人組にはペルシャネコのライラちゃんが加わった、という経緯が予想できる。Season3と4の間にはシルクネコちゃんお別れ会やラルフちゃんとの交流などの語られない物語があったはずだが、今後触れられる機会はあるのだろうか……。
第4話:ドキドキ!ホラーナイト
クレアちゃんが友人2人を自作のお化け屋敷に誘う話。脚本は米内山陽子さん。Season3第3話や第5話で登場したチョコレート家の物置を活用している。誘うキャラの人選や驚き演出の繰り返しなど、Season2第9話を踏襲していることが伺えるが、驚かされるたびに倒れる表現は邪魔だったのか削除されてしまった。主要キャラながらSeason3以降の出番が少なかった、くるみリスくん改めラルフくん、およびトイプードルちゃん改めメリンダちゃんに焦点を当てた話となっている。
第5話:名探偵フレア
お泊まり中にお菓子が無くなった事件を、(自称)名探偵のフレアが調査する、という話。脚本は米内山陽子さん。子供向けながらに本格推理!だと流石にわかりにくいからか、最初から視聴者には犯人が示されており、ギャグ調のシナリオになっている。Season3第4話にもあったが、こういった「視聴者から明らかにわかっていることが作中の人物にはわかっていない」的なシーンは子供ウケが良い。驚き演出やテンポの良い会話もあり、癖は少ないがシルバニアファミリーギャグ回の見本のような内容になっている。
第6話:フォトジェニック・タウン
「夢が膨らむ憧れの街」で、人気フォトグラファーのフェリシアさんが写真展のための写真を集める話。脚本は米内山陽子さん。フェリシアさんはSeason3第6話以来の出番だが、自分の写真展で気合が入っているからか、前回登場時よりもハイテンションで濃いキャラクターになっている。冒頭の演出やラストシーンなどで「第四の壁」に気付いているかのような描写があるのは、カメラマンという職業を活用した入れ子構造的表現だろうか。このアニメもまた、日常のワンシーンを切り取った映像作品だと、メタ的な視点から伝えるのは興味深い演出と言える。
第7話:ねがいを叶えて!まほうのクッキー
マラソン大会が嫌なハリネズミちゃん改めアビゲイルちゃんが、願いが叶う魔法のクッキーで大会の中止を願う話。脚本は鈴森ゆみさん。アビゲールちゃんはSeason2第10話以来の登場となる。忘れられてなかったのか……。お馴染みの驚き演出や駆け足の演出などギャグアニメ的な演出を多数取り入れつつ、最後はなんとなく良い感じの雰囲気で締める……と見せかけて、締まらない。キャラクターの印象が強く残る面白い終わり方だが、効果音とか劇版が「良い話風」なせいでシュールギャグっぽいシーンになってしまっている。もうちょっとギャグらしい音を入れた方が子供にはオチがわかりやすかったのではないだろうか。
第8話:シロップパーティ
幼稚園のみんなで作った木苺のシロップが完成したので、食べてみよう、という話。脚本は米内山陽子さん。あらすじで話すことが少なすぎて、冒頭のナレーションが爆速で終わって変な間が生まれている。もうちょっとなんとかならなかったのかな……。一枚絵を背景に横並びで子供が相談するシーンなど、作業量を減らす努力がうかがえる他、驚き演出などで多用されていた、エフェクト的な背景にキャラクターを被せる手法も活用されている。やはりレンダリングの手間とかが減って楽なのだろうか? シナリオ的には幼稚園児組が順番に自分の意見をあげていく感じだが、大人無しで解決させることで成長が感じられる構成になっている。
第9話:キャンプ大ピンチ
フレアちゃんのお父さんがキャンプに夕飯の食材を忘れてしまったので、みんなで集めることになるという話。脚本は鈴森ゆみさん。釣りのシーンは、古典的なギャグシーンという感じで面白い。別に演出は特殊では無いのだが、シルバニアファミリーならではの柔らかな3DCGと組み合わさると不思議なシュールさがある。ただ、釣り以降はオチまでは特に山場もなく話が進んで終わる。りんご採集でも少しギャグがあった方がバランスが良かったのではないだろうか。
第10話:ステップ バイ ステップ
絵が描けなくて悩んでいるフレアちゃんに、お父さんが自身の経験を伝える話。監督の神谷桃子さんが脚本を担当している。バックに回想シーンを流しつつ白枠のキャラを合成する演出はSeason2第2話と同じパターンである。諦めずに努力する大切さを伝えつつ、その方向性が違うという部分を笑いに昇華しており、話としてのまとまりが非常に良い。このパターンは書きやすいのか、「フレアのハッピーダイアリー」でも流用された。
第11話:仮面パーティへようこそ
「夢が膨らむ憧れの街」で、ステラさんが仮面パーティのためのドレスを作る話。脚本は神谷桃子さん。フレアちゃん用のアクセサリーはビーズで作られているようで、子供が欲しがってもすぐに作れるように、といった配慮を感じる。物語の終盤では実際に仮面舞踏会が開かれるわけだが……動物たちなので仮面が一切機能していないし、何ならみんな名前で互いを呼び合っている。仮面舞踏会とは?
第12話:赤ちゃんがやってくる!
フレアちゃんの家に新しい家族が増える話。脚本は神谷桃子さん。主人公に弟・妹ができる展開は子供向けアニメでは結構よくあるが、4つのSeasonでキャラクターの成長を丁寧に描いてからの最終回に持ってくるのはお見事と言わざるを得ない。元々フレアちゃんのチョコレート家は両親+子供6人(姉のステラさんを含む)で8人家族なのだが、この話ではなんとそこに3つ子が生まれ11人家族になる。うーん、ウサギなだけある……。赤ちゃん見たさに友人たちが集まってきたり、成長したクレアちゃんが赤ちゃんに感動したりと、これまでのまとめとしては非常によくできている。ミニストーリー最終回として申し分ない出来だろう。お姉ちゃんことステラさんも呼んだらもう少しまとめらしくなった気がするが、シルバニアファミリーのシリーズが終わるわけではないので、そこまでは必要ないと判断したのだろう。
シルバニアファミリー フレアのハッピーダイアリー
2022年に放送された全13話(特別編含む)のアニメ。大半の役でキャストが変更されたが。各キャラクターの名前はミニストーリーSeason3,4の設定に準拠している。監督は河原真明さん。脚本は毎話交代で、鈴森ゆみさんと三浦有為子さんがシリーズ構成を務めている。1話あたり11分とミニストーリーの倍以上の尺が確保されたのも特徴的である。ただしその分、全体的にテンポがゆっくりになったという問題点もある。名前の表記も「[種族名]の[名前]くん/さん/ちゃん」という表記から、名前だけの記載に変化している。本記事でもそれに倣い、以降は敬称略で名前だけを示す。
全体的に画面が明るくビビッドな感じになり、CGモデルの質感もツルッとした感じに変わっている。動きも含めて、全体的に安っぽくなった印象は否めない。ただし、モフモフとした動物らしさが減ったことで、エフェクト背景とCGを合成するような演出の違和感は減っている。個人的にはミニストーリーの映像・雰囲気の方が好みだが、毎週11分の映像を作るためにはこの方が良いのだろう。また、このシリーズでは主人公フレアに「そうと決めたら、やらなくちゃ!」という決め台詞が用意され、毎回お決まりのパターンとして繰り返されるようになっている。
第1話:フレア・チョコレートのマジック
みんなでマジックを見に行ったフレアが、それに憧れて自分もマジックに挑戦しようとする話。脚本は三浦有為子さん。ただし、すぐにマジックの話が始まる訳ではなく、ミニストーリー未視聴で今作から入る人に向けてまずキャラクターの紹介パートが入る。……のは良いのだが、そのテンポが異様に速い。物語が始まるとフレアちゃんが視聴者に語りかける形でキャラクター紹介が行われるのだが、2分半くらいの尺で15人ものキャラクター紹介が入る。それも口頭での説明のみで、Season1第7話のようなテロップもない。なんかこう、アサルトリリィみたく名前表示できない? 子供はもちろん、大人でもこのペースでキャラを覚えるのは厳しいと思う。もちろんシナリオを理解する上で全員覚える必要は全くないのだが、だからこそ冒頭に無理やり15人もの紹介を入れたことに疑問が生じる。
後半はマジックのための特訓をするパートだが、ここではSeason4第10話のネタを活用してギャグパートに仕上げている。このシーンのフレアのお父さんは、ミニストーリーよりも表情豊かでコミカルであり、今作の3DCGの良さが出ている。ただ、それ以外のCGパートはぎこちなさを感じる部分が多い。最後にフレアちゃんとお父さんが披露するマジックは、前半にシャンテールちゃんが披露したマジックと違い「よく見るとタネがわかる」ものになっており、うまく差別化されている。その後の話も、王道ではあるが綺麗にまとまっている。冒頭の異様なキャラクター紹介パートを除けば、良い1話ではないだろうか。ちなみに、フレアの家の車がミニストーリーから変化しており、ナンバープレートも「F4M1LY」から「LOV31Y」に変わっている。なんでだろう。
第2話:オープン!森のこどもパン屋さん
こどもパン屋さんを開くことになり、フレアとお父さん、そしてライラとラルフの4人でパンを焼く話。脚本は鈴森ゆみさん。フレアのメシマズ属性、および「善意100%で他人を面倒に巻き込む」キャラが存分に発揮されているギャグ回になっている。また、友人のライラが「フレアの焼いたパンを食べさせられそうになる」などのシーンで割とガチで嫌そうな声を出しており、フレアとの対比でシュールな面白さを生み出している。テンポ良い掛け合いの中で主要キャラの活躍が満遍なく用意されており、オチにも意外性があって非常に良い構成の回である。
この回では、なんとトイプードルのメリンダがくるみリスのラルフに好意を示していることが示唆される。まあ、一緒にお化け屋敷いって一緒に驚く仲なんだからそれくらいあってもおかしくはないが、ミニストーリー4シーズンではそんな素振りは全く無かっただけに、驚く人も多いだろう。さらにライラに関しては、非常に高い計算能力を有していることが明かされる。それに合わせてか、ミニストーリーに登場した、森のお助け隊の計算担当キャサリンは出番が完全に消えている。記憶力担当ことクリストファーは今回も引き続き登場するのだが……うーん……。
第3話:わたしの親友 ライラ・ペルシアン
ライラと遊びに行く予定のフレアだったが、家の時計が壊れていて遅刻してしまう。そこで、ライラがフレアの家の時計を修理しようとする、という話。脚本は篠塚智子さん。ライラが機械弄りが得意という設定は唐突なようにも感じるが、Season4第9話本編前のキャラクター紹介で、設計図を書くことが趣味だと既に明かされている。フレアの「善意100%で他人を面倒に巻き込む」キャラが前回以上に存分に発揮されており、不快に感じる人もいるんじゃないかというレベルにまで達している。今回はフレアが大暴走しているためか、好き放題なフレアに突っ込むライラという形で話が展開していく。ミニストーリーなどではトラブルに対するドタバタ劇が多かったため、ボケ(?)とツッコミが明確に分かれた話は結構新鮮さがある。しかし、このスタイルにはまだ慣れていないのか、ボケとツッコミのパートを中心に、会話の間の取り方が不自然な部分が多い。脚本はかなり綺麗にまとまっているだけに、間の悪さで面白味が薄くなってしまっているのが残念だ。
第4話:ホーンテッドハウスへようこそ
遊園地のハロウィンイベントに参加したフレアの妹、クレムが、みんなを驚かせるためにホーンテッドハウスに隠れるのだが……という話。脚本は鈴森ゆみさん。今回は、「そうと決めたら、やらなくちゃ!」の決め台詞がフレアではなくクレムから発せられる。繰り返しのパターンからずらして変化球を投げるのは面白いが、第4話とは随分と速いタイミングである。ただ、これ以降も決め台詞の変化球は何度も現れるので、誰が決め台詞を言うべきかにはあまりこだわりは無いのかもしれない。クレム登場ということでかつての幼稚園児組がメインなのだが、全員かなり成長した姿で登場する。ミニストーリーからのファンからすると嬉しい限りだ。
この話では、幽霊に驚かされる場面が何度かあるが、目の大きさが変化しないシルバニアファミリーのキャラクターでは驚きの表情が作りにくさを感じるように見える。ここでこそミニストーリーの驚き演出の使い所だと思うが……。また、途中で、フレアがお化けのことをお化けに仮装したグロリアだと勘違いするシーンがあるのだが、そもそも黒猫の女の子がグロリアであるという情報が全然開示されていないので、普通に見ていても「?」となる。全体的に惜しい回。
第5話:ラルフ・ウォルナットの夏の日
ワクワクの森に遊びにきたラルフの話。フレアから縄跳び勝負を挑まれるも、運動好きながら縄跳びだけは苦手なラルフが、なんとか弟に良いところを見せようと苦悩する姿を描いている。脚本は篠塚智子さん。Season2第7話の兄弟関係をさらに深掘りする形になっている。運動好きなラルフが登場することもあってか、全体的にキャラの動きが多く飽きにくい。特に後半の縄跳びバトルは、動きのない一枚絵ばかりながら演出的にもやりたい放題で面白い。ここで使われているエフェクトと一枚絵を使った演出は、今作なら違和感なく見れるが、ミニストーリーの3DCGには明らかに合わない演出手法である。シナリオ的にもギャグとシリアスのバランスが良く、今シリーズならではの良さが存分に表現された回になっている。
第6話:仲なおり大作戦
フレアの姉、ステラと彼氏のウィリアムが喧嘩をしているようなので、なんとか仲直りさせよう、という話。脚本は三浦有為子さん。「夢が膨らむ憧れの街」は、「みんなの憧れの街」という呼び名に変わると同時に、「タウン」という具体的な名前(名前なのか?)が付けられた。今回はいつもの決め台詞が6人同時になり、戦隊モノの合体ロボの必殺技みたいなシーンになっている。
話の構成は、Season1第8話のように各キャラクターのお姉さんの元に会いに行って、解決策を検討していくというお馴染みのパターン。ただ、ミニストーリーよりも尺が伸びたためか、各パートが余裕を持って描かれている。最後の解決パートはちょっと過剰なやり方に見えるが、子供向けならこれくらいがちょうど良いのだろう。オチでは意外な伏線が回収され、ギャグとしても面白い。前回に引き続き、ギャグとシリアスのバランスが良い回と言えるだろう。ただ、ミニストーリーに近い構成で11分やったためか、少し間延びした印象も感じる。
第7話:やってきました!ゆめいろゆうえんち
遊園地に遊びに来た一行の前に、ミスターXと呼ばれる謎の人物が登場し、遊園地の好きなところの写真を撮るスペシャルイベントへの参加を求めてくる、という話。脚本は鈴森ゆみさん。たくさんのキャラがわちゃわちゃしている様子などが面白く、見せ方も安定してきたように思える。遊園地の華やかさを強調するために冒頭の幼稚園のシーンで彩度を下げるなど、細かな工夫も面白い。また、ライラの「はぁ…分解したい(迫真)」や、ハァハァ言いながらラルフをストーキングして盗撮するメリンダ、園内放送で喋る時に固有BGMも一緒に流れてくるミスターXなど、細かい描写でキャラが立っている。このあたりはミニストーリーには無かった方向性の新しいギャグではないだろうか。話の展開とキャラの個性が上手く噛み合っている。
第8話:ベイビーベイビートーク
お手伝いに疲れたフレアが突然赤ちゃんになる宣言をする話。脚本は鈴森ゆみさん。最初はお手伝いの話だったのが、次には「赤ちゃんになる!」と宣言する話になり、そして精神世界で赤ちゃん同士の会話を聞く話になるなど、目的や展開がコロコロと変わる回である。それでいて最後は各要素が綺麗にまとまるのが素晴らしい。赤ちゃんになる宣言をするフレアに賛同するラルフと、ゴミを見るかのような目で彼らを見下ろすライラなど、前回に引き続きミニストーリーとは毛色の違うギャグが多い。フレアの言動にライラが困惑する流れは個人的には結構好みだが、ミニストーリーに比べてフレアが精神的に幼くなったようにも見えるので、一長一短である。
第9話:憧れのバイオリン
クレムが姉のフレアのバイオリン演奏に憧れ、フレアのバイオリンに触ったところ、なんと壊れてしまった、という話。脚本は三浦有為子さん。ギャグの少ない回だが、伏線の回収(まあ普通に見ていれば予想は付くのだが)などもあり話は面白い。事件解決からの異様にスピード感のある展開は特に見どころ。ただ、ミニストーリーと違い尺ができたからか、これまではあまり無かった長めの回想シーンが入っている。大人視点では特にわかりにくさ等は感じないが、回想シーンのように時系列が前後する表現は子供には伝わりにくいと聞いたことがあるので、そこは少し不安を感じる。
第10話:ふしぎな花
非常に珍しい花のつぼみを見つけた仲良し4人組が、皆には内緒で咲くまで育てようとする話。脚本は篠塚智子さん。これまではあまり無かったキャラクター同士の喧嘩が描かれているが、11分の間で仲違いから仲直りまで済むので見ていて安心感がある。話の構成は子供向けの話によくある良い話という感じで、シンプルながら普遍的な面白さがある。また、第1話と比べると、キャラクターの動き・表情がかなり自然になっており、見ていても違和感はほとんどない。このように比較的真面目な、言うなればシリアス回なわけだが、ちょい役のはずのライラのお父さん、ルーカスが相変わらず濃いキャラを発揮しており、そこだけギャグアニメみたいな空気感になっている。なんでそんなずっとハイテンションなんだ……。
第11話:輝け!シルバニア村(前編)
クリスマスのお祭りに向けた準備の話。脚本は三浦有為子さん。前後編だが、前編は前編で結構まとまっており、お祭りでの演奏を成功させたいフレアと、お祭りでもみの木の代わりとなる飾りを考えるフレアの父の、お互いの苦悩が描かれる。平行する2つの話が1つのきっかけで解決する構成となっており、シンプルながら二者の活躍がわかりやすくまとまっている。ラストの、解決した2つの要素が劇伴で綺麗に繋がる部分はカタルシスがあり、演出も美しい名シーンである。ちなみに、前回に引き続き登場したルーカスは今回も個性的なキャラを発揮している。個性が強すぎる。
第12話:輝け!シルバニア村(後編)
前回の続きで、お祭り本番の話。脚本は前回と同じ三浦有為子さん。シナリオの構成自体はシンプルだが、メンバー勢揃いで困難に立ち向かう姿は王道の最終回で見応えがある。OPカットで本編が始まり、EDがロングバージョンになるなど、ミニストーリーではなかった最終回らしい演出も加わっている。またライラの祖父、リースが助太刀に来るシーンは予想通りながら流石の貫禄を感じる。ただ、この話でメインのガジェットとなる「キラキラ湖のキラキラ石」については、「シルバニア村のたからもの」以外では言及がない。過去作ファンには嬉しい展開だが、新規ファンは唐突に感じるのではないだろうか。
特別編:バースデイプレゼント
最終回後の特別編で、フレアの誕生日の出来事を描く。脚本は三浦有為子さん。マジックを披露するシャンテールや12時に仕掛けが動く時計など、過去話の要素を上手く回収している。天体観測の過去回想についてはこれまでの話に描写はないが、Season4の第3話でライラの家に回想と同じ望遠鏡があるのが確認できる。また、最終回で大活躍した「キラキラ湖のキラキラ石」の話はここでも登場する。どちらかというと、この話が第10話と第11話の間に入った方が、ライラの活躍にも繋がるし話が綺麗だった気がするが、なぜ特別編にしたのだろうか? 今作の締めくくりとなるラストシーンは、宇宙に4人が浮かぶイメージ映像になっており、感動というよりシュールな印象が強い。
まとめ
以上が、シルバニアファミリー全話のレビューとなる。丁寧な構成でシリーズの基礎を作ったWebアニメ、小気味良いギャグが魅力のSeason1、キャラクターや表現の幅が広がりパワーアップしたSeason2、名前が付与されると同時に、キャラクター達の確かな成長を示唆したSeason3、キャラクターが整理されると同時に成長と時間の経過が具体的な形で示されたSeason4、そして長めの尺と新たな表現法でシルバニアファミリーを再構築してみせたフレアのハッピーダイアリーと、どれも魅力的である。子供向けアニメであることは事実だが、大人でも楽しめる要素は多いので、未視聴の方は是非一度視聴してみて欲しい。
おまけ:個人的ベストセレクション
各シーズンから1話ずつ個人的なベストを選んだ。時間のない人はこれだけでも見て欲しい。
Webアニメ / 1:シルバニア村のたからもの
Webアニメ3作の中なら、やはり第1話が一番だろう。原点であることや時間が他より長いこともあるが、設定が固まっていないことを踏まえてもなお魅力的な脚本の構成が素晴らしい。
Season1 / 第6話:大きな海でバケーション!
Season1はどの話もテンポの良いギャグで個人的にかなり好みなのだが、特に6話が良い。話が、というよりシマネコちゃんが好きというそれだけの理由である。これ以降の出番が全然ないのが悲しい。
Season2 / 第11話:わくわく!赤ちゃんおゆうぎ会!
Season2からの幼稚園児組の話の中でも一番テンポが良く安定している回。伏線回収とかメッセージ性とかはないが、とにかく見ていて楽しい話である。
Season3 / 第4話:わたしはお姉ちゃん!
子供向けアニメとして、ギャグも教育的なテーマも含めて非常に出来が良く、5分で綺麗にまとまっている話である。フレアちゃんの成長から、シルバニアファミリーのアニメの流れを感じさせる点も良い。
Season4 / 第3話:ドタバタ☆ペルシアン一家
出来の良さとかもあるが、とにかくペルシアン一家の父、ルーカスのインパクトが強いというそれが一番である。全部通しで見てもすぐに思い出せるくらいに強い。ここで紹介した全作通して考えても明らかに1人だけキャラが強すぎる。目的もよくわからないし一体なんだったんだ……。
フレアのハッピーダイアリー / 第7話:やってきました!ゆめいろゆうえんち
子供向けの綺麗な話と、ちょっと癖のあるシュールなギャグが混ざった、ハッピーダイアリーらしさの詰まった回である。テンポ的には第2話の方が気に入っているが、話全体で見ると第7話が一番だろう。
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