メガバンクから投資銀行への裏ルート 第4話 ~投資銀行へアクセルON~
「豪さん、一緒に踊りたい。」
彼女の名前は、愛美(マナミ)。
名古屋一のお嬢様大学として有名な金城学院大学の出身。
実家は有名な鰻屋を経営し、いわば名古屋を代表するお金持ちの娘だ。
「シャンパン一気して、あっち行こう。」
愛美(マナミ)は、豪(ゴウ)の手を握り、ダンスフロアに向かった。
気付けば、東大卒のエリート、鷲尾(ワシオ)の姿が見当たらない。
帰ったのか?と、出入口付近を見渡すと、先ほど一緒にいた女性と抱き合うように支えあい、出口に向かって歩いていた。相手の女性は、そうとう酔っている様子。
行く先は、彼の部屋だろうか。
「あいつ・・・」
しかし、邪魔者は消えたということだ。
俺の隣には、モデルクラスのルックスを持つ美女、愛美(マナミ)がいる。
鷲尾(ワシオ)のことなど、どうでもいい。
今夜は、とことん愛美(マナミ)との時間を楽しもう。
メガバンクから投資銀行への裏ルート 第4話 ~投資銀行へアクセルON~
踊る、愛美(マナミ)。
動きはゆったりとし、とろんとした目からも、シャンパンの酔いが心地良く回ってきている様子が伝わる。
DJの奏でるミュージックに合わせ、リズムを刻む2人。
もはや言葉は必要なく、ボディランゲージからお互いの意思は伝わっている。
そして、閉店間近なったダンスフロアに、さらなる高まりを感じさせるテンポで音楽が流れ始めた。
気付けば、周囲の男女も良い感じの雰囲気だ。
酒に強いことで評判の豪(ゴウ)だが、酒以上に愛美(マナミ)に酔っている。
そんな豪(ゴウ)の耳元で、愛美(マナミ)はささやいた。
「豪さん、そろそろ私ゆっくり眠れるところにいきたい。どこか良いところに連れてって?」
名古屋モード、もはやブレーキをかける必要もない
豪(ゴウ)は、クラブから徒歩圏内のデザイナーズマンションに住んでいる。
栄付近の主要駅から徒歩5分以内、家賃は6万前後だが、東京都内では15万はするであろう立派な物件だ。
そんな豪(ゴウ)の部屋へ誇らしげに入る愛美(マナミ)。
若くしてこの物件に住める豪(ゴウ)をますます気に入っている様子が伺える。
踊り疲れた様子で、彼女はすぐに豪(ゴウ)のベッドに横になった。
「豪(ゴウ)、きて。」
そして、気づけば2人は朝を迎えていた。
好循環サイクルの始まり
愛美(マナミ)は、豪(ゴウ)と携帯を交換し、満足した様子で家を出ていった。
「また来るね。」
いったい何があったんだろう。
豪(ゴウ)は昨日からの記憶を思い出そうとした。
一次会の合コンでは、好調とは言えない展開だった記憶がある。
しかし、三崎(ミサキ)と合流してから、名古屋モードのスイッチが入り、そこから一気に展開が加速した。
親父の言っていた「スキルよりもスタンス」とは、このことなのか。
寝ぼけながら入れたコーヒーが、いつになくうまい。
まるで法人営業で契約を決めた時のようにONした快感が、豪(ゴウ)の中に残っている。
そんな時、豪(ゴウ)の携帯に1通のLINEが届いた。
「今日、フットサルの試合だけど、来れるって認識で問題なかったか?名古屋に異動したと聞いたけど・・・」
親父譲りのタフネス&バイタリティ
学生時代からタフネスマンとして有名な豪(ゴウ)。
フットサルチームでは、キャプテンを務めており、前日にどれだけ飲んでも、どれだけ寝ていなくても、フットサルは全参加するというのが彼のポリシーであった。
しかし、彼はいま名古屋にいる。
しかも、前夜は朝までシャンパンボトルを飲み、2-3時間しか寝ていない。
「少年時代、親父はどんなに寝ていなくても、疲れていても、元気そうな姿で俺と遊んでくれた。」
そう振り返ると、彼はすぐさまタクシーを捕まえ、名古屋駅から新幹線で東京に向かった。
「フットサル?ああ、もちろん参加するよ。名古屋だから参加できない?は愚問だから。」
たとえ、どれだけコンディションが悪かろうと、仲間が呼べば、駆け付ける。
ここが豪(ゴウ)の人並外れて力強く、頼もしいところだ。
仕事もプライベートもONの連続
「ゴール!」
ここでも、華麗にゴールポストへONする豪(ゴウ)。
絶好調だ。
試合を気持ちよく終え、打ち上げの飲み会が始まった。
「豪(ゴウ)、名古屋にいるのに、よく参加できたな。おまけにゴールまで決めて、見事だったよ。」
余韻に浸る豪(ゴウ)。
そして、気が付けば1通のLINEが届いていた。
愛美(マナミ)だろうか?
LINEを見ると、トヨタの三崎(ミサキ)だった。
「昨日はお疲れ。見事に持ち帰ったらしいな。ちなみに、今日も行くか?」
誘われれば、NOとは言わない男、豪(ゴウ)。
せっかく東京に来たのに、今から名古屋に戻れというのか?
「いったい俺は、どこへ向かっているのか・・・」
投資銀行への切符
「カンパーイ!!」
気付けば名古屋へ戻り、連日クラブにいる豪(ゴウ)。
このタフネスさは、どこからくるのか。
そんな生活が、今週だけでなく、来週も、再来週も、その翌週もと続いていった。
普通の男なら体を壊すであろう。
007のジェームズボンドもビックリだ。
毎週、月曜の朝には、
「豪(ゴウ)さん、週初めはいつもテンションが高いけど、いったい週末何してるんだい?」
と呼ばれるほど、名古屋で最も勢いのある男として話題になっていった。
仕事、合コン、クラブ、フットサル、仕事・・・
名古屋モードのアクセルON、ON、ON。
好循環サイクルは止まらない。
覇気を持った豪(ゴウ)の姿は、次第に営業成績にも及び、周囲の評価も上がっていった。
そんな豪(ゴウ)の名古屋生活も、気づけば1年が経とうとした頃、行内での公募案件が回ってきた。
「○○証券、投資銀行部門への派遣、採用予定者〇〇名。」
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