不動産からほんの少し見える景気の良し悪し

とあるエリアに長年運営されていたとある娯楽施設があったのだが、景気の悪さのせいなのかおそらく利用者が減って経営が成り立たたなくなり、いつしかその娯楽施設はなくなった。跡地には大手財閥系不動産会社のマンションが出来た(私はこの会社の建てるマンションはデザインや街のことを全く考えない容積いっぱいに作り、人間を押し込むだけのただのクソみたいな箱とバカにしているのだがその話はここでは割愛する)。一番最初の人が入居してから1年は経っているが未だに売れ残っている。駅前なのに。

娯楽施設や工場がマンションに変わるのは住居が建つことから一見景気が良いように見えるが、娯楽施設や工場が閉鎖されるということはそのエリアでの経営が成り立たないということなので実は景気が悪いということだ。それに昨今のマンション価格は良い立地はかなり高く、微妙な立地でもそこそこ高い。その価格帯のマンションを買える層は限られているからいつか大規模な売れ残りが起こる気がする。

ニュータウン、ベッドタウンのような人が住む目的で後から開発された地域は別だが、娯楽施設や工場など既存の営利施設を無くしてまで行うマンション開発は私はあまり好きではない。駅前にマンションが供給された、やったーではない。施設が無くなった分その街での雇用や経済活動が失われ、その街は徐々にベッドタウン化している。この事実をひとりでも多くの人に考えてもらいたい。娯楽施設や工場や商店が適度に街に溶け込んでいるほうが街としてはよっぽど健全であると私は思う。

余談だが以前、冒頭のマンションについて書かれている掲示板のようなところで流石にこのマンションの価格は高いと言ったところ、相場がわかっていませんねと批判をもらった。なんでもその人いわく最近の周りのマンションがこのくらいの価格だからこれが相場、だそうだ。欲しい人がいる、だから価格が上がる、これが相場ということは理解しているが、果たして先のマンションは本当に相場なのか?批判している人は知らないだろうが、昨今の不動産価格というのは投資需要に後押しされているのと不動産会社が適当に乗せている分があり、不当に吊り上がっている。新築アパートが売れることでその坪単価が標準となり、戸建価格に反映される。それらを加味してマンション用地の価格が決まる。そこから適当に上乗せして財閥系のマンションが出来る。実のところその地にそこまでの価値はあるのか?という値段で最近は当たり前のように取引されている。建築協定でもない限りほとんどのエリアで共同住宅は作れるので戸建用地で売れなければアパートになるだけである。マンション用地の場合はとりあえずマンションを作ればある程度は売れるのでマンション用地はそのままマンションが出来る。価格高騰の犯人は新築アパートであり、購入者である一般消費者なのだがほとんどの人がこれをわかっていない。価格吊り上げに関しては不動産会社同様一般消費者も同罪である。消費者には実際の取引価格が路線価の倍以上ということに違和感を持っていただきたい。本当にその地で家が欲しくて購入しているのであればいいが、大多数は「便利そう」や「買える価格帯だから」といった適当な理由である。高い値段で売れるので財閥系は調子に乗り相も変わらず高いマンションを作り続ける。

私の場合は、そのような背景があるので不動産の「相場」に関しては、路線価や年代別人口や交通インフラや地理的な位置などを鑑み実際にその地の持っている価値を考えた価格と、実際に取引されている不当な価格のふたつのモノサシを持つようにしている。マンションが次々と建つから/不動産の価格が高いから景気が良いと勘違いしてはいけない。何年後になるかわからないが新築アパートの投資需要が終わり、マンションの大規模売れ残りが起こったときの不動産の価格が楽しみである。実はいつ誰がババを引くのかと怯えながらも仕入再販を繰り返している不動産会社が多いのも事実。


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