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食材の一番の美味しさに出会いに

おはようございます。
今日もご覧いただきありがとうございます。

どうしても昨年の美味しい想いでの一つをシェアしたくて、今日エッセイを書く。

寒くなり始めた11月。
兵庫県の果てまで、今しか食べられない極上の美味しさを求めて奔走した体験であった。




今日の食日記

お店が違えば味も違うし、その時の景色や気温、自分の体調だってその時々の食体験の感じ方に良い意味でも悪い意味でも変化をもたらす。

その感じ方に気づく日々が嬉しくて、とても興味があって、そんな食の素晴らしさに惚れ惚れしてしまう。
だから食体験を味わって綴るというある意味“作業”をひたすらに楽しむことができているのだと思う。

季節はうつろい行けば、旬の食材は変わってくる。日本の食はまさにその四季を捉えた作品で、人々を魅了していく。

食日記を通してただ美味しいを感じるだけではなくて、今美味しい、なぜ美味しいそんなところをしっかりと知りたいと思うようになった。それが食を知ることの真の意味だと思うから。

和食に限らず、四季を旬を味わえば概念が変わることが嬉しくて仕方がない。なんだか食への敬意みたいなものが、その度に深まる気がするのだ。
だから、食材が1番美味しいところに僕は行きたい。味わいたい。

そして何よりも、旬で採れたての食材を頂けば、これまで食べていた食材たちの限界値を軽々と飛び越し、信じられない美味しさと出会うことができる(もちろん、シェフの裁量で決まることは大前提。良い食材には良いシェフが集まってくる)。


季節が11月をまたげば、いよいよ冬になってくる。
蟹が旬になった頃、兵庫県城崎から、旬の蟹の午餐会のお知らせが届いた(気がした。まあ、自分で待っていたようなものだが)ので、夜行バスで大阪を乗り継ぎ遠い城崎温泉を目指した。




今日のお店

それは遠い遠い旅、途中休憩だって道の駅。

おまけに渋滞遅刻はしてしまうし、降りた途端に駆け足で予約先に電話で遅刻を伝え、見上げた空はやけに青空で「お待ちしておりました」と一声が聞こえた。


その先の湯煙温泉までも想像できたのだが、今日は蟹に会いに来た。
猛スピードで駆け出す。その目はやけに爽快感に満ち溢れていたことだろう。

人通りを抜けてその奥の奥、川のほとり小さな橋の先にそのお店はひっそりと開いていた。


こんな場所に、、まさに知る人ぞ知るなお店にスキップを繰り出してしまいそうだ。
澄んだ空気を吸い込むと、痺れる寒さが身体を突き抜け、緊張感が増してくる。


臨場感が強者で現代風だ


目の前にすればお城にでも続くのかって、プレッシャーが手に汗握るほど。
予約をしていなければ引き返してしまうほどに、ヒステリックで、とてつもなく洗練された臭いがしてそれは興奮した。

一歩踏み入れれば、おしゃれとは一言で片付けたくない程のシックで魂がキッチンから広がるフレンチダイナーがあった(何度もこんなところに、、を呟いていた)。


緊張があってか、もうなんでもいいやの気分も少し持ちつつ、店員さんの丁寧で僕の呼吸に合わせた接客に安堵しながら席についた。

この雄大な場所に来て、もう僕は観光客だって思えて。このお店のためにきたんだから。
そう思えれば、それでいい気がしたのだ。

なんて神々しい景色なんだろう。


城崎という遠い秘境の地が、純粋に空間を静まらせてるようで、目を瞑り五感で感じるのが正解だと、そう思った。

気持ちはもう蟹なので、城崎からの招待状、丸ごとせこがにのトマトクリームパスタを。


とまあ、城崎に流されてついつい、スペシャリテとサラダなんか頼んでしまって(よう食べるなぁ)。

ローカルと観光の柔らかさとあたたかさ、どこか騒がしさの空気を吸い込んで、オープンなキッチンをひたすらに見つめて待っている。これが“食べに来た”自分のようだ。

オープンキッチン横から、躍動するオンライブをまるで大きなプレートに乗ったスペシャリテを頂くようにナイフとフォークを持って見ていた(美味しい、美味しい)。

向き合うその調理を愛するように。神の目線で見つめる僕。贅沢だ。その込められた魂を頂くということを噛み締めて味わう。

有機農家のグリーンサラダ/ファラフェルとハーブ

水々しい野菜の苦味さえもドレッシングだ。
爽やかさとオイル、口に入れる瞬間のパルミジャーノの香りと苦味が先にやってくる。
シャキシャキに、ポソポソに、素材が生きている。生かされている。どっちもか。
カレーのようなスパイスのファラフェルも、ほっくり柔らかく、ぽっそりと。胡麻の粒とどこかに感じるカルダモン。掴みに行きたいのになかなか掴めないのが、いつまでも冒険家でいれて嬉しいのだ。

待ってましたと、ついに今日の夢がやってきた(覚めないで)。

もういつまでもこの風景とコンサートの始まりに近い爆発しそうな緊張感は忘れないだろう。
この一皿に統治されたいほど、王様を見つめる目で。

おはよう。


有終の美。感激の蟹のパスタ



蟹のパスタ(スペシャリテ)
最後の仕上げよ、最後の晩餐か、、臨場感と香りに涙がほころびそうだ。

香りからもう悶絶急。えげつない蟹の風味が鼻からまぶたから押し寄せる。
甲羅を外せば一気にその蟹は洪水のように溢れ出し、絡む絡む。ニヤニヤが止まらないから誰もみないでほしい。

逃れられない濃厚な生クリーム、まとわりつく蟹の風味と蟹味噌の香るクリームソースが、舐め尽くしたいほどにドロドロで、ごクリとえげつないほど飲み込めば(音がするほど)この上ないほどのにんまり感を恥ずかしみもなく見せびらかしていた。
蟹を丸ごと髄まで頂くスペシャリテにもうこのまま死んでもいいと天国の気分だった。

とまあ、今日の食日記は長くなってしまったのだが、やっぱりこの季節にしかやってこないからこそ、会いに行きたくなる理由があって。
食材が1番美味しい季節に1番美味しいところで。
考えられないほどの幸せ感で城崎を噛み締めた。また来年も必ず。

スキップは止まらなかった。



美味しいひと時に、ごちそうさまでした。
では、また次回。





今日のお店:OFF(兵庫県豊岡市城崎町湯島536)



*Instagramでは暮らしにある食をすきなだけ発信しています*
暮らしのヒントになれば、と。
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