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「プロボノは搾取されている!」と嘆いて怒るor消える前にしたいこと

プロボノで揉めるのは、実はあるある


私は複業を推進する仕事をしていますが、お金が稼げない「プロボノ」「ボランティア」をすることにも大いに意義があると考えています。

まず、活動の報酬は金銭だけとは限りません。人から感謝される喜び、やりがいや生きがいを感じることに、金銭的なリターン以上の価値を感じるなら、無償の活動をどんどんした方が人生が豊かになると思います。

それに、現時点で無報酬だとしても、活動の中でスキルや知識などの人的資本や、ネットワークなどの社会関係資本が溜まることで、それらを使って仕事をして金銭的な報酬を得られる可能性を高められます。

無償の活動でも、無形資産が溜まれば、未来の仕事の獲得や単価の向上につながるのです。

私自身も、無償のプロボノをした経験があったからこそ、複業をはじめた初年度から稼ぐことができました。

講演や相談していただいた方にこんな話をして、実際にプロボノに挑戦してイキイキと活躍している方もいます。

一方で、人によっては喜んではじめた活動なのに、途中から表情が曇ることもあります。

「いつまでプロボノをすれば稼げるんだろう」
「価値を提供しているのに対価がないのはおかしいのでは?」
「自分のマンパワーを搾取されているだけな気がする」

そんな風な悩みを持つ人を数多く見てきました。

そして、ありがちな行動パターンが「急にキレる」「急に消える」です。

「私はこんなに貢献しているのに、対価がないのはひどい!」「これまで善意で手伝ってきましたが、もうやってられません」と怒ってしまったり、それすら言わずに「限界です」と消えてしまったり。

もしかしたら、こちらを読んで「やだ、私の話!?」と不安になった方、安心してください。特定の方を頭に思い浮かべている訳ではありません。

これまで、主催、所属、サポートしてきたコミュニティで、こんな場面は軽く数十回は見聞きしてきました。わかりやすくブチ切れなくても、小さな摩擦ならもっと目撃してきました。

残念ながら、「報われている感がなくて嫌になる」はプロボノの超あるあるなのです。なんなら、私もそんな心境になったこともあります。

ただ、プロボノを辞める時に「怒る」「消える」は悪手です。せっかく築いてきた関係を壊してしまいます。

でも、モヤモヤした気持ちのまま続けられないし、団体や主催者にも言いたいことはある、という場合、どうするのがよいのでしょうか。

プロボノは「卒業」が前提

プロボノとして関わった人が、悲しいお別れになってしまいがちな理由の一つに、「プロボノは永続的にやらない人の方が多い」ことは挙げられるでしょう。

プロボノを始める時のモチベーションはそれぞれです。「社会課題を解決したい」「力をつけたい」「人との交流を増やしたい」。そんな思いがあるから無償でもやりたくなります。

でも、当初期待していたものを手に入れたり、これ以上は欲しくなくなったり、ライフステージの変化で参加の負担が大きくなったりすることもあるでしょう。仕事のように生活がかかっていない分、続けるインセンティブを感じにくくて当たり前です。

だから、「得られるものがなくなったら去る」「満足度より負担が上回ったら卒業する」でいいのです。お互いのニーズがかみ合った一時期だけ気持ちよく関わり、難しくなったら関係性を見直せばいいのです。

もし、あなたが「そろそろ潮時だな」と感じ始めたときに、団体側・企業側が残ってあなたに残ってほしいなら、有償の仕事として発注するか、残りたくなるインセンティブを付加するなど手を打てばいいし、それがなければ後ぐされなく辞めて何の問題もありません。

「所属し続けて当たり前」「当初感じていた満足度が続くもの」と捉えてしまうと、期待値と現実のギャップでイライラしてしまうと思います。

去る前に打つ一手とは

「無償はもう限界」と思ったとき、関係を断ち切る前にできることはあります。

まず、なぜ自分がその団体に、有償の業務委託ではなく「プロボノ」として関わっていたのかを整理しましょう。

だいたい「外注先に支払う予算がない」か「相手に支払い能力はあるが、支払う必要を感じていない」か、という理由が多いのではないかと思います。

プロボノをしている団体で外注先に支払う予算がない時にできることとして、以下の3つが有効だと思います。

①稼働時間を減らす
負担感が大きいものの、まだ関わりたい気持ちがあるなら、稼働時間を減らすのは手です。「搾取されている」という気分が湧かない程度に軽く関わることで、「これくらいなら楽しく続けられる」という落としどころがみつかることもあります。しばらくお休みして、気が向いたら復活するのもありです。

②自分の無形資産を増やす方向にシフトチェンジする
「ここに居てもこれ以上の成長がない、広がりがない」と感じてしまうと、続ける意味を見出せなくなってしまいます。いま使っているスキルでできることは「一通りやり尽くした」と思うなら、「次に挑戦したいこと」をしてはどうでしょうか。自分が欲しい方向性の新たな無形資産が増えれば、無償でもリターンは十分だと思えるかもしれません。

③利益を生む提案をして主導する
団体として自分に支払える予算がない場合、「お金をつくる」のも手です。例えば、参加費を集める、スポンサーや協賛をつける、物販をする、などの新たな試みを企画して、自分にも稼働費が入るようにします。営利活動が禁じられていると難しいかもしれませんが、制約がなければ試す価値はあります。

次に、「相手に支払い能力はあるが、支払う必要を感じていない」場合は、あなたが「無償でもいいから経験を積みたい」「理念に共感したから無償でもお手伝いしたい」という状況で活動がはじまることが多いと思います。

だからまず、「スキルや経験も増えたので有償でやっていきたい」「有償の仕事が増えてきて無償の活動が難しい」など状況を穏やかに(←大事)伝えた方がいいでしょう。そして、次の2つをするといいと思います。

④提供している価値に見合う見積を出す
「こういう関わり方なら、これくらいの金額でできます」と交渉してみましょう。内情もわかっているはずなので、相手の予算感や、市場の相場に合わせて適切な金額を出せるようにがんばってみましょう。特に相手が営利目的で、あなたが本当にプロの仕事ができているなら、交渉の余地は大いにあります。

⑤利益を増やす提案をして主導する
上記の③と同じです。「利益を生む提案」と「実働」をすることで、自分に支払う売り上げを自分で生み出すのです。予算が少ない場合や利益が出るか不明な場合は、「レベニューシェア(収益の分配)」や「成約するごとに歩合」など相手が赤字にならない提案をすると通りやすいはずです。ただ、相手が営利企業の場合は、非営利団体と違って「少しでも利益が出てそれを分配したらいい」とはならず、自社へのメリットを明確に感じないと採用されずハードルは上がります。

私の所感ですが、「無償はもう限界」と辞める人のほとんどが、上記のどれもやらずに去っていく印象です。

せっかくのご縁で結びついたプロボノが去っていく責任の半分は、「残りたい」と思わせることができなかった団体側にあります。

一方で、去るプロボノ側にもできたことがあるはずなのです。

「自分の提供している価値に値段をつけて説得する営業スキル」や「持続可能にするためにお金をつくる力」や「団体側とWin-Winの落としどころを見つける折衝力」があれば、無償の活動を有償に切り替えられる可能性はあります。

厳しい言い方ですが、「がんばっていれば誰かが認めてくれて、お金を払ってくれる」と一方的に思うのは子どもの発想です。「無償でいい」という前提で活動を開始したのだから、有償にしたいなら上手にリードすべきは団体でなく自分です。

「プロ級の貢献をしているのにないがしろにされている」と嘆く人は、提供しているスキルや時間の外側に何があるのかを俯瞰して、ビジネスにする具体的な一手を自力で打つ必要があります。

相手にお金が合って、提案しても、通らないこともあります。そういう場合は、「無償でもやりたい人がたくさんいる」か「優秀なプロに囲まれている」ことが多いと思います。自分以外の人にとっても魅力的な場所で、無償でいいからやりたいという人が多い、既に優秀なフリーランスに囲まれているなら、わざわざ自分を有償に切り替えるメリットがありません。

そんな時は、これまで活躍の場をいただけたことに感謝しつつ、自分を重宝してくれる他の場所に移動したほうが、お互いに幸せだと思います。

「報われない」のはお金より気持ち?

「有償に切り替える」という方向性で話しましたが、「無償じゃやってられない」という不満を解決する手段が金銭的リターンとは限らないと思います。

実は有償でないことが不満なのではなく、「やって当たり前だと思われていて虚しい」「感謝されなくて悲しい」のが問題になっているケースも多いはずです。

人間は慣れる生き物です。初期は歓迎され、感謝されても、月日が経つと「当たり前」「あの人の仕事でしょ」みたいに扱われることは、悲しいけれど多いです。

私は有償でも無償でも、「やって当たり前でないことを押し付けられている」「無下にされている」とモヤモヤしたら、なるべく伝えてこまめに解消するようにしています。

「先月は急ぎだったので私が対応しましたが、ディレクション業務まではできないので〇〇チームの方でお願いできますか?」
「反対がないのは同意ということかもしれませんが、これで進めていいかわからないので、なんでもいいから反応をお願いします!既読スルーだと寂しいです!!」

くらいは言っちゃいます。相手との関係性にもよりますが。

不満を周囲が察してくれたら助かりますが、そうとも限りません。自分の許容できる負担感を越えないようにコミュニケーションをとるのは、チームの一員として大切なことだと思います。

なお、伝えるタイミングは「言葉にトゲが出る前」がベストです。

改善のための前向きな意見だとしても「私はこれだけ努力しているのに」「あの時もこうだった」「このままじゃこの組織はだめ」などなど恨みつらみが滲んでしまうと、受け止める相手へのダメージが大きいですよね。

トゲが出そうなときは、深呼吸して美味しいものを食べてお風呂に入ってよく寝て、ネガティブな気持ちを成仏させてからがいいかと!(笑)

卒業してもいい関係でいよう

私も20代のはじめはいくつかのNPOや社会い貢献活動を掛け持ちしてきました。そして、幸い揉めずに卒業できました。

これは私の手腕ではなく、代表やリーダーのおかげでした。

特に力を入れていたNPOでは、かなり裁量を持って活動できていたのですが、私がモヤモヤしはじめるより前に先手を打つような形で、代表の方がそっと卒業に向けて背中を押してくれたのです。

「あなたも成長したから、初期と同じことを無料でしてもらうのは申し訳ない」
「優秀で熱意のある人がひとところに留まれないのは当たり前」

そんな感じのことをちょこちょこ言われるなと思っていたら、少しずつ活動にアサインされなくなり、いつの間にか卒業しました。

実は、その時はちょっとだけ寂しかったのです。

でも思えばあの頃は、確かに「人の手伝いじゃなくて自分のプロジェクトをしたいかも」「完全にこなせるようになって、なんか刺激もないな」と、「いつまでもここに居られない」「次にいかなきゃ」という気持ちが、少しずつ湧いてきていました。

とは言え、「次も決まってないし、もう少しやるか」とは思っていたので、アサインされなかったときは「干された?」と居場所をなくした気持ちにもなりました。

でも、あのタイミングを逃したら、私は「切れて辞めるプロボノ」になっていたかもしれません。もしくは、ぬるま湯が心地よくて、これまでの貢献度を根拠にお局化していた未来もあり得たかもしれません。

文句は言わなくても、たぶん私の表情は活動初期よりイキイキしていなかったし、いい緊張感もなくて、代表の方は「このまま同じことを続けると、たぶん淀むな」と直感されたのです。振り返ると、歴代のプロボノも短期スパンで卒業していて、「お互いに気持ちよく関われる時期」に関わることを大切にされていたのだと思います。

潮時を間違えなかったからこそ、当時より距離は離れたけれど「昔の戦友」として今もいい関係を続けられています。

せっかくご縁があってはじめたプロボノです。モヤモヤしたときに、いい関わり方を再構築できるように自分がリードするか、辞めるとしても晴れやかな気持ちで卒業して新しいフィールドに進めるといいですね。

パラレルキャリア研究所代表 慶野英里名

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