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冷凍パン専門店「時をとめるベーカリー」への想いや今後

2021年9月1日、神奈川県大和市にほど近い相鉄線「瀬谷駅」の構内自由通路に、冷凍パン専門店をオープンしました。店舗名は「時をとめるベーカリー」。関東圏を中心とした、街のベーカリー様たちからパンを仕入れ、瞬間冷凍加工して販売するお店です。

この投稿をしているのは2021年10月上旬、オープンしてからおよそ1か月たった時点です。この1か月は、社会人経験の中でもあまりない経験が凝縮された濃密な1か月であったと思います。今後伸びていくであろう冷凍パン業界に期待して、その結果と感想、SNSで寄せられた意見への回答をQ&A形式で残しておこうと思います。

お店のビジネスモデルやきっかけについては、取材して記事にあげていただいたITmediaビジネスオンライン様の記事が忖度なく良く表現されているので、こちらも参考にしてほしいと思います。

Q. フードロスを減らしても冷凍や配送にかかる電気が増え、SDGsとは言えないのでは?

A. まさにその通りかと思います。瞬間冷凍機は省電力な水冷加工機を選択し、多少配慮はしましたが販売用の冷凍庫はそれなりに電力を消費しているため、環境への影響を完全に配慮したものとは言えません。
廃棄パンの焼却で発生しているCO2の悪影響度合いと、配送および冷凍陳列で発生する電力がロス削減によるプラスとトレードオフになっているかの検証もできておりません。
今回のビジネスは環境への配慮を完全に把握して社会を変えようとしたというより、パン業界とお客様に向けた「焼きたてパン」への”問題提起”とフードロス削減に向けた”第一歩”としての意味合いが強いです。

Q. フランチャイズによる全国展開はするの?

A. 将来的にブラッシュアップしたうえで全国展開できたらいいと思っています。ですが、このビジネスは大きな課題をクリアしないと横展開できません。
その課題は、「利益率の向上」です。現状では街のベーカリーよりパンを買取り、集荷し、冷凍加工し、冷凍庫で陳列保管、そして販売しています。このスキーム内では中間コストの負担が大きく、ベーカリー業界への貢献は達成できても弊社に残る利益は非常に少ない状況です。
利益の出ないフランチャイズは成立しない。そこで、製造能力を持つベーカリー様がこのモデルを引き受けてくだされば、唯一成立する可能性があると考えています。

Q. 焼きたての香りの無いパンは売れるの?

A. 時をとめるベーカリーにおける最大の弱点は、今までのベーカリーが武器にしていた香りや見た目、など五感に訴える要素です。
しかし、コロナ禍が進む中でお客様の衛生意識は向上しており、現在では裸売りのパンは敬遠される傾向にあります。むしろ、袋詰めされていて原材料や栄養成分表示がちゃんとしている商品が好まれる傾向にあり、今後もその流れは加速すると考えています。
時をとめるベーカリーのパンは、通常の冷凍食品のような美しい写真のパッケージでなく、パッケージの中が見えるように梱包しています。
また、原材料や栄養成分表示は全て弊社がメーカーより回収し、審査の上で転記、貼り付けしています。
この方法にも、一定の需要はあるのではないかと考えています。

Q. パン屋から仕入れて売ってるだけでは労働環境改善につながらないのでは?

こちらも、現時点では指摘の通りかと思います。パン屋の生産スケジュールに直接的に影響を与えているわけではないので。
将来的に時をとめるベーカリーに興味を持っていただけるベーカリーや消費者が増えることで、冷凍によるパンの供給が増え、冷凍パンだけを製造するベーカリーが出てくることで労働環境改善につながるとロングスパンで考えています。私たちは第一歩にすぎず、これからの時代を生きていく消費者サイド、製造サイドの考え方が変わっていくことで社会は変わっていくのではないかという希望を持っています。
そのため、時をとめるベーカリーのビジネスモデルや問題点なども包み隠さず社会に発信していこうと思った次第です。

Q. ロスになったパンを売ってるの?

時をとめるベーカリーでは、ロスパンではなく、比較的焼きたてから時間のたっていないパンを集め、冷凍加工しています。ロスパンを冷凍して売った方がフードロス削減につながるのでは?といった意見も多く寄せられています。
しかし、焼成から短い時間つまり高い品質の状態で冷凍加工し、販売することで通常販売されているパンより美味しく召し上がっていただける可能性が上がります。
上のQ&Aでも記載した通り、消費者にとってメリットのある形を提供し、「冷凍パンって美味しくていいじゃん!」というお客様が増えていくことで業界の労働課題の解決につながっていきます。
そのため、焼きたてパンの冷凍小売りにこだわっています。

Q. なんで瀬谷でオープンしたの?

どうして繁華街でなく瀬谷という住宅街でオープンしたのか、といった質問も多く寄せられます。
物件があったという面もありますが、瀬谷という立地をチョイスしたのには明確な意図があります。
第一に、「帰宅平均時間が短い場所であった」ということ。冷凍パンの小売では、帰宅中に解凍されてしまう、といった弱点があります。駅の周りに住宅が密集している瀬谷という駅の立地は、この弱点をカバーするうえで最適な立地でした。
第二に、「程よい商圏であった」ということ。乗降者数4万人前後で、改札ひとつ。時をとめるベーカリーは短距離商圏をターゲットしているため、複数店舗を横展開して成長させるしかありません。そこで、事業再現性の高い場所で成立させる必要がありました。

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オープンして1か月。想像以上のお客様に来店いただき、店舗でもオンラインでも数多くの声が寄せられました。
多くの消費者やメーカー様がこの業態に興味を持ち、社会の風潮が変わりつつあるのを肌で感じております。

今回の時をとめるベーカリーのビジネスが社会に継続的に受け入れられれば、もしかしたらベーカリー業界に色濃く残る問題点が解決する方向へ向かっていくかもしれませんし、私たち以外にも新たに生まれるビジネスがより先鋭的に課題解決をしてくれるかもしれません。

まずは私たちがすべきこととして、時をとめるベーカリーをブラッシュアップし、よりメーカーと消費者にメリットのある形を作り上げます。
利益率を向上し、事業バリューを高め、全国に展開できるような形へと改善していきます。
そのうえで、ベーカリー業界の「労働問題」「フードロス問題」の解決に向けて正しく進んでいきたいと思います。

【時を止めるベーカリー】
https://www.tokitoma-bakery.jp/

【お問い合わせ】
https://www.tokitoma-bakery.jp/contact/

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