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三井化学はブルーオーシャンシフトを応用しデザイン思考を取り入れつつある

素材メーカーと聞くとBtoBの代表格だと感じる。

ぼくの働く部材メーカーは化学的な素材メーカーと近い部分も多く、化学などの素材メーカーを研究対象とすることも多いし、自社で原料として買うことも多いので割と身近な産業だ。

そんな化学メーカーの代表格である三井化学から話を聞く機会があった。普通BtoBだと相手が消費者ではなくて会社なので「スペックと価格」というウェイトがとても高い。そんな川上に位置している素材メーカーである三井化学は素材だけ売っているだけでは限界だとして、新たなイノベーションを起こすためにいろいろな仕掛けを作っているらしい。

とあるセミナーでそんな話を三井化学の研究開発本部の生産技術研究所で所長をされちえる扇澤さんという方の講演をきいたのでシェアしたい。

■三井化学について

三井化学という会社は三井三池炭鉱で1912年に生まれた化学肥料の生産工場を源流に持つ会社で、石炭化学から始まり石油化学への転換してきた会社で国内3位に位置している。

いまは事業を4つに分けていて「基盤素材」「モビリティ事業」「ヘルスケア事業」「フード&パッケージング事業」を展開している。特にイメージとしてはメガネレンズ用材料、紙おむつ用の不織布、自動車の外装材、食品包装用のフィルムなどが有名なイメージで世界シェアも高い。1兆円を超える目が企業だ。

そんな会社も「顧客起点イノベーションの推進」を急いでいて、今までの大量生産・大量消費の化学製品のものづくりでは限界だと感じていて、多品種少量生産の高機能製品に移行しようとしている。

■ 変わろうとしている素材メーカー

色々と化学メーカーについて調べたが、おそらく今までの化学メーカーはプロダクトアウト型の開発が多かったと思われる。「この素材を使って下さい」「つかいこなしてください」というスタンスが強かったのではないかと推察している。

そんな素材メーカーがマーケットイン型の開発へと移行するのには考え方のハードルが高い。一方でそんなことを言っているほど余裕もなく、大量生産大量消費の製品は中国やインドにプレイヤーがシフトしていくのでどうしてももっと付加価値の高い分野に行かざるを得ない。

ところがそれまでそういった商売をしたことがないし、付加価値が高い分野は大量生産とは全く違うカスタイマイズの発想が求められ、素材メーカーでは不得意としてきたことが求められるようになり、なじみが無いのが実際だろう。

そんな苦労をしている素材メーカーというのは色々見ているし、付き合いがある会社の方もそういった発言をされることが多いので変わろうとしてもなかなか変われないところで苦労している印象を受ける。

■発想の転換に必要なブルーオーシャンシフトとデザイン思考

そんな難しさがある中で三井化学はどうしたか。

まずニーズは感覚的であるということを認識したらしい。最終製品のユーザーの感覚が多様化しているように、一つひとつの製品が顧客の感覚にマッチしたものでなくては売れないので、自社の化学品が“お客様のどんな課題を解決するのか”ということを起点におくところからはじめたという話があった。

視点をお客さんにシフトして、「お客さんが抱える課題」を突き止めて、それに対して自社の素材でアプローチするということを徹底するための視点をシフトするところからはじめて、お客さんと積極的にコミュニケーションを取ることを意識したということだった。

これがテックファインダー


次に形にして見せるということも意識したらしい。

ニーズが感覚的であれば、素材というそれだけでは全く形になっていないものなのでイメージが沸かない。その点を考えから、素材をモノの形にして、イメージしてもらえるようにプロトタイプをたくさん作ったようだ。見て、触れて、感じるモノに仕上げることで、お客さんが自社がやりたいこと、解決したいことをイメージしやすいようにした。

スティーブ・ジョブスがiphoneを作ったときにすごかったのは携帯電話、タッチパネル、音楽プレイヤーなどそれまでそれぞれバラバラにあった技術を組み合わせて形にしたところにある。

そういった例を参考にして「人は形にして見せてもらうまで自分が欲しているのか、わからないものだ」という考えで素材を形にしたということだった。たくさんプロトタイプがあるとお客さんがイメージをしやすいというところを解決しようとしている。

そうすることで「こんな素材があればいいのに」と思ってくれるので、それに向けて三井化学も素材開発ができるという呼び水を作ることに労を割いたらしい。

こんな取り組みも。ファッションショーもやっている。


■ 顧客のペインを考える

お客様のどんなペインを解決するのかという「顧客起点」。これはなかなかBtoBの素材メーカーでは持ちにくい発想で、お客さんの視点で考えるということを徹底するうえでは重要な考えだと感じた。

ブルーオーシャン戦略というのは新規事業にだけ当てはまるという批判を受けやすいが、ブルーオーシャンシフトという続編では既存企業がどうやってブルーオーシャンを作っていけるか、ブルーオーシャンにシフトしていけるかという考えを提供してくれている。

ブルーオーシャンシフトでは第一のカギは、現在の市場での競争だけに焦点を当てるのではなく、従来にない核心的なやり方で事業機会やリスクを眺め、新たな可能性を見出そうというい考えがある。第二のカギでは、市場創造のための実用的なツールを紹介していて、特に買い手の効用マップは三井化学の例でも使われている。そして第三のカギとして「人間らしさ」をプロセスに組み込むというのがブルーオーシャンシフトのカギになっている。

三井化学も業界が顧客に強いている苦痛を探り出して買い手の効用マップで「自分達の業界を含むほぼすべての業界が、解決すべき大きな問題を抱えている」という気づきを引き出すことを「お客さんのペインはどこか」という視点をずらすことで実現しようとしている。

—— 〻 ——

またもう一つの視点としてデザイン思考を持ち込んでいるととても感じるセミナーだった。

デザイン思考というのはとにかくアイディアを作り、プロトタイプを作って検証する考え方のことをさしている。何か新しいものを作るときに常にユーザー視点をもって、お客さんとのコミュニケーションを重視するという考えを三井化学は実現しようとしているように感じた。

完璧でなくてもプロトタイプで見せることで形にして、お客さんのイメージを一緒に具体化する。そしてそれに必要な素材を自分たちは作る。そんな思考の転換を図ろうとしているのだなと感じる。

彼らが成功するかはぼくにはわからないが、とにかくチャレンジしようとしていることについては雰囲気を感じることができた。

素材だけを売っていてはダメな状況は部材だけを売っていてはダメなぼくの会社にもあてはまる。

僕の会社もかわっていかねば。未来のお客さんをどう見つけるか。お客さんの課題をどういったもので解決できる会社にしていくべきか。

そう思うセミナーだった。

[関連参考サイト]



https://www.projectdesign.jp/201901/venture-co-creation2/005842.php



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