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海外に事業展開をするときにパートナーがいる良さとリスク

すでに海外展開をしている会社も日本には数多くある。もしくは今は国内事業だけだけど日本だけでは成長に限界があるのでいずれは海外!と思っている会社や経営者も多いかもしれない。

そんな海外展開もやり方がいろいろあって、いろいろと経験してきたことから果たしてどんなやり方が良いのか少し整理してみようと思った。noteは比較的若い世代やスタートアップ系の人も多いようなので一度自分の会社がどう成長するかを考えるきっかけになればと考えた。

もともと仕事柄、他社とのアライアンスや海外展開を多くやってきたこともあって、気軽に始める前に慎重にどういった手段で海外展開をするかを選ばないとあとで大変な思いをする事例を何件も見てきているので細かいエピソードなどはニーズがあればまたの機会に書こうとも思っている。

■まず独資かJVかを決める

独資というのは自分の資本だけでやるという考え。他の人から資本を受け入れずに自社の力と借入金だけで展開し、あとはあくまでビジネス上の契約関係で海外展開を進めるというパターン。

基本的にこのパターンを選択することが多い。他人の資本を受け入れてしまうと、自社の株主が増えるということになって事業の自由度が利かなくなるし乗っ取られる危険性もあるという理由で独資を選ぶ会社は多い。

一方でJVというのはJoint Ventureの略でいわゆる合弁会社。ベンチャーと名前がつくのでベンチャー企業っぽく感じるかもしれないが全く無関係で、大企業や古い会社が合弁会社をつくってもJVといっている。これは自分だけの資本ではなく、他人の資本も受け入れて、複数の株主で運営するというパターン。例えば海外展開をしたい日本企業A社があって、インド企業B支社とそれぞれお金を出し合って出資してA社とB社とうい2つの株主(親会社)をもつC社を作るというような場合が該当する。

このようにまずは大きく2つのタイプに分けることができる。

■ 独資とJVのそれぞれの良し悪し

本当に詳しくそれぞれの戦略論を説明すると難解になってくるしそれだけで何冊も本を書かなければならないのでサラッとポイントだけ書くと、以下のような良し悪しがそれぞれあるといえる。

【独資のメリット(=JVのデメリット)】

①   出資者の自由な意思決定を行うことが可能、 業務に関する意思決定にあたり機動的に対応することができる。

→やはり意思決定を自分の会社だけでできるというのは想像以上に大きい。わけのわからない文化もまるで違う国の人たちと一つの会社を運営するというのは想像以上に大変でもめ事がたくさん起きる。経営企画の仕事をしていてJVの方がいろいろな複雑なもめ事が持ち込まれて対応にあたることがぼくはとても多いので独資の良さというのは確実にある。

②   海外企業等に機密や技術、ノウハウ等の流出を防ぐことができる。

→JVのような合弁会社を運営すると相手にノウハウが流れてしまう懸念がどうしてもある。隠し事をしながら会社を運営できるほど器用なことなできないのだ。日本A社とインドB社で考えるとノウハウを持っているA社と市場でポジションをもっているB社という関係性がもっとも多いと思われるが、そうするとC社にノウハウを入れた瞬間、B社にもその情報は入るので、B社は全く別のところでそのノウハウをつかって事業をやる可能性だってある(契約で縛れることは縛れるが抜け道は作れてしまう)。

③   生じた利益を独占することが可能。

→これも大きい。例えばJVの場合C社で利益が出た場合、50:50であれば利益は分け合うことになる。これ自体はJVなので仕方のないことだが、現実的なもめごとは考え方が違うときによく起きる。A社は儲かったお金をさらに事業投資に回して配当でA社にお金を還元する必要はないと思っている。一方のB社は投資よりもリターンがあがることを優先しており配当をさせることを重視ているような場合、必ずもめる。都度交渉が発生する。

もう一つ大きな問題は利益を独占できないということで不公平感が出る場合があるということだ。3:7で出資したのに3の出資した方がJVに貢献していて、7出資した方がほとんど役に立っていない場合3の方は不満をいだく。自分たちの方が貢献しているのになんで7の方に利益の7割をもっていかれるのだという不満が噴出する。JVへの貢献というのはきれいな絵はいくらでもかけるが、現場同士の話になるともめることが多い。独資の場合こういった心配はない。

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【独資のデメリット(=JVのメリット)】

①海外企業等の販売網やノウハウを活用することが難しい。

→やはり独資のデメリットはこれが一番大きい。不慣れな地でネットワークもない場合に自社では展開することが実質的に難しかったりする。現地に精通した企業がいないと顧客とのチャネルもないし、商習慣すらわからないので独資でいくと痛い目を見たり訴訟に巻き込まれたりするケースも多く、代金回収だってうまくできない場合も多い。

ただ、これはある独資でも解消できるが、その場合はビジネス上のパートナーシップが必要である。例えば商社と組むとか、現地の代理店と契約ベースでやるといったことをすればJVにしなくても他社と協業することができる。もちろん、この場合もデメリットはあって、一度商社を経由してビジネスを作ってしまうと、その商社のほうに顧客とのパイプやノウハウが確立されてしまうので、抜け出せなくなる。

② 出資の負担が大きい。

→独資でいくと資金は全部自社で出す必要が出てくる。自社で資金を借り入れることができればよいが、新たな借入金を調達できない場合は手持ちの現金を使って海外展開をしなければならなくなってしまう。今は銀行もお金を貸す先がなくて困っているのでお金は借りやすい環境ではあるが、自社で資金を負担していることにかわりはない。

もし半分ずつ折半して合弁会社を作る場合は資金も半々で負担すればよいので資金的なメリットはある。ただ、資金的なメリットを優先してJVを選択するというのはあまりお勧めできないので、お金を理由とする場合はもっと資金が絡まないパートナーシップを結ぶようなことを選べる可能性も高いので考えなおした方が良い場合も多い。


③ 業種によっては独資企業の設立が禁止されていることがある。

→まあこれはルールなので仕方がない場合も多い。かつての中国はJVしか認めなかったので、共産党の息のかかった中国企業と日本企業はJVを作ることでしか中国で会社を作ることができなかった。

他にも国の基幹産業については他の国に乗っ取られると危険があるという理由で独資を禁止している場合も多いので海外展開をしようとする場合はよく調べる必要がある。

ベネッセを例にとると、教育というのは各国の国民の思想に係るので大きく制約をしている場合が多く、ベネッセは海外展開をなかなか自由にできないという足かせをしょっている。公文は海外展開をしている方だがなかなか自由にできない産業もあるということは認識した方が良い。

■それ以外の方法:フランチャイズ

このように独資とJVを比較してみたが、他にもいろいろな方法がある。その代表格がフランチャイズ。

セブンイレブンでフランチャイズが話題になっているので特に特別な方法ではないが、フランチャイズ展開をする場合も多い。これは事業者(フランチャイザー)が他の事業者(フランチャイジー) との間に契約を結ぶことで行う海外展開といえる。

フランチャイザーは自分の会社のトレードマークやブランド、経営ノウハウをつかって、商品の販売その他の事業を行う権利をフランチャイジーに与えてロイヤリティなどを回収する。一方で フランチャイジーはその見返りとして一定のロイヤリティを支払うことで事業に必要な資金を投下し、 フランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的な契約というのを平たくフランチャイズといえる。

独資やJVのようにフランチャイズにもメリットやデメリットがある。

フランチャイズのメリットは例えば以下のようなものがある。

①資本力が小さくても、海外企業の資金、人材、 ネットワークを利用し、店舗展開が可能。

②ロイヤリティの徴収による収入が期待できる。

③失敗した場合のリスクが小さい。


一方でデメリットももちろんあって例えばこんなものがある。

① フランチャイジーが経営ノウハウ等を流出させる可能性がある。

② 不振フランチャイジーが発生した場合、 その対応のための経費と労力が必要となる。

③ 不振フランチャイジーのために、 フランチャイザーのイメージが悪化する可能性がある。

■独資、JV,フランチャイズ・・・

このようにそれぞれの海外展開の方法を比較してみたが、それぞれの業界や、国によって適切な手法は選ぶ必要は必ずあるといえる。

なので社長の独断だったり社員で何となく決める危険性というのは常にあって、利害関係のない外部機関への相談や社内でよく話し合って決めた方が良いといえる。

そういう経営サポートをぼくもできるようになれれば良いなと思うことがあるくらい、失敗例を見てきているし残念な海外展開というのは見受けられるものだ。うまい仕組みを作った会社はドンドン成長するし、失敗すると後始末で何年も何年もかかって重荷になってしまう場合もあるのが、海外展開の難しさだ。

まだ国内でしか事業をやっていない場合でも将来の展開を考えて早めに検討だけはしておいて損はないとぼくは思っている。

みなさんの海外展開が成功することを祈って・・・・

keiky.


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