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株主至上主義ばかりではないこれからの会社のあり方について


最近のグローバルなトレンドとして企業の在り方というのが再定義されようしている流れを感じる。

これは日本だけでもなく、世界的な流れのような気がしていて、ぼくらの生活の基本となっている資本主義社会とその中心にある企業が今度どうあるべきかというところが問われている気がする。

既存企業はこれまでの在り方を問われているし、スタートアップ企業は既存企業にとって代わろうとしている。富の再分配に対する考え方や株式会社の制度そのものも今後いろいろな社会問題やテクノロジーの進化を背景に変わっていくような気がして、まさに個人的には変化の中にいると感じることが最近多い気がする。

■ 会社の在り方が問われている

例えばCSR(企業の社会的責任)、CSV(共有価値の創造)に始まりSDGsやESG投資など色々な面で株主至上主義に対する課題提起がなされているのも一つの事例といえる。

日本はどちらかというと今までこういった視点、会社は社会の公器であるという考えが文化的に強いので、株主だけでなくいろいろな社会や社員などとの共存共栄を意識してきている。一方で、上場会社でも株主を無視した経営をしてきたといっても過言ではなく最近ようやくコーポレートガバナンスコードとか、企業価値向上とかそういったことが言われるようになっているので逆の流れがあると感じる。

このように会社はどのステークホルダーにどれだけ、どうやって貢献していくかという部分を問われる機会が増えており、利益ととにかく追い求めるような会社ばかりではなくなっているというトレンドも生まれていて、僕らはまさに次の時代に向けた変化のなかにいるのかもしれないと思うことが増えてきた気がする。

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一方で資本主義(Capitalism)は今もこれからの経済の中心的な考え方といえるが、株主至上主義がいきすぎると対前年での伸びや、資本生産性(ROEやROAやROIC)といった指標が重視されEPS(1株当たりの利益)をどれだけ稼いでいるかという点や、どちらかというと特に中長期ではなく短期的な見方が強まってしまう傾向が出る。

他にもアメリカなどで一部の投資家が富を牛耳っているということなどに対して批判も強まっているのでキャピタリズムが色濃いアメリカでもこういったことが行きすぎたらよくないということがよく語られるようになっている。

資本生産性はぼくはとても大切な指標だと思っていて会社でもよく使っている。ある事業で一定の利益を上げるためにどれだけ経営資源を投入しているかということを示す指標で、インプット(コスト)を減らしてアウトプット(利益)を大きくするということを考える上では重要な指標として考えている。

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こうった効率性の考え方については通常の企業努力でやっていくのであれば問題ないが、この指標を割と強引にいじることができていしまう。例えば本来中長期的にみたらやらなければならない研究開発や設備投資を絞ったり、利益を自社の株を買うことで株主に流出させて将来の事業への投資資金を還元してしまうなどてROEなどの資本生産性の指標を無理くり上げることもできていしまう。こういった財テクのようなことも時には必要だが、あまりに株主優先になり社員や事業そのものへの投資が抑えられてしまうリスクをはらんでいるのだ。

そういった行き過ぎた株主至上主義に対して色々な活動が活発になってきている。アメリカの経営者団体は株主第一経営を修正すると宣言して環境や従業員、地域社会など公益も重視するという動きが出てきている。

■ 今後広がりそうな会社形態 Bコープ

一つ紹介したいのが「Bコープ」という認証制度。 BはベネフィットのBの略。コープはコーポレーション、会社という意味だ。

少し前に話題になった形態だが、今でも認証を受ける会社はグローバルに徐々に増えている会社の形態で今後の環境変化に応じてもう一度増えるような気がしている。

これは「株主最優先だけの経営ではない」ということを実現している企業に対してアメリカの団体(B Lab)が認定するという仕組みだ。有名どころで行くと、アウトドア用品の米パタゴニアや仏食品大手ダノンの北米などが認定を受けていて、ブランド力も上がり株主からのプレッシャーだけで株主利益だけではなくて色々な利害関係者のことを考えている会社ということをアピールできる。世界60カ国、3000社弱の会社が認証を受けているようだが日本では浸透しているとはいいがたい。

アメリカ・ペンシルバニア州の非営利団体「B Lab」がこの認証制度を始めたのは2006年。認証を受けるには環境・社会に配慮した事業を行っていて、透明性や説明責任などの基準を満たすことで認証を受けられるというものだ。

具体的な認証条件がガバナンス、従業員、コミュニティ、環境、カスタマーという5つの点から採点されて一定の点数に達することが認証の条件となっている。企業の社会問題解決能力を信じ、株主だけではなくその他のステークホルダーに対しても等しく利益を生み出すことを企業の成功と定義することで、企業の社会的役割を変革していこう試みといえる。

フェアトレードのように今後定着するかはわからないが、こういった制度が広まれば必ずしも株主至上主義に一辺倒という会社ばかりではない世の中になっていく可能性もあるので広まってほしいと思う。


■ 会社の役割のこれからの変化について

株式会社という形態がメインストリームであるという点は今後も変わらないような気がしているが、株主と会社の在り方というのは制度疲労も多く機能していないのが現状だ。

投資家サイドは株価ばかり気にしていることもあり、経営の中身に対しては関心が低かったりして経営者に好き勝手に経営をさせている場合も多く、結果として例えば日本のように会社が成長する力強さに欠けてしまう場合も多い。スタートアップ、ベンチャーはIPOやM&Aによるエグジットが目標となっている場合が多く一攫千金を狙って新たな事業を世の中に生み出すという役割を担っているがなかなかスケールアップしなかったり、テクノロジーの進化で似たような会社がゴロゴロできてしまったりしている。NGOやNPOも今でも多いが非営利組織として限定的な活動しかできないという制約があったりする。

このように今の株式会社もそうだがいろいろな形態こそあるものの、全体としてまた組織の形態というのは変わっていく可能性も秘めているので、いろいろな企業があってもいいと思っていてこれからどんな形態の会社が主流となっていくのか、株式会社自体の在り方についてもどんな変化が起こってくるのか楽しみだ。

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会社の公器性はぼくの好きな渋沢栄一も「論語とそろばん」で語っているし、最近だと鎌倉投信というファンドを運営している新井さんの本にも「持続可能な資本主義」という本があって、社会に向けた投資って大事ではないかという考えのもと日本の本当に良い会社の条件や実際の実例を紹介しながら投資をしている。

このようにいろいろな見方は変わっているなかでぼくらはどこを目指して仕事をしていくべきかというのを考えされられる。

上場している以上は株式市場を無視することはできず、やはりしっかりと貢献していくことが前提にありつつも、環境問題や、社員を大切にせず、行き過ぎた株主至上主義にならないようにする仕組みや、それってダサいよねという風土を世界的に作り上げていくことができればと思う。

50年後、100年後、企業はどういった形で存在しているのだろうか。徐々に社会における役割が変わっていくのだろうか。いまよりも悪化していくのだろうか。これからが楽しみだ。

keiky.


https://bcorporation.net/

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