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おばあちゃんの卵焼き

私と母は祖父母の家に住み、母は私が小さい頃から働いていた。だから一緒に暮らしていた伯母が大概幼稚園の送り迎えをしてくれた。

忘れられない出来事がある。
ある時とても早く支度ができた。
「今日は早くできたね」と言って私は伯母と手を繋いで幼稚園まで向かった。
すると、途中ではたと気づいた!

園服の半ズボン(時代を感じる言葉だね)を履いていない!!

そう、私は下着のパンツだけで歩いていた!いくら上着を着ていてギリギリ下着が見えないとはいえ恥ずかしかった!

2人して慌てて家に戻り、慌てて幼稚園へと取って返した。結局いつも通りの時間になってしまった。
これはとても強烈に覚えている。

園服では衣替えでも失敗があった。
みんなピンクの夏服の園服な中、私1人紺の冬服。
この頃から私のやらかし人生は始まってたんだな。

幼稚園には当然お弁当を持っていった。お弁当は祖母の担当だった。朝早く起き、商売をしながらのお弁当を作りは大変だったことだろう。

そんなお弁当の中身には欠かせないものがある。
それが卵焼き。甘い卵焼き。
しかも毎日卵焼き。
それでもなぜか飽きなかった。

ところが今、私はおいしいとなるといくつも買い、食べすぎて飽きてしまう傾向がある。
さつまいも味のお菓子、お煎餅などがそうだ。
前者などは季節物なので、飽きて以降、翌年、翌々年と試しに買ってみたが、かつてのような美味しさは、感じなかった。

なのに卵焼きは飽きたことがない。
あんなに毎日たべいたのに。
お弁当以外でも食べていたのに、だ。

祖母のように優しく甘い卵焼き。

母は働きづくめだった分、家事が嫌いだ。作れば美味しいのにと私は言うが、一向に好きにならない。
そんな母も卵焼きだけは苦手。
調味料の分量が分からない、と言う。
そうすると、私の出番になる。

祖母から受け継いだ卵焼きを私は作る。
優しい甘さの卵焼きを。

天国にいるおばあちゃん、私は今も卵焼きが大好きだよ。

だからこそ、この味は守り続けたい。


#未来のためにできること

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