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プロスポーツにおける地域性とファンコミュニティについて(2)(紀要論文)

明海大学経済学部発行の『地域研究(浦安学)』執筆した論文「プロスポーツにおける地域性とファンコミュニティ・マーケティング」の話の続き。ファンコミュニティにおける相互性が、スポーツチームの成功の鍵になる、というところまでお話しました。

ファンコミュニティの代表的なものとして、日本ではファンクラブがありますが、広義には、スポーツバーで一緒に観戦する場や、オンラインでつぶやきながら観戦したりする場も、ファンコミュニティとして考えることができます。

このファンコミュニティを自分ごととして捉えることを「ファンコミュニティ・アイデンティフィケーション」といいます。スポーツマーケティングの分野ではこれまで、チームを自分ごととして捉える「チーム・アイデンティフィケーション」について、多くの研究がされてきました。その中で近年、ファンコミュニティの研究が増えています。先行研究から導き出せたのは、ファンコミュニティ・アイデンティフィケーションが、チーム・アイデンティフィケーションを高め、結果として試合への再訪意図や、グッズの購買意図、幸福度などのプラスの効果があるということです。

では、ファンコミュニティ・アイデンティフィケーションを
高めるには、どうしたらよいのでしょう???

ファンにはいくつかのパターンがあるのですが、そのうちの一つに地元ファンがいます。ホームタウンとしている地域に生まれ、育ち、暮らしている人(現在・過去を問わない)がその地域を地元と認識するわけですが、地元ファンの持つ「地域への愛着」が、ファンコミュニティ・アイデンティフィケーションを高めることが分かっています。地域への愛着が高いファンは、ファンコミュニティ・アイデンティフィケーションが高くなり、チーム・アイデンティフィケーションも高くなり、結果として、積極的にチームを支援する行動を取るということになります。チームにとって大事な顧客になるわけです。

地域住民は、浦安市を住みやすい街として高い評価をしています。そんな街のことを、チームの選手一人一人が積極的に好きだと言い、街のお店の人々と仲良くなり、地元の美味しいものをSNSで発信し、イベントで街のおススメの話をしたらどうでしょう。このように、チームの選手たちが地元地域への愛着を表現することで、地域コミュニティとチームのファンコミュニティが相互に影響し合い、結果的に、チームへの支援行動と共に、地元地域への貢献意図も高まるのではないか、と思うのです。この点は、まだ検証されていませんので、仮説の域を出ませんが、今後研究を進めたいと思います。(了)

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