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【Story of Life 私の人生】 第11話:練馬へ 〜 運命の日曜日 

こんにちは、木原啓子です。
Story of Life 私の人生 
前回は、 第10話:先生からの手紙 をお送りしました。
今日は、練馬の先生のお宅に家族で行くお話をしようと思います。

先生が家に来てから3日後の日曜日。
私は両親に連れられて、練馬の先生のお宅へ行くことになりました。

赤羽線(現在の埼京線)で池袋へ行き、西武池袋線に乗り換えて桜台まで。
そこから、当時は1時間に数本しか走っていないバスに揺られて15分程で、最寄りのバス停に着きました。
十条の家を出てからバス停まで、約1時間位かかったと思いますが、その間3人とも何も喋らず、どよーんと暗い雰囲気が漂っていたのではないかと思います。
先生のお宅は、そのバス停から更に徒歩15分程度の場所とのことで、迷うといけないからと迎えに来てくれることになっていました。

バスを降りた私達家族3人は、周りの風景に驚愕!
何とバス停の後ろは竹林だったのです!

バスを降りたら、こんな感じの竹林だった

先生はまだ来ておらず、家族3人で竹林を見て唖然としながら待っていると、やがて先生がやってきました。
ここまでで既に結構疲れていた私。
更にあと15分も歩くと聞いて、うんざり。
先生が来た時点で、既に憂鬱感MAX状態となっていました。

余談ですが、降りたバス停は「東京少年鑑別所前」です。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、通称「練鑑(ネリカン)」。
竹林の前が、鑑別所の正門だったのです。

1975年当時の東京少年鑑別所

また、竹林の横は、都立城北中央公園。
当時「立教グランド」と呼ばれていた、割と大きな都立公園です。

城北中央公園(立教グランドと呼ばれていた)

「自然豊か」といえば聞こえは良いのですが、慣れ親しんでいる賑やかな十条とべたら「何もない田舎」でしかなくて。
生まれ育った十条とは大違いで、商店街はおろかお店もないし、人も歩いていないし、大嫌いな虫はいっぱいいるし…
正直なところ「とんでもないところに来ちゃったな」と思いました。
冗談抜きで「行田と変わらないじゃないか!」って、心の中で叫んだくらいです。当時は、十条と両親の田舎くらいしか知らなかったから、同じ東京23区内とはとても思えませんでした。
結果的に、私の人生の殆どは「練馬区内」で暮らすこととなる訳ですが、「住めば都」とはよく言ったもので、今は練馬から離れたくないです(笑)
それでも、やっぱり十条は私のルーツ、今でも大好きな街です。

話を元に戻します。
連れられるがままに歩いて、やっと先生のお宅に到着。
ご主人の教頭先生、娘さん3人にご挨拶して、家の中の見学をさせて貰いました。
2階の部屋を見せてもらい、1階の応接室に通されて、話し合いが始まり…
先生ご夫婦は、おべっかを使ってきて「どうですか?良い部屋でしょ」と両親に話しかけています。
両親の表情からは「嫌だ」オーラが出ているのが良くわかりましたが、2人とも遠回しの返答しかせず…
先生ご夫妻は、だんだん苛ついてきて、口調がどんどんきつくなってきて…
大人4人の顔色を見て、ただ黙っているしかない私。

大人の堂々巡りが暫く続いたところで、突然「じゃあ、ケイコちゃんに決めて貰いましょう」と聞こえてきて、「え?私??」とビックリしてうろたえる私。
私だって、当然嫌です。
こんな行田みたいな田舎で住むなんて、まっぴらご免。
幼なじみや、友達とも遊べなくなっちゃうし。
両親の顔を交互に見て、助け舟を求めたけれど、2人とも黙っているだけ。
そこに先生から「どっちにするか、今すぐ決めてもらわないと困る」と、キツい口調で言われてしまい、父から「お前の好きにしていいよ」と言われたものの…

6歳半の子供にしては、考えに考え抜いたんです。
もし、私が「嫌だ」といえば、このまま十条にいることが出来る。
でも、相手は学校の担任の先生。
これからもずーっと毎日学校で顔を合わせなくちゃいけない。
もし私が嫌だって言ったら、明日から学校で先生から虐められることになっちゃうかも知れない。
先生が他の学校に転勤しない限り、6年間もそんな思いをするのは耐えられない。

そう結論付けた私、大失態をやらかしてしまいます。
あろうことか、「うん、引っ越してもいいよ」って答えてしまったのです。
両親の驚愕の顔、その後すぐに鬼のような怒りの顔に変わったことは、今でも忘れられません。
先生ご夫妻は「してやったり」と、勝ち誇った笑顔に…
「それじゃ、ゴールデンウイークに引っ越しだ」ということで決着が着きました。

帰り道、先生がバス停まで送ると言ってくれたけど、両親は「道は分かるから大丈夫」と断り、3人でとぼとぼ歩いて行きました。
道すがら、両親から「本当に練馬が良いのか?」と責め立てられ、家に着くまでの間、ずっと罵倒された私。
「本当は行きたくない」と言ったら、「じゃあ何で正直に言わなかったんだ」と怒鳴られたけど、「明日から先生にいじめられるかも知れないから」とは口に出して言えず、心に大きな蓋をしてしまった。
ただただ「ごめんなさい」と泣くしかなかった私。
お父さんとお母さんが、私に結論出せって振ったせいなのに…
お父さんとお母さんが断ってくれたら良かったのに…
この二言も、心の中に蓋をして封印してしまいました。

最終的に、4月29日に練馬に引越しすることに決まり、その後2週間で、バタバタと準備が進んでいきましたが、事あるごとに「全部お前のせいだ」と言われ続けることになります。
この日を境に、私の人生は天国から地獄へ急転直下。
暗黒時代が幕を開けたのでした。

〜続く。

今日はここまでです。
次回は、第12話:お引越し に続きます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
またお会いしましょう♪


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