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「ハンチバック」市川沙央著 を読んで

前半2割ほど読んで、平野啓一郎の「本心」に出てくるイフィーを思い出した。

また、バリバラというNHKの番組で重度障害者の性について、パートナーがいないのでモヤモヤした欲望が晴れないという悩みを語っていた。なのに介護者などからのセクハラはあるとニュースでは報じられる。そう、セックスは誰でもいいというわけではないのだ。そこでは自慰を補助する器具の紹介もあった。

重度障害者はセックスで身体を傷めることもあるから、器具を使った自慰ならば安全だし、アダルトビデオなどを使えば更に満足がいくのだろうと思うが、触れ合いたいという根源的な欲望は満たされないだろう。(「こんな夜更けにバナナかよ」という映画にも描かれていたように)。

男性介護者のショッキングな言葉「弱者が無理しなくていいんじゃないですか。金持ってるからって」「俺も弱者ですけど」と続ければ、言われた主人公は「もしかしたらインセル?こわ!」と差別の応酬を心の裡でする。

聖と俗が入り混じり、性と死が入り交じる。そして、互いに入れ替わる。性は聖になり、俗は退屈という死になる。

セックスが出来ない身体に宿る瑞々しい欲望は、昇華されずに澱のように淀む。そして、そこから生まれるのは、猥雑なエネルギーに満ちた厖大な果たされなかった物語だ。

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