映画「赤と白とロイヤルブルー」2023年制作 マシュー・ロペス監督を観て
アメリカ大統領の息子と、イギリス王国の次男ヘンリー王子の恋物語。
出会った時から惹かれ合っていたけれど、最初はお互いの心が解らずつっかかり合いをしていたが、年越しパーティーでアレックスが他の人たちと新年のキスをしているのを観たヘンリーが嫉妬して庭の木の陰で佇んでいた。追いかけてきたアレックスを観ていきなりキスをする。そして、それがアレックスの心のなかで大きな意味を持ち始め、彼は自分がバイセクシュアルだと認識する。一方ヘンリー王子は寄宿舎生活のなかで、ゲイだと自認しており世間を欺いていた。
前半はセレブは自由でいいな、と思わせるような作りだったが、二人の愛が深まるにつれ物語も深まり、ヘンリー王子に「二十一世紀に王室なんて馬鹿げている」と言わせ、「メキシコ移民の労働者階級から大統領の家族になることはとても難しいことなんだ」とアレックスが言うあたりから、この愛が階級を超えた愛なのだと知らされる。
アレックスは母の大統領選に援護活動をし飛び回っていたがその最中ヘンリーとのすべてのメール、そして夜中の美術館での二人のダンスの姿が全世界に流された。これがアレックスの母の大統領選にマイナスの影響があるのでは、と思われたが、アレックスは悪びれずにカミングアウトし、性的少数者としての矜持を語ったため好感度を上げた。また、ヘンリーも保守的な宮殿内では諌められ無かったことにされようとしたが、アレックスを呼んで王様が二人に話をしている最中に、二人を受け入れる何千人という人が宮殿に押し寄せた。二人は国民に受け入れられたのだ。
この映画には性的少数者だけでなく、多様な人種が混じり合い、時代が変わる方向性を示していると思った。彼は彼であって〇〇人ではないのだ。彼女も彼女なのだ。人間讃歌の映画だと胸を熱くした。最後の出演者、協力者のリストは世界中の言語で流され、これだけで10分近くかかった。前半の戯画化された単純なラブストーリーから厚みのある物語へと変貌を遂げる。決して諦めないこと、しぶとく粘り強く想いを伝えていくことが大切だと全世界の人にエールを送っている。
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