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テーマを深く共有することの難しさ その最も矛盾した時間


コーチングでは、テーマの合意がとても難しい。
最初の早い段階である程度の方向性をつかむ必要があるが、クライアント自身も、最初から本当に話したいことが明確であることはほぼない。事実、話ながら変わっていくことが殆どなので、それをコーチは理解しつつ深めていく必要がある。

そのためにも、コーチはセッション全体ももちろんだが、特に最初のところでできるだクライアントが自由に話したい話ができる場をつくっていかなければならない。

ここで矛盾的なことが生じている。
まず、セッションでは、基本的に、出来るだけ早い段階でクライアントの方向性をつかんでテーマについて合意する必要があるが、コーチが方向づけないためにもクライアントに自由に話してもらう必要がある。
この二つが対立することは明らかだろう。

コーチはクライアントに自由に話すのを許してしてしまうと話が長くなってしまう気がする。(これは、事実そうなるときもあるが、ほとんどはクライアントが自分で話す方が早くたどり着くクライアントにしかできないことなので、当然ともいえるが。)

クライアントの話は当然ながら、最初のうちは要領を得ないことが多く、コーチはそれを聴きとって、要約し、クライアントの要望がクリアになるサポートをする必要がある。
実は、これこそがコーチの仕事そのものといえる。
コーチはこの時クライアントが一番言語化しにくいところに取り組んでいることに気づいているだろうか?

クライアントが本当に必要としていることは何なのかを言語化することがセッションの肝だか、それが最初にくるので、重要ではない錯覚が起きてしまうのかもしれない。

クライアントはテーマを話しながら少しずつそれはクリアになっていく。
最初から本当に取り上げたいテーマに気づいているクライアントなどいない。

クライアントとのやり取りの中でコーチの中で起きることとして
まず、クライアントに本日取り上げたいことを話してもらう。

クライアントからは、抽象的なこと、端的な一般的な言葉、要領を得ない長い説明、などがかえってくることが多いだろう。

それに対して、コーチは、掘り下げることなく、すんなり受け入れてしまうことが多い。

この時何がコーチの中で起こっているのか。

クライアントが自分で言っていることが完璧に表現されているものとの思い込みによる前提があるかもしれない。

そこを丁寧に共有していくことが一番重要なのに、そこが重要視されていない。

コーチは、テーマを聴いた瞬間、ある程度クライアントの答えを予測してしまうのかもしれない。
ここで、コーチは難しい問題だと感じたり、簡単な解決方法を思いついたりする。

難しい問題だと思ってしまうと、コーチは問題解決の方向に走ってしまう。
簡単な解決方法を思いつくと(ほとんど勘違いだが)クライアントを誘導する
テーマを共有する前にこのようなことが進むことがとても多い。

コーチはテーマについて質問するだけで共有できたと思いこんでしまうのかもしれない。
コーチングの経験があるコーチでも、かなり熟練しないとついついやってしまうことだ。

そのためにも、思い込みが発生することから逃れられないことをコーチは受け入れ、謙虚に自分の(人間の)性質を自覚し、かなり意識的にこの部分に取り組む必要がある。

すべては思いこみのなせる技なので、まずは、自分が本当にわかっているのかを常に問い続けなければならない。
それがわかるかどうかは、今の自分の理解を言語化し、クライアントに要約して確認することが出来るかどうかだ。
ここに自信がないので、要約することを省く。
そうなると、コーチは、クライアントに自由に話させることができなくなる。

コントロール不可能な感覚の恐怖に耐えられないのでこれらは起こるのだろう。
これは、DiSC関係なく、全てのスタイルに共通して起こることだ。
コントロール不能、または、「わからなさ」と言ってもいい。
これらが怖いのは全ての人間に共通するものだ。

コーチの中に、自分が間違うことへの恐怖も起こってくる。

すべて、無意識のわからなさに耐えられないことから起こる。
わからない状態に居続けることができなければ、大切なこの段階を探求することはできない。

これは、ダメなコーチの話をしているのではなく、この感覚が起こってしまうのは、全てのコーチが逃れられないことだと受け入れるしかない。

自分がどこに、何によって錯覚するのかを認識しておかなければ、それに気づくことも、対応することもできないだろう。

テーマの共有はこのように、難しい矛盾したことが錯綜する場面だということを認識しておく必要がある。

そして、それに対応するためには、自分が分かっていないことに気づくしか方法はなく、
それが分かったら、相手に自分が理解していることを伝えて、再びクライアントの要望を聴いて話してもらう時間を作るしかない。

熟練したコーチは、この場面を今の自分ができるから簡単だと言ってはならない。
自分もできなかった頃のことを忘れてはならない。
熟練したコーチが、今でもこの場面に不安を持って取り組めているなら、それは、わからなさに対応できている証拠だ。

最後に、最大の注意点として
ここに書いてあるからと、最初の段階でクライアントにもっと深く話すよう追求してはならない。それは、コーチが自分が間違わないために時間を使っているかもしれないことに気づく必要がある。

最初から、自分が何を求め、どうやったらそれが手に入り、行動できるのかを分かっているはずはない。それが分かっているならば、わざわざ高いお金を払ってコーチングを受ける必要などない。

クライアントにできるだけ話してもらい、クライアントが望むものをコーチも要約して、方向性を共有しなければならないが、追求しすぎてはならない。

ここが最大の矛盾なのだ、この匙加減が出来たとき、プロフェッショナルといえるのだろう。

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