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マエストロが書いた訃報文

7月6日の朝、西部劇など多数の映画音楽の作曲家として世界的に有名なエンニオ・モッリコーネ氏が亡くなりました。享年91歳でした。文字通りイタリアじゅうがマエストロの死を悼みました。おそらく日本でも報道されているかと思います。
モッリコーネ氏は、自らの訃報文を生前に書き残して弁護士に預けていました。それはイタリアの各紙に一斉に掲載されました。その内容があまりにも胸を打つものだったので、日本語で紹介したく思った次第です。(すでにどこかで和訳されているかもしれませんが…)

「私、エンニオ・モッリコーネは死にました。それを、いつも私のそばにいてくれた近しい友人たち、そして、ちょっと遠くにいたけれど親愛の情を持って挨拶していた友人たちにお知らせします。全員の名前を挙げることは不可能です。が、特に思い出すのは、私の晩年の人生に深く関わったペプッチョ(ジュゼッペ・トルナトーレ監督)とロベルタです。
私がこのような形でみんなに挨拶をし、身内だけの葬儀をするに至った理由はただひとつ:誰にも迷惑をかけたくないのです。
私の人生の大部分を、私と私の家族とともに分かち合ってくれたイネス、ラウラ、サラ、エンツォ、ノヴェルトにたくさんの親愛を込めて。私の姉妹アドリアーナ、マリア、フランカ、そして彼女たちの大切な人々に愛を込めて。どれほど私は彼らのことを愛おしく思っていたことか。私の子供たちマルコ、アレッサンドラ、アンドレア、ジョヴァンニ、私の義理の娘モニカ、私の孫たちフランチェスカ、ヴァレンティーナ、フランチェスコ、ルーカに、強く深い情愛を込めて。どれほど私は彼らのことを愛していたことか。
そして最後にマリア。でも、順番が最後というのは優先順位が最後というわけではないんだよ。彼女には、私と彼女を結びつけてくれた素晴らしい愛を、手放したくないこの上ない愛を、今また再び捧げます。彼女にこの言葉を送るのが一番辛い。さようなら。」

こういう文章の訳は本当に難しいです。原文は、何度読んでもその素朴さと実直さと深い愛情と豊かさに胸をつかまれるような文章です。ニュアンスも含めてイタリア語で理解できることは、本当に幸運だと思いました。(報道機関によって原文に多少の違いがありましたので、幾つかの新聞と動画ニュースを見て訳してみました。)

お葬式は亡くなった当日に、ご本人の望まれた形ですでに行われました。儀式の最中に流されていたのは、映画「ミッション」のテーマ曲だったそうです。

マエストロ、さようなら。ありがとう。

                           2020年7月8日

追伸
参考にした記事のリンクを下に添付いたします。


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