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亜熱帯気候と雪解け水が作り出す台湾のウイスキー「KAVALAN(カバラン)」。宜蘭県でカバランウイスキー蒸留所見学!!


亜熱帯の台湾でウイスキー?

そんな疑問を持つ方も多いかもしれません。今回私は真夏の台湾へ渡航し、台湾北東部の宜蘭県にある「金車噶瑪蘭威士忌酒廠(金車カバランウイスキー蒸留所)」へ行ってきました。「KAVALAN(カバラン)」というウイスキーができる工程を学びつつ、楽しいDIYにも参加してきましたよ!


「KAVALAN(カバラン)」ウイスキーとは?


亜熱帯でのウイスキー製造という今までの常識を覆し作られたウイスキー「カバラン(KAVALAN)」は、2008年に最初のウイスキー「カバラン クラシック シングルモルト ウイスキー」を発売して以来、世界的権威のあるウイスキーアワードを続々と受賞しました。

「ワールドウイスキーアワード(WWA)」では2015年・2016年に2年連続ワールドベストウイスキーに選ばれるなど、短い歴史の中で数々のインパクトを世界に与えています。

出典:Kavalan Whisky公式サイト 2008年販売の最初のウイスキー「カバラン クラシック シングルモルト ウイスキー」

カバランウイスキー蒸留所を運営する「金車(King Car)グループ」は、台湾の飲料メーカー。主力商品である「伯朗珈琲(Mr. Brown)」は台湾の缶コーヒーシェア6割を占めています。

私が台湾に初めて行った時に、ホテルに置いてあったのはMr. Brownのコーヒーでした。台湾の方なら誰もが知っているコーヒー。紳士がグッドサインをしているイラストロゴが目印です。

写真は伯朗珈琲公式サイトより引用

工場があるのは台湾の宜蘭県。ここは大きな山脈に囲まれ、以前は台北から山の上を通過しないと行くことできない場所でした。交通が不便で陸の孤島状態だったのが、2006年に山脈を貫通する「雪山トンネル」が完成すると、台北からは車で1時間ほどで行ける観光地に。

蒸留所が宜蘭にある理由の1つが、豊富な水資源である雪山の雪解け水を使用できること。これがまろやかで独特なカバランの味わいを生み出しているのです。

田園風景が広がります。この辺は平野で田んぼが多いです

私は今回、蒸留所まで台湾の友人に車で運転してもらいました。(謝謝!!)個人旅行で行く場合は台北からバスや電車で行くことが可能です。まず宜蘭駅まで行き、そこから蒸留所までタクシーやUberで20〜30分ほどで到着します。

ちなみに宜蘭駅は台湾を代表する絵本作家「幾米(ジミー・リャオ)」のモチーフで溢れた空間になっております!(こちらはまた別の機会に…)

蒸留所見学スタート!


蒸留所に到着!敷地内に入ったあとも、目的の駐車場まで車じゃないと辿り着けないくらい広大な敷地です。まずは会議センターへ。

今回の見学は全て、金車海外営業部門日本エリアマネジャー、井上さんに案内をしていただきました。本当にありがとうございます!!

まずは会議センターにて、金車グループの会社概要の映像を視聴。10分ほどで金車グループの事業内容が丸っとわかる映像です。ものすごく勉強になりました。コーヒーの他にも飲料事業や、最近日本でも飲めるようになったドイツビール「Buckskin Beer」のビール事業。冷凍食品、洗浄用品、蘭やエビの生産、物流事業など、多岐に渡りまたグローバルに展開していることがわかります。

大塚製薬のポカリスエットなどの受託生産もしているとのこと!台湾で販売されているポカリスエットは、金車グループが作っているんですね。

Buckskin Beer
金車鮮蝦
台湾で販売されているポカリスエット

先ほどの会議センターで用意してくださったお水にも注目。実はこの2日前に台湾鉄道弁当を購入時、一緒に売店に並んでいた水と同じブランド。この波爾天然水はカバランを作る時に使っている水と同じものなんだそう!驚き!

台湾茶に詳しい友人からも「このお水で入れると美味しくなる」という情報をゲット。波爾は英語で「ボール」の当て字。この紳士はボールさん。

会社概要の映像に感動したまま、早速蒸留所へ。入口に向かって真っ直ぐな道を進んでいきます。左側に見えるのが蒸留所です。

会議センターから続く道には、屋根もあり雨でも安心。

蒸留所へ向かう途中で、樽の中を焼く工程を見学。なぜ樽の内部を焼くのか?の理由については、公式サイトからの引用を載せます。

カバランウイスキー蒸溜所のオリジナル製造工程では、蒸溜新酒を樽に詰める前、樽はSTR製造工程という非常に重要な過程を経ることになります。その過程は、シェービング、トースティング、リチャーリングの3つの工程からなります。
2015年のカバラン ソリスト ヴィーニョ バリック カスクストレングスは、蒸溜所向けに特別に考案された樽焼き入れ技術により、熟成後のヴィーニの口当たりが芳醇なものとなり、濃厚なフルーツの香りがしっかりと感じられます。また、ワールド・ ウイスキー・アワード(World Whiskies Awards)にて、ベスト・シングルモルト・ウイスキーを受賞しました。

Kavalan Whisky公式サイト

火が入りました!どんどん強くなる炎。

「すごい火力!」と驚いているのも束の間…

メラメラと燃え盛る大きな炎に!世界中から集めたバーボン樽やシェリー樽などに加工を施しているのですが、樽に残ったアルコールが反応してこの火力になるそうです。公式youtubeには、STR製造工程の動画もありますのでご覧ください。

蒸留所の反対側の敷地に目を向けると、草刈り中。草刈機の後ろを鳥が追いかけている風景が。草を刈ると地面から虫が現れるので、それを食べに鳥がやってくるんだとか。この工場の風物詩となっているそうです。

可愛らしくほっこりした風景。豊かな自然があることも実感

入口へ到着です。平日にもかかわらず、一般のお客さんもたくさんです。

入口のすぐ近くには、麦芽の貯蔵所が。とにかく巨大!!

さあ入りましょう。

入口に鎮座していたのは、カバランの樽。そしてカバラン蒸留所が完成した2005年の年号が入った看板です。樽の上部を見ると……

これはこの蒸留所で作られたウイスキーの1つ目の樽!!ここから台湾を代表するウイスキーの歴史が始まったんですね。

2階が見学ルートです。階段を登ります。

バーボン樽がずらり。
カバランの年表や蒸留所について、ウイスキーについての展示があります。簡潔に詳しく知ることができますよ。わかりやすく書いてあるので、中国語がわからない方でも、なんとなく読み解けると思います。

世界5大ウイスキーには、日本ウイスキーも入っています

麦芽(=モルト)の実物も!

通常の麦芽と、燻製された麦芽の香りを比べることができます。この燻製されたピートモルトが、ウイスキー特有のスモーキーな香りを作ります。

香りといえば、この蒸留所に入った瞬間から酔いそうなほどのウイスキーの香りが充満していました。好きな方には、きっとたまらない香り!これも実際に蒸留所へ足を運ぶからこそわかる体験ですね。

各種樽と熟成年数での色の違いも一度に比べてみることが出来ます

下の写真は「エンジェルズシェア(天使の分け前)」の説明。天使の分け前とは、蒸散したウイスキーが減っていく現象のこと。年々樽の隙間から蒸散していくウイスキーのことを、昔の人は「天使が飲んでしまったから減っているのだ」と解釈して、この呼び名がついたそうです。

カバランの特徴の一つとして、寒暖差の激しい場所で作られているため他のウイスキーと比べて樽熟成がかなり早いです。そのため短い期間で製造することができます。しかし暖かい場所での製造のため蒸発する量も多く、短い年数で大幅に量が減ってしまうデメリットも。

この後の写真でも出てきますが、樽を縦に置いて貯蔵することで空気に触れる表面積を減らし、蒸発を少しでも減らすよう工夫されています。

その後は「糖化」「発酵」が行われるゾーンへ。

私たちが見ていたのは2階からなので釜の上部。1階では、実際に工場で働いている方の姿も発見。さらに先へ進むと、原種の詰まった樽の貯蔵庫が見えました。

貯蔵庫はクーラーなどは使わず、窓の開閉のみで庫内の温度を調整しているそうです。

はるか遠くまで並んでいる樽

先ほどの「天使の分け前」の説明の際にも書きましたが、このように縦置きすることで、原酒が空気に触れる面積を減らしています。

圧巻の蒸留所見学が終わったあとは、今日のもう一つのメインイベント!自分で調合するカバランウイスキーのDIYです。

草刈りは継続中で、鳥がさらにたくさん集まっていました。

DIYウイスキーブレンド


さて、中に入りましょう。

広い!天井も高く開放感があります。

空き瓶を利用したアート作品も展示中。

まず案内していただいたのは、試飲ブース。

真ん中の大きな瓶は「キングカー40周年アニバーサリー ワインカスク」 

ここでは、限定のシングルカスクなどを含め、あらゆる種類の試飲が可能です。試飲は種類によって価格が変わるので、メニューをご確認ください。この蒸留所ではお土産としてカバランも買えますので、ここで試飲してから購入したいボトルを決定するのも良いですね。

私たちの前にいたお客さん、たくさん試したようです。

この試飲室の目の前は、カバランやバックスキン、軽食が楽しめるようになっています。ファミリーで楽しんでいる方も多い印象でした。近所に住んでいる方の憩いの場にもなっているそうで、だからお子さん連れが多いんですね。みんなカフェのようにリラックスして過ごしていました。

さあ、楽しみにしていたDIYウイスキーブレンドの時間です。井上さんが詳しく教えてくださいました。※今回は日本語でご案内をいただきましたが、通常のDIYでは中国語での説明となります。

席に着くと、グラスからは感動的で芳醇な香り!カバランの特徴でもある、トロピカルな香りが感じられます。

資料はこのように、中国語・英語・日本語の説明になっているので安心。ビーカーの下の円の部分には、種類も書いてあるのでわかりやすいです。

ちなみにDIYウイスキーブレンドで使われるのは
・エクストラバーボン
・オロロソ
・ポート
・ピーティ
の4種。

それぞれの香りと味を楽しみつつ、好みで加水してその変化を楽しみながら作っていきます。ブレンディングの方法も日本語で書かれているので安心です。

4種類が合計6ccになるように測ってグラスに注ぎます。試験筆記のところに分量を必ず明記しましょう。

理科の実験みたいで楽しい

4つのうち、一番好きな味をボトリングします。
私はBの割合が一番多いものが好みでした。割合が多いものが、自分の好みのウイスキーでもあるということ。私はシェリー系のウイスキーが好きなようです。

井上さんが分量を計算してくださり、その後同じ部屋にある樽からボトリングのためのウイスキーを注ぎます。入れすぎないように注ぐのにドキドキしました。

いよいよボトリング!!この美しいボトルは、なんと手作りのガラスのボトル。そのため、容量も1つ1つ僅かに違ってくるそうです。

注ぎいれて栓をします。栓がきちんと閉まっているかスタッフさんが確認してくださり、その後栓の両脇にシールを貼ります。

今日の日付などを書いたシールをボトルの正面に貼ります。真っ直ぐ張れるか緊張!自分オリジナルの配合で作ったウイスキーに、こうやって日付が入るので、記念や思い出にもなりとても良いですね。

最後にタグをつけ、かっこいい箱に入れて完成!!これは素敵すぎるお土産です〜!!感動!!!素晴らしい〜!!!

樽の前で撮ってもらいました。

DIYウイスキーブレンドは1日に6回開催されており、当日申し込みでOKです。参加費:1本300ml/1,800台湾ドルとなります。

その他の詳しい内容については、下記の公式ページからご確認ください。
Kavalan Whisky公式サイト

素敵な袋に入れていただきました

さてさて、DIYも終わりルンルン気分で向かったのはギフトショップ。カバラン各種はもちろん、金車グループが製造している飲料やコーヒーなど、さまざまなものが購入できます。金車グループが手がけている商品ラインナップがほぼ全て置いてあるようです。

ここでしか買えない特別なカバランなど、とにかく品揃えが豊富。カバランファンにはたまらない場所ですね。

蒸留所でしか購入できないウイスキーシリーズも!
蒸留機を模した可愛い入れ物入り

お土産に人気の、試験管のようなボトルに入ったウイスキー。1本50ml入りです。2本や5本入れられるボックスも準備されています。いろんな種類を試したい方や、ウイスキー好きな方へのプレゼントにもおすすめ。

Mr. Brownのインスタントコーヒー各種がずらり
ドリップコーヒーも

冷たいソフトドリンクやお酒も販売されています。ここで買ってそのまま飲めるのも嬉しいですね。

ボールさんシリーズはお茶もたくさんあります!

今回は時間が限られていたため、さくっと見た感じで終わったのですが、もし一人で行ってたら、ここだけで1,2時間は楽しめちゃいそうな気がしました。1つ1つの商品が台湾好きにはたまらない!パッケージを見ているだけで楽しいです。

「最後はアイスクリームを食べましょう!」と井上さんが連れてきてくれたのはこちらのアイスクリームコーナー。

なんとカバランウイスキーのアイスと、バックスキンビールのアイスクリームがある!!もちろん2つをチョイス。これは確実に美味しいやつだ…

うううこれは美味しい〜!!どちらも物凄く美味しかったのですが、私は特にビールのアイスクリームが好きでした。ビールとアイスでググってみると「ビールフロート」なるメニューもあるようなので、今度は飲食スペースでビールも一緒に頼んでビールフロートを試してみたいです。笑。
このアイスは蒸留所限定だそうなので、ぜひ忘れずに食べてくださいね。

帰り道。宜蘭の観光名所でもある亀山島が見えました

真夏の台湾で堪能し尽くした台湾ウイスキーの旅。

私自身「ウイスキーっていろんな用語もあるし、なんだか敷居が高い……」という感覚があります。しかし「台湾×ウイスキー」ということで興味を持ち、こうやって初めて蒸留所に行くことになりました。実際に行ってみて、想像を超える楽しさ、美味しさを直接感じることができました。

台湾が好きだけどウイスキーはよくわからない…という方は、ぜひカバランを入口として、ウイスキーの楽しみを知ってほしいです。逆に台湾をあまり知らないお酒好きな方は、ぜひカバランを目的に台湾に行ってみてください!

工場に行く時間がないという方もご安心を。台北に直営のカバランウイスキーバーがありますので、ぜひそちらにお立ち寄りください。ウイスキーはもちろん、食も台湾をテーマに展開されています。


今回案内をしてくださった井上さん、蒸留所スタッフの皆さま、本当にありがとうございました!!そして蒸留所まで同行してくださった台湾の友人Hさん、本当にありがとうございました!!


【見学・体験の詳細情報】

金車噶瑪蘭威士忌酒廠
(金車カバランウイスキー蒸留所)

住所:宜蘭縣員山鄉員山路2段326號

公式サイトURLhttps://www.kavalanwhisky.com/jp
蒸留所見学URLhttps://www.kavalanwhisky.com/jp/visit.php

見学についてのお問い合わせ
・蒸溜所ガイドツアー予約は、こちらで詳細内容を確認できます。

・ブレンド体験
・DIYウイスキーブレンド
上記についての詳細はこちらで詳細内容を確認できます。


筆者紹介【keiko在台灣】

台湾に関する「モノ・コト・ヒト」をつなぐ、台湾コネクタ。現在、フリーランスとして活動しております。
【業務内容】
台湾等に関する企画プランナー/イベント企画・運営/インフルエンサー/ライター/デザイナー/PRなど。

2つのメディアで台湾連載執筆中。

台湾関連のお仕事のご依頼など、お気軽にお問い合わせください😁



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