梅の香りとバレンタインデー
『校庭の梅の香りが緊張を優しく包むバレンタインデー』
バレンタインデー💝
この歳になるとあまり関係ない行事だが、若い頃は2月になるとそわそわしたものだった。
小学生の頃は、手作りのチョコを幼馴染〈Jくん〉に作っていた。あの頃は母の友人に作り方を教えてもらい、夕食を終えた夜の台所で、何度も失敗しながら作った。今考えると、板チョコを砕いて溶かして好きな形に固めただけだったので、厚くて硬くて食べられなかっただろう。Jくんは「ありがとう☺️」と笑顔で受け取ってくれたけど、かじれなかったとおもう。今更ながら、Jくんの優しさに感謝だ。
中学生になると、「Jくんのことを好きで好きでたまらないの❤️」と私に迫ってくる同級生が現れた。
彼女は「恋してる自分が好き」というタイプで、クラス中に「Jくん好き宣言」をしていた。私と一緒に帰る時、Jくんは
「ああいうのにどう対応していいか分からない」と困惑していた。
そしてバレンタインデーには、
「敬子、お願い!このチョコをJくんに渡して〜」と甘えた声で来ていたが、
「自分で渡した方が良いよ」と断っていた。
Jくんを好きだと言う女の子は結構いて、毎年チョコを何個かもらっていた。ある放課後、校庭の端にJくんと下級生が俯いて向かい合っているのを見かけた。その時、校庭には紅梅が咲いていて、甘酸っぱい香りが漂っていた。
中学生になってから、私はJくんにチョコを渡さなくなった。「もう私があげる必要がないな」という思いと「敬子からチョコが来ないなぁ」と気付いてもらいたい気持ちと、複雑だった。これが青春の第一歩なのだろう。
今日、庭の梅の香りを嗅いだ時、ふとJくんのことを思い出した。元気かな…