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好きな絵本 『なまえのないねこ』

文  竹下文子・絵  町田尚子

そうだ。
わかった。
ほしかったのは、なまえじゃないんだ。


なまえを  よんでくれる  ひとなんだ。

『なまえのないねこ』末尾


吾輩は猫である。名前は、まだ無い。

『吾輩は猫である』より

なんて、夏目漱石が浮かんできそうなタイトルの絵本でしょっ。わたしは浮かびました。笑

この絵本に出てくる猫は、誰にも名前をつけてもらったことのない猫。

ちいさいときは  ただの「こねこ」だった。
おおきくなってからは  ただの「ねこ」だ。

『なまえのないねこ』冒頭

街の中で出会う猫にはみんな名前があって。そこで言われた。

じぶんで  つければ  いいじゃない。
じぶんの  すきな  なまえをさ。

お寺の猫、じゅげむに言われた言葉

・・・・・
探す。探す。探す。
探し回ってもなかなかいい名前がみつからない猫は、雨に降られ、ベンチの下で雨宿りをしていたところ、赤い傘をさした、優しい声の女の子に出逢う。

そして、そこで自分のいちばん欲しかったことを理解する猫。

大事な大事なことに気付く猫。


なんだかなぁ。
なんか染みるんです。

ほしかったのは、なまえじゃないんだ。
なまえを  よんでくれる  ひとなんだ。

この言葉が。

あぁ。やっとみつけた。
ぼくを呼んでくれる人を。
1番欲しかったのは、ぼくを受け入れてくれる人だったんだ。
そういうお話し。

読み聞かせのボランティアに行った時には、この絵本を読んだ後に必ず言ってしまいます。
「あなたの名前はなんて言うの?」
「いい名前だね。良かったね。いい名前をもらったね」って。
そして、自分の名前を大事にして欲しいな、っていう言葉をつけてしまいます。


竹下文子さんの作ったお話しで、町田尚子さんの絵です。
町田尚子さんの絵がまた好きなんです。
他にもたくさん猫を描いていらっしゃいます。
昨年、長野県の安曇野にある、いわさきちひろ美術館に行った時に、このお話しの原画が飾ってあったのですが、丁寧なタッチで、猫がイキイキとしていて、その絵の前で時間を忘れて見惚れてしまいました。
絵本全体の色使いも素敵で癒されます。

是非、読み聞かせに何を読もうかと迷っている方、子どもさん、お孫さんに読んであげたい本を探している方、この本を手に取ってみてください。

何だか目の前にいる子どもたちを、ぎゅーっとしたくなる本ですよ。


犬派(犬を飼っているだけで犬派と呼んでいいのか分かりませんが)の私がオススメする、猫の絵本でした。

お付き合いありがとうございました。



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