重陽の節句再び
重陽の節句
今日は旧暦九月九日、重陽(ちょうよう)の節句と言われる日です。古来、奇数は「陽」の数としておめでたいものと考えられ、その最高の数「九」が二つ重なることは本当におめでたい日だったのですね。
現在の日本ではほとんど見られない風習なので、あまり馴染みがないのが残念ですが、詳しくはこちらをご参照ください。
https://www.hibiyakadan.com/lifestyle/z_0064/
9月9日は重陽の節句!菊酒や栗ごはんなど菊の節句の行事食と由来
9月9日は五節句の1つである「重陽の節句」です。「菊の節句」とも呼ばれ、菊酒を飲んだり、栗ご飯を食べたりして無病息災や長寿を願います。
中国では親族が揃って、小高い山に登り、「茱萸(ぐみ)」を頭に挿して厄払いをしたり、杯に菊の花を浮かべた「菊酒」を飲んだりしたとか。
今日はその「重陽の節句」にちなんだ詩をご紹介します。
王維の詩
唐代の詩人王維が、科挙の受験の為に一人故郷を離れて、都長安に遊学していた17歳の頃に書いた詩です。
九 月九 日 忆 山 東 兄 弟 jiu yue jiu ri yi shan dong xiong di
王 維 wang wei
独 在 異 郷 為 異 客 du zai yi xiang wei yi ke
毎 逢 佳 节 倍 思 親 mei feng jia jie bei si qin
遥 知 兄 弟 登 高 处 yao zhi xiong di deng gao chu
遍 插 茱 萸 少 一 人 bian cha zhu yu saho yi ren
【書き下し文】
九月九日、山東の兄弟(けいてい)を憶(おも)う
独り異郷に在って異客(いかく)と為り
佳節に逢う毎に倍(ます)ます親(しん)を思う
遙かに知る兄弟高きに登る処
遍(あまね)く茱萸(しゅゆ)を挿して
一人(いちにん)を少(か)かんことを
*「山東」は現在の河北・山東・河南一帯の地方を指す。
・詩の形式・・・七言絶句
・押韻・・・親qin 人 ren(七言詩だが、一句末は押韻せず)
【桂花試訳】
重陽の節句に思う兄弟のこと
たったひとり見知らぬ土地で、よそ者として暮らす
節句の度に思い出す 家族のこと
遙か遠くからでもわかるよ お前たちが丘に登ってみんな頭に茱萸を挿し
兄さん(私)だけがいないねと話しているのが
王維(699?~761?)山西省太原の人。
若くして卓越した才能を発揮し、都長安に出て、官吏登用試験(科挙)に挑みます。一説によると、21歳の若さで科挙進士科に合格したとのこと。その後も順調に出世を果たしたエリート官僚でした。
この詩が書かれた17歳の頃は、家族と離れて一人、長安で受験勉強に励んでいたようです。
晩秋に向かう季節、孤独な異郷に身を置き、家族が揃うはずの節句の行事に自分だけが参加できない寂しさが何となく共感できるような気がしますね。
また、同じ年(717年)は、第八回遣唐使が入唐した年でもあり、メンバーには阿倍仲麻呂や吉備真備が含まれていました。
王維は、阿倍仲麻呂との交流もあり、753年に仲麻呂が帰国する際にはその送別の宴で詩を詠んでいます。目に見えない糸がどこかで繋がっていたのでしょうか?
【参考書籍】
・『中国古典選26 唐詩選(二)』 高木正一著 朝日新聞社
・『中国の詩人⑤ 審美詩人王維』 伊藤正文著 集英社
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