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2022年の12曲[後編]

前編

思ったよりも文字数が増えてしまったための後編です。
改めて、選定基準は以下の3つ。

  1. 2022年にリリースされた曲であること。

  2. 繰り返し聴いたこと。

  3. 自分の琴線に触れる部分があったこと。(特に自分の体験に結びついていたりすると強い)

2022年『Spotifyまとめ』


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2022年の12曲(リスト)

7. Glimpse of Us/Joji

アメリカに来て、友人が車で流しているところからJojiを知りました。「クルージング」と呼ばれるいわゆる夜中のドライブ。中西部の平坦で真っ直ぐな道をひたすら加速していくマニュアル車。

そこの後部座席で聞きながら、
「ああ、なんかこの音像はすごく深夜のドライブ向きだな」
と思ったことを覚えている。

そしてこのミュージックビデオ。
かなり過激なシーンがあるので見る際は注意。

退廃的で、暴力的で、カオス。美しいピアノのトラックとメロディの裏でこんなことが繰り広げられると、もう何が何だかって感じ。

でも同時に、こういった退廃的な空気が蔓延してるのもアメリカの一側面なのかな、と思ったりもする。車大国、ドラッグ大国、犯罪大国のアメリカ。もはや犯罪を取り締まるはずの警察組織すら信頼できるか怪しい社会で、若者が健全に育てるはずがないのでは?と感じてしまう部分は否めないし。

現時点でこのMVの再生回数は3800万回超。素晴らしい音楽、そしてその裏の禍々しいものにまで、何か惹きつけられる。
彼の今年出したアルバム『SMITHEREENS』もリリース以来かなりの頻度で聴いてます。

8. クロスワード/MIZ

私が今年聞いたアーティストランキング第5位のMIZ。そもそもMIZを聴き始めたきっかけはVo. 玉置周啓がやっているポッドキャスト、『奇奇怪怪明解事典』。そこからMONO NO AWAREを知り、MIZに至るという流れ。ちなみにこのポッドキャストは私の年間ランキング堂々の1位(7,224分聞いたとのこと)。

MIZが今年リリースした2ndアルバム『Sundance Ranch』はよく寝る時に聞いていた気がする。あと、旅行中の飛行機の中とか。

今作のレコーディングやMV撮影の様子を写したドキュメンタリー『Road to Sundance Ranch』の中で、今回取り上げる『クロスワード』は歌詞の産みの苦しみが現れた歌詞なんだな、と気づいた。

でも、それだけじゃないような気がしてならない。

あなたを救った言葉が
誰かを刺してしまう街で
わたしが放った言葉は
本音を言えば誰のため
埋まらないよ
思うようにワードなんか
浮かばないよ
MIZ『クロスワード』

今年も、どれだけの言葉に傷ついてきたのでしょうか。
見なければ良いのにTwitterを開き、自ら支離滅裂な差別や辟易とするような冷笑に苦しんできたはず。

そしてそれと同時に、私は上手に言葉を使えているだろうか、と思い続けていたことも事実。それは英語のボキャブラリーだけではなく、日本語でも。流暢に使えるはずの日本語が一番難しかったりする時もあったりで。

9. ドンセイグッバイ/七尾旅人, 大比良瑞希

9月にリリースされた七尾旅人のニューアルバム、『Long Voyage』からの一曲。このアルバム、個人的には2020年周辺から自分や社会に起きたことの一つの覚書と言うか、栞のようなものになりそうだと思ってます。

高校を卒業して、大学生になって、社会はめちゃくちゃで。その中で自分は割と健康に生きてきたつもりだけど、しっかりナイーヴになっていたな、傷ついたことも結構あったよな、みたいなことをふと、このアルバムが教えてくれるような気がして。

ただ同時に、これまでに傷ついたことが今の自分を作っているよな、とも思う。少なくとも残酷で冷笑的な人間にならずに済んでいるのは、確実に自分が経験してきた痛みを痛みとして受け止めているから。このアルバムの中に登場するたくさんの人に共感して、助けたいと思ったり、怒りや悲しみの感情が湧きたったりするのは、過去と現在の痛みのおかげなんだと。

10. New Morning/ROTH BART BARON

日本を離れる少し前、4月9日に東京国際フォーラム ホールCで行われたROTH BART BARON Tour 2021-2022 『無限のHAKU』~東京公演・ツアーファイナル~ に行ってきました。

最初にロットの存在を知ったのは、The Sign Magazineの2020年 年間ベスト・アルバムの21位に『極彩色の祝祭』がランクインしていたことがきっかけだったはず。当たり前の脆さとか、言葉の危うさとか、見えないものへの不信感が募りに募った2020年の年末に、私はこのアルバムに出会ったことを、朧げながら覚えてます。

もしかしたら君は、教室に反響していたクラスメイトの薄ら笑いがスマートフォンの画面まで拡張することに怯えて、灯りの消えた部屋の黒々しい暗闇を眺めているかもしれない。もしかしたら君は、君自身の場所が世界に用意されていない世のアンバランスに気づき、何の役にも立たない信頼や友情の着ぐるみを憎み、灰色の空に向けて呪詛の言葉を投げつけているかもしれない。もしかしたら君は、誰も責めることのできない行き止まりの日々のなかで、湧き上がる不甲斐なさと疲労を癒やす術も知らず、すべてを真っ白に消し去る力だけが自分に残っていることに勘づくかもしれない。そんな君の耳に、こんな声が聞こえている。「君の物語を絶やすな」。
(中略)
ほら、君の声が君を優しく挑発している。「僕らはまだ何も成し遂げてない、成し遂げてない/お前の物語を絶やすな、絶やすな」。
The Sign Magazine 2020年 年間ベスト・アルバム 21位 ROTH BART BARON /極彩色の祝祭
伏見瞬氏によるレビュー文より引用。

2020年、そしてその翌年も続いた自分の孤独ややるせなさが、ただの絶望で終わらなかったのは、ロットの音楽を聴き続けていたことが、かなり大きく関わっている。

あの日、最後に演奏された『New Morning』。この歌は在日クルド人を題材に扱った映画『マイスモールランド』のために書かれたものだけれど(公開が5月だったためまだ見られていない・・・)、そこで語られる孤独感であったり、疎外感に何か共振するものを感じ取ったのは、決して間違った感想ではないはず。

いつかここで生きることができたなら
その時僕らは何の歌を歌おうか
もしも明日太陽が来なくても
僕らは懲りずにまたここにいるのだろう

まだここにいるよ
まだここにいるよ
まだここにいるの?
まだここにいるよ
ROTH BART BARON『New Morning』より

11. Less Than Zero/The Weeknd

2022年、自分史上最大の音楽イベントは間違いなくThe Weekndのツアー、「AFTER HOURS TIL DAWN TOUR 2022」のNY公演に行けたこと。余裕を持って開演1時間前に会場入りしたら、前座が3時間あって結果的に4時間待たされて始まったライブ。海外アーティスト舐めてた・・・。

それでも、そこからのライブは楽しみ尽くしました。
メインステージは退廃した都市、そこから花道を通じてサブステージの上には月が浮かぶステージだった。多分これは、前者がAfter Hoursで後者がDawn FMの世界観なんだろうな。

たくさんのハイライトがあったけれど、最後から2曲目に歌われた『Less Than Zero』は特に印象的。『Save Your Tears』が終わり、The Weekndことエイベル・テスファイの恋人であるベラ・ハディドのボイスメールが流れ、『Less Than Zero』のイントロが始まり、会場が光りだす。このままもうDawn FM聴いて三途の川渡っちゃってもいいよってくらい幸せな空間でした。

『Less Than Zero』

そして最後、『Blinding Lights』を歌いながら彼は退廃する都市の方へと帰っていった。「ああ、死なないでよかった」なんて本気で思ったりもしてしまった。

Dawn FMも今年は本当にたくさん聴いたし、Coachellaも見たし、ライブも行ったりで、結局今年もThe Weekndの年でした。

12. About You/The 1975

The 1975は今年、一番聴いたアーティスト。
実に2506分。41時間は最低でも再生してるそうな。

と、言うのも、実は新作以上に過去作を今年はよく聴いた一年でした。特に、前作の『Note on a conditional form』そして前々作の『A brief inquiry into online relationships』はよく聴いた。

例えば、『People』。最初聴いた時はなんじゃこりゃって思った曲だけど、今は、なんと言うべきか、その歌詞世界が分かるような気がしている。

Wake up, wake up, wake up
It's Monday morning and we've only got a thousand of them left
Well, I know it feels pointless and you don't have any money
But we're all just gonna try our fucking best
The 1975 『People』 

「起きろ。あと1000回残ってる月曜の朝だ。無駄だと思うし、金もねえけど、俺らは俺たちのベストを尽くすしかないんだ。」
今年もひどいことがたくさん起きたけど、私たちがすることは"fucking best"を尽くすことでしかないんですよね。この歌詞は、なんというかアメリカ含めた地域の自分達の実感と重なる部分がかなりあります。

他にも、『Give Yourself A Try』。一時期狂ったように聴いていた。ちゃんと歌詞を読んでみて、やっぱりよく分からなかったり、ジェーンって本当にいたのかなとか思ったり、そして何よりも "Won't you give yourself a try?" って歌詞に励まされたり。

そして、今年リリースされた『Being funny in a foreign language』
『Looking for somebody (to love)』が銃乱射の歌だったり、色々と個人的に気になる曲はあるのだけれど、今回は『About You』に関して。

Do you think I have forgotten? 
Do you think I have forgotten?
Do you think I have forgotten about you?
The 1975『About You』

「君のことを忘れたとでも思った?」と繰り返す歌詞。

なんとなく、この歌詞は自分に重なりました。
便利な時代なもので、いつでもどこでも自分の友人が何をしているかくらいはインスタでチェックできはするけれど、それでも仲の良かった友人ともう半年以上会っていないことに気づきます。幸いホームシックにはなっていないけれど、今会いたい人がたくさんいることは事実。

少なくとも私は忘れてないです。外見も内面もちょっとずつ変わっているかもしれないけど、大事なところは忘れたりしてないはずです。
(こんなの誰が読むのか知ったこっちゃないけれど)
みなさん、元気でいてくださいね。結構遠くの方から願ってます。

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