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ぼったくり?ガールズバー無銭飲食事件無罪判決を公開します

2021年11月29日、服部が弁護した詐欺被告事件で、東京地裁の渡邉一昭裁判官は無罪を宣告しました。東京地検は控訴せず、判決が確定しました。
報道では、ガールズバーの客だった被告人が本当はぼったくり被害者だった可能性があると紹介されました。
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判決文の公開

報道案件であること、刑事事件の事実認定等において参考となることから、判決文を公表することにしました。
関係者は仮名、個人情報はマスキングしています。

裁判所は、弁護人の主張をかなり取り上げてくれた上で、従業員証言の信用性などの論点では、さらに緻密な検討をしました。
一部納得できない部分もあり、判決文すべてに同意はしません。
とはいえ「無罪の推定」「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に忠実な判決であり、基本的には評価できます。

なぜ検察は起訴したのか?

今回の無罪判決が報じられたあと、ニュースサイト等で「なんで検察は起訴したんだろう」というコメントを複数見かけました。
担当弁護士の見方は、少し違います。
判決文を見れば分かるとおり、本件では、被告人に会計を提示した従業員が、なかなか裁判期日に出頭しようとしなかったのです。裁判官が、当該従業員への不信感を募らせたことは、容易に推測できます。
捜査協力した従業員が法廷への出頭を拒むことは少ないので、「起訴した検事の判断が間違っていた」と簡単には言えないでしょう。
また、最終的には従業員が出頭して証言した以上、裁量の乏しい公判担当検事が「起訴を取り消すべきだった」とも言えません。

もちろん弁護人としては「起訴すべきでなかった」と思います。
被疑者段階から国選弁護人であった筆者は、本人を代理してガールズバーと示談していたからです(報道や判決に出ない事情)。
被告人には記憶がないので、詳細な反論は困難でした。
起訴を回避する取組をいろいろ試みました。
しかし、東京地検の検事は、起訴の判断をしたのでした。

無罪確定を受けての感想

警察も検察も人間の集まりですから、これらの組織や個人に「無謬性」を求めることは妥当ではないだろうと思います。
ガールズバーの処罰を求めたいのでもありません。
裁判官は「証言がおかしい」と少しでも思ったら、「疑わしきは被告人の利益に」の原則に基づいて判決を出す。
この「当たり前」を「当たり前に実践できるようになる」ことがこれからも大切なのだと思いました。

日本の刑事司法は、無罪や再審が少な過ぎる、身体拘束が長過ぎる、捜査機関に偏った報道が多過ぎるといった問題があります。
ガールズバー事件東京地裁判決は、無罪推定原則に忠実であった点において、多少なりとも希望を持たせるものでした。
今後も続く判決があらわれて、刑事司法が少しでも良くなることを願っています。

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