バトル・オブ・スノウフィールド
まず、リコがやられた。
ぼくの後ろをついてくるはずだったソウマも、敵の弾を頭にくらって倒れた。ぼくはなんとか障害物のかげに滑りこむ。木製のベンチだ。
「あそこに隠れたぞ!」
敵の姿は見えないが、甲高い声だけは聞こえる。ベンチに弾が命中しているのがわかるのは、それが砕けたあとのかけらが降ってくるからだ。
少し離れたところでリクトとアンナが砦に身をひそめている。砦といってもぼくたちが名付けているだけで、実際には雪の壁でしかない。
「おい! 作戦は続けろ!」
リクトが叫ぶ。
「わかってる!」
ぼくは叫び返す。白いはずの息は、銀世界にまぎれて見えない。
敵の前線の砦は全方位型だ。井戸のようにぐるりと周囲をかこっていて、そこに3人ひそんでいる。正面から挑んでは勝ち目がないから、ぼくたちは隠密作戦を立てた。ぼくとソウマがバレないように砦の足元に移動し、同時に立ち上がって敵にありったけの雪玉を叩きつける。そしてリクトたちが敵の本陣めがけて突進するのだ。
「だけどもうバレてる!」
ベンチに雪玉がどんどんぶつけられている。そのたびに粉になった氷が舞って、ぼくの上気したほほを冷やす。
「オレがおとりになる!」
リクトは上着の裾をまくって、固くにぎった弾をそこにつめこんだ。
「マジかよ」
「ビビってんじゃねぇ!」
ヤンキー映画みたいなことを言ってリクトは突進していった。大声で叫びながら。示現流みたいだ。
彼の気合につられたのか、敵の攻撃がそちらに集中する。チャンスだ。ぼくは身を屈めながら一気に走る。ヘッドスライディングみたいに砦の足元に張りついた。真上からの攻撃を覚悟したが、なにごとも起こらない。たぶんうまくいった。
リクトは胸と尻を撃たれて退場した。残っているのはアンナとぼくとだけだ。彼女のためにもぼくが頑張らないと。
そのとき丘のうえに現れた人影に、ぼくは目を奪われた。
雪玉を満載したソリにまたがる、あれは敵の大将、マサキだ。
つづく
電子書籍の表紙制作費などに充てさせていただきます(・∀・)