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救世主! 天神キューティ☆エアリーズ!

 あたしの指示で、刑事課と組織犯罪対策課が動き出したのは20分前。
 とはいえ、まだまだ人手が足りないから、警備課と地域課も回しちゃおうと計画中。
「署長! 大濠交番から応答がありません!」
 よし。おもいきって、生活安全課も投入しよう。


 あたしは、天神キューティ☆エアリーズというアイドルグループの西園寺ゆん。一応リーダーを務めてます。地元密着型として華々しくデビューしたあと、不本意ながらいったん地下に潜り、ようやく陽の当たる場所に出てきました。
 今日はたまたま、天神警察署の一日署長を拝命したところだったんです。

「全身をトイレットペーパーで覆った人物が街を徘徊している」

 それが第一報。午前8時35分。取材を終えた直後のこと。
 ただの変質者かと思ったら、その数はどんどん増えて、手に負えなくなってきたんです。どうやら噛みつかれると感染するみたい。それってゾンビの専売特許じゃないの? あんたらミイラだかマミーだかそっち系でしょ。
 通勤時間帯で被害はどんどん拡大。一日警察署長が形式だけなんて誰が決めたの? 管内で好き勝手させるほど寛容じゃないんですけど、こっちは。

「ダメです。拡大ペースが早すぎる」
「市民の安全を守るのが仕事!」
「もちろんですが、すでに刑事一課および二課は壊滅です」
「諦めるのは早すぎる」
「我々だけでは無理です。応援を!」

 言われなくてもわかってる。
 だからさっきからメンバーの伊集院あゆとLINEしてんだよ。

『機動捜査隊、第一および第二機動隊、それに北九州から暴力団対策部員を送ったにゃ』

 あゆが偶然にも一日県警本部長をしててよかった。ほんと頼りになる。

「署長! 敵が百道浜に集結しているそうです!」
「へぇ。それ好都合じゃ?」
「どこがですか! もし拠点を築かれたら」

 すかさず、あたしはもうひとりのメンバーに連絡を入れる。

『はいはーい。こちら海上自衛隊佐世保基地 第二護衛隊群、一日群司令の綾小路りなでっす!』


つづく

電子書籍の表紙制作費などに充てさせていただきます(・∀・)