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説明と描写

 説明と描写のちがいを解説している文章に出会うことがあるのですが、一度もしっくりきたことがないのです。

 書き手によって主張がばらばらなのは当然としても、例として出されている「これが説明なり」「これが描写なり」が、なんど読んでも腑に落ちなくて、こうなったらもう自分専用の考え方でいいじゃん、ということで書き記すことにしました。

 あくまで自分用のものなので、しっくりくるかどうかの責任は持ちません。

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描写バージョン

 彼は義兄に断りを入れると裏庭へ出た。煙を、柔らかい芝生のうえから見送ろうと思ったのだが、煙突の先にはなにも見えない。ひとしきり、街路樹の緑に目をなじませてからでも同じだった。ひだりの掌をひらくと、そこには指輪がある。薬指のものよりひとまわり小さいそれを、彼はなくさないようにポケットにしまった。

説明バージョン

 彼は最愛の妻を喪った。

 主人公にカメラが向いているとき、表現できる範囲のもので描くのが描写だと定義しました。文字通り「描く」「写す」ですね。映像表現としても成立するのではないかな、と思います。観客は何も知らされていませんが「ああ、妻を喪ったんだな」ということを察するのではないでしょうか。

 説明は地の文であり、こちらも文字通り「説く」「明かす」です。こちらは文章に特有のものなので、もし映像表現として成立させるならばナレーションやテロップが必要になるでしょう。あとはさりげなくセリフに混ぜるとか。個人的に乾いた説明的文章というのが好きなのですが、それは想像力が働くからかもしれません。

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優劣はない

 説明と描写のあいだに優劣などない、というのがわたしの信じるところです。明らかに区別して使うことはあまりなく、常にマーブル状に混在しているものだと思います。その黄金比も流動的で、場面ごとに異なるはずです。

 描写のほうが説明より上位であるという考え方にはちょっと賛同できなくて、別にサイヤ人とスーパーサイヤ人みたいな区分じゃないと思うんですよね。どちらかというとフュージョンしているゴテンクスみたいな感じなのかな。

 あくまで、これは自分用のやつですから。

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