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法廷遊戯 | 五十嵐 律人

 第62回メフィスト賞を受賞した著者のデビュー作。このミスなどのトップテンにも名を連ねる、2020年の話題作だ。

 東北大学法学部卒業で司法試験合格の作者が書く作品というだけあって、随所に法律知識を生かした仕掛けが散りばめられている。専門的な法律用語を混じえつつ、本格的なトリックを幾層にも重ねたギミックは、理論で謎を解いていくタイプのミステリを好む向きにはもってこいのストーリーだろう。

 物語の導入から提示される「無辜ゲーム」のスリリングな展開で、がっちりと掴まれてしまうのだが、ややもすると荒唐無稽な「無辜ゲーム」がストーリーのクライマックスにどうつながっていくかを含めて、伏線の回収と盛り上げ方が上手い。

 法廷モノのお堅いイメージ、難しい感じを、言ってみれば特殊設定ミステリに近い「無辜ゲーム」を使って説明しつつ読者に提示してくれるので、その点で読みやすかった。法律を根拠としたやり取りを主軸にしたミステリは数多くあれど、こういう噛み砕き方もあるのだなと感心させられる。

 メフィスト賞と聞くと(もちろんミステリもあるが)、幅広いエンタテインメントを想像して、もっと外連味のある話かと勝手に先入観を持ってしまっていたが、そんなことはなく読みすすめることができるのが好印象だ。この作者が、今後の作品でどのような方向性を見せてくれるのかが楽しみである。


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