書評と感想
noteに本の感想を投稿する際、いつもタグの付け方で迷う。「書評」がいいのか、「感想」がいいのか。
書評という言い方はどうにも偉そうだ。辞書によれば「新刊の書物の内容を紹介・批評した文章」が書評だそうだ。本を読んだだけの素人が、文章のプロである作家の作品を批評しようとは、だいぶおこがましいんじゃないか。
石田衣良が、彼自身が講演した小説スクールで、「(小説家になるなら)ひとつのジャンルについて1000冊ぐらい読みたい」と言っていた。それぐらい読んで、初めてそのジャンルの小説が理解できるということである。やはり、作品を評価・批評するからには、少なくともその小説のジャンルを俯瞰して理解できるぐらいの知識を持っていなければ、実のある批評にはならないのかもしれない。正直、自分でそれだけの知識があるとは思えない。1000冊という数字には明確な根拠はないだろうけど、それ抜きにしても、好きな本の傾向は偏っているし、どう考えても年間200冊ぐらいが今の自分の精一杯の読書量だ。うーん、全然足りてない。
かつて、自宅に2000枚以上CDを持っていたことがある。転勤族で度重なる引っ越しに耐えられなくなり、泣く泣く手放してしまった。しかし、そのとき聞いていた2000枚のおかげで、聞いていた音楽ジャンルについては、おおよそ体系的に、その曲の音楽性が理解できるようになった。あるバンドの曲を聞けば、ああ、これはルーツにあのバンドがあるのだな。とか、ギタリストのプレイを聞けば、ああ、この音の根底には、あのギタリストがいるのだな。とか、それこそ手に取るように、その音楽のことが見えてくる。ああ、確かに1000冊説はひとつの真理なのかもしれない。
自分でそういう経験をしているだけに、こと読書となると、ちょっと「書評」は偉そうなんじゃないの? と、思ってしまうのである。人の作品を批評するのが同業者とは限らないし、ほとんどの作品は、むしろ素人が買って、そして評価するのだから、「書評」でもいいじゃないかという考え方もあるだろう。どちらも自分の中で筋が通った意見である。
しかし、そんなことを踏まえながらも、感想を書くときはあくまで謙虚でいたいと思っている。素晴らしい作品に触れられる機会に感謝しながら、これからも読書感想文を書いてみよう。
と言いつつ、実はこっそり「書評」タグをつけてしまっているのであった。すまない。
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