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作家の値うち 令和の超ブックガイド / 小川榮太郎 (著)

 久々によい書評を読んだ。書評と言うよりは、作家も含めての文学論ですらあった。

 今から20年以上前に同タイトルで福田和也が書いた書評があったが、同じタイトルを持ってくるからには、それを踏襲した書評である。現在アクティブに活躍している作家をエンターテインメントと純文学に分けて、その作家評と代表作に点数をつけた書評が掲載されている。

 特に作家評は痛烈な、しかし真摯な言葉でその作品観が語られていて、本当に本物の評論とはこういうものだと思わせる。おそらく、歯に衣着せぬ物言いに、いい思いをしない作家もいるだろう。

 しかし、それを敢えて書くことで、現代の作家の傾向を分析し、ひいては文学全体の傾向さえも読み取っている1冊で、そこが実に見事である。

 ブックガイドと称してはいるが、読んでいてどうしても今の文学が失ったもの、その原因や傾向を憂いている部分が浮き彫りになってくるのがわかる。

 万人がこれを見て読書ガイドとすることはできないかもしれないが、個人的には非常に優れた本物の書評と出会えた気持ちである。あの人やあの人をバッサバッサと切って払う文章はある意味痛快。


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