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元彼の遺言状 (『このミス』大賞シリーズ) | 新川 帆立

 このミス大賞受賞作ということで読んでみた。タイトルの感じから窺えるが、どこかユーモラスな法律ミステリだ。

 個人的には、この手のちょっとおちゃらけた感じの雰囲気のミステリはちょっと苦手と思ったのだが、本作はテーマが軽いのか重いのかよくわからない部分が多かったのかもしれない。作品の醸し出す雰囲気が読了まで定まらず、ちょっと戸惑いながら読みすすめることになった。

 主人公は、お金にこだわり、自分の仕事をいかにお金に替えていくかにこだわる敏腕女性弁護士なのだが、彼女の魅力をどこに見出すべきか難しい話でもあった。感情移入すべき人間らしさは希薄で、物語の中で共感できる悩みや挫折もなく、それでいて弁護士としての手腕を発揮する胸のすくギミックも少なめの印象。

 その一方で、主人公はじめ各登場人物のキャラクターは立っているようだ。その勢いで最初から最後まで一気に読める。そういう意味では上質のエンターテインメントであった。どちらかと言えば、映像化に向いた作品とも言えるのだろう。

 元弁護士の作者はこれが最初の作品ということで、今後も法律を生かしたミステリを書いてほしいところだ。


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