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WASTELAND / RIVERSIDE

 RIVERSIDEは、2001年のデビューから活動を続けるポーランドのプログレバンドである。本作は、そのRIVERSIDEが2018年に発表した、7枚目のスタジオ・アルバム。

 アルバムを支配する雰囲気は、ジャケットのアートワークとも共通するような、ダークで哀愁あふれる耽美な空気である。アコースティックギターを大胆に配し、ときには深い響きを持つシンセサウンドを取り入れながらも、決してディストーションの激しい響きを忘れ去ることのないダイナミックな音作りは、メタルファンにも大いにアピールするところがあるサウンドだ。

 デビュー当時から4人のメンバーで活動を続けていたRIVERSIDEだが、このアルバムが制作される直前の2016年にギタリストのPiotr Grudzińskiが休止してしまう。メンバーを失った悲しみがこのアルバムの作風に反映されたかのように感じてしまうのは、決してうがった見方ではないだろう。3人のメンバーで完成されたアルバムは静かに、しかし一分の隙もない構築美に満ちていて、楽曲の完成度と演奏力の高さの両方から聞くものを魅了する。

 アルバムのイントロ的な#1 ”The Day After"に続くヘヴィな#2 ”Acid Rain”は、一連の楽曲群の幕開けに相応しいダークな息吹に満ちていて、クライマックスの悲哀に満ちたメロディまで一気に聞かせてくれる。#3 ”Vale of Tears"は、ディストーションギターによって刻まれる特徴的なリフと、Mariusz Dudaによる流麗なヴォーカルが交互に現れる複雑なコントラストが楽しめる。アコースティックギターとヘヴィサウンドの共演の#5 ”Lament"は、ミニマルなつくりの楽曲が幻影のような効果を生み出す。#6 "The Struggle for Survival"はトリッキーなリフから徐々にベース、ギターのメロディを伴い、キング・クリムゾンもかくやと言わんばかりの前衛的な展開を見せるインスト曲。アルバムタイトル曲である#8 "Wasteland"は、その名の通り荒涼としたメンバーの心象を映し出したかのような難解な歌詞と、しかしながらアグレッシブに展開する曲展開もいとわないプログレらしい佳曲。そしてアルバムは#9 "The Night Before"のピアノと流麗なコーラスで静かに幕を閉じていく。

 日本ではあまり取り沙汰されないバンドかもしれないRIVERSIDEであるが、長い活動期間で培われた音楽的世界観と、手練れのサウンドメイキングで、唯一無二のアルバムを作り続けていて、その作品の完成度は極めて高い。できれば実際にパフォーマンスを見てみたいバンドのひとつでもある。

 なお、今年になりバンドは新ギタリストのMaciej Mellerを迎え、再び4人メンバーでの活動を開始しているらしい。今後の展開も楽しみなバンドだ。

 

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