見出し画像

PORTALS / TESSERACT

 TESSERACTは英国ミルトンキーンズ出身のプログレメタルバンド。ギタリストのアクル・カーニーを中心に2003年から活動を続けているバンドだ。

 今作は3年ぶり5枚目のスタジオアルバムとなる。1曲めから15分を超える大作で、一見さんを寄せ付けない本物のプログレっぷりが頼もしい。

 ダニエル・トンプキンスの浮遊感たっぷりのヴォーカルで幕を開け、幻想的かつ神秘的なヴォーカルメロディとアンビエントなサウンドは聞く者に何か幽玄な情景を思い起こさせる。

 そこに切り込んでくるアグレッシブなギターは、いかにもdjent的な音作りで、複雑で叩きつけるようなリフをこれでもかと繰り出してくる。この辺り、経験を重ねてきたバンドの、実験的なアプローチがビシビシと伝わってきておもしろい。

 ときにブラストボイスを駆使して攻撃的なサウンドの片鱗を見せながらも決してそれだけに頼らず、むしろディレイを多用してクリーンボイスを重ねた深みのあるヴォーカルを軸に、入り組んだ迷宮の如きリズムパターンでバッキングを乗せてくるスタイルでメタルバンドらしさを醸し出すのが彼らの真骨頂だ。

 『2001年宇宙の旅』を思わせる謎に満ちたアポカリプティックなアートワークも相まって、バンドの指向する宇宙的な高みが感じられるようである。

  10分を超える大曲を4作も擁しながら、変幻自在に展開する前衛的な楽曲は決して飽きずにそのアーティスティックな世界観を存分に味あわせてくれる。全曲通して100分を超えるアルバムは、決して初心者に優しいタイプの作品ではないのかもしれないが、ここは単純にメロディの美しさ、テクニカルな演奏の妙を楽しみたい。

 マニアックな視点だけでなく、純粋に音楽を楽しむ姿勢で相対したいアルバムである。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?