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【映画】【テクノロジー】【メディア】トークと映画上映:トロント大学のメディア教育~マクルーハンのいたセントマイケルズ・カレッジの現場から~(+映画『マクルーハンズ・ウェイク』)

所用で青山学院大学に行きましたら、興味深いパネルが行われていたので参加してきました。
マクルーハンの話が今出てくるとは、と思ったのです。

メディア論の大家マーシャル・マクルーハンといえば、私が中学から大学時代を過ごした1980年代においては超重要人物であり、特に高校時代サイバーパンクに熱中していた私としては、関連する評論を読んでいると、何かと名前が出てくる学者の一人でした。
ちなみにサイバーパンク関連でよく名前をみた学者といえば、マクルーハンのほかに、ノーバート・ウィーナー、ティモシー・リアリー、アルビン・トフラー……といった感じでしたね。

なので大学に入るときは、関連するメディア論で有名な武邑光裕先生の授業をとろう! って思ってたんですが、制作の方に注力してしまい、評論系の武邑先生の授業をとらないまま卒業してしまったのでした。
まあ武邑先生は文芸学科、私は放送学科でしたからね……他学科の授業も受けられたのですが時間割がイマイチ合わなかったりしてたと思います。
でも、放送学科の授業にも当然マクルーハンの名前は出ますからね、『グーテンベルクの銀河系』読まなくちゃ、って思ってましたよ。
思ってるだけで読むこともなく卒業してしまったんですが……

それはともかく、今回のスピーカーであるパオロ・グラナータ先生はイタリア出身ということで、訛りはあるがゆっくりした丁寧な英語(通訳は入ります)、かつ極めて陽気なトーンで話をしてくれて楽しくもエキサイティングな内容でした。
表示するスライドもものすごくカッコ良くて驚きましたね。
学生と一緒に作ったボードゲームとか、マクルーハンの思想を元素みたいに周期律表にまとめたりとか、どれもデザインセンスが突出していたのが凄かったです。

教育現場でいかにテクノロジーを活かすか、というテーマをマクルーハンの思想に触れながら紹介するとの内容で、AIがある環境も新たな環境であるからこれを活かしていこうというポジティブな内容です。
しかしその一方で、電子デバイスが多すぎるからあえてボードゲームを作った、とか、そのあたりのバランス感覚には驚かされました。

そのあとは、映画の上映、というわけで、マクルーハンの述べたメディアの4法則と彼の伝記を絡めた作品で、基本的な知識を得ることもできました。
タイトルの『マクルーハンズ・ウェイク』は、もちろん、ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』からとっていますが、そこからしてカッコいい。
ローリー・アンダーソンがナレーションを務めているというのが、またなんともそれっぽいです。
まあ、そこからもなんとなく察せされるとは思いますが、淡々とした映画なので、眠くはなりましたけど……
その作品を観てもわかりますが、やはりかなりブームになったあと、忘れられた存在みたいになってその中で亡くなっていったようでした。

80年代の私は、メディアに囲まれた現代人の生活を肯定し加速するようなイメージを持っていたのですが、マクルーハンはそれに対して警鐘を鳴らしていたことがよくわかりました。
ポオの『メエルシュトレエムに呑まれて』を引用して、情報の大渦巻からどう生き延びるかを訴えていたのだとわかりました。
情報の大渦巻が日々実感できる現代においてこそ活かされる、きわめて重要な洞察が当時('60〜'70年代)からあったのですね。

こういう催しがあるとは今日まで全く知りませんでしたが、ちょうど先日、ふっと思ったんですよね、『グーテンベルクの銀河系』買うぐらいはしておこうかなと……
そんな矢先に、彼の議論を再評価しようという話を聞くことができて、非常に有意義かつ刺激的な経験ができたのでした。

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