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河川マイスターについて その1 概要

ドイツのマイスター制度は日本でも比較的よく知られていますが、ドイツ・バイエルン州のみに存在する河川マイスター制度に関する日本語の資料は多くありません。

ここでは、日本ではあまり知られていない河川マイスター(Flussmeister)について紹介し、現地の優れた川づくりを支える技術について考えてみたいと思います。

ドイツの河川マイスターを学ぶことで、日本での川づくりの技術のあり方、技術者育成を再考するきっかけになればと思います。

以下の文章は一部、河川マイスターについて説明するサイトをgoogle翻訳などを活用しながら適宜意訳して作成しています。訳語などおかしなところ誤解のあるところもあるかもしれませんが、ご容赦ください。また、ドイツ語や河川マイスターに詳しい方は、ぜひご指導・ご指摘をお願いします。

〇歴史


・ 河川マイスターのルーツは古く、この伝統的な職業は、別の名前でしたが 17 世紀にまで遡ることができます。1906 年に河川監視団体が合併して「バイエルン王立河川マイスター協会」を設立しました。当時、河川マイスターはまだ制服を着なければなりませんでした。


〇役割


・ バイエルン州にのみ存在する河川マイスター制度は何十年にもわたって水管理行政においてその実力を証明してきました。河川および湖の水管理局(Wasserwirtschatf)(※日本でいう河川事務所に近い)の責任者として、彼らは第 1 級(Gewässer erster Ordnung)および第 2 級水域(Gewässer zweiter Ordnung)、渓流(Wildbäche)、州の貯水池および遊水地、および雪崩の管理の開発と維持に責任を負っています。※第1級が一級河川、第2級が2級河川とざっくり理解してもおよそ大丈夫です。


〇職員数などの規模


・ バイエルン州には河川マイスターの団体である河川マイスター協会(Bund der Flussmeister Bayerns)があり、河川マイスター協会には現在約 270 名の会員がいます。現役の河川マイスターの約 96% がこの協会の会員となっています。
https://www.flussmeister.de/

・河川マイスター協会は定期的に雑誌「河川マイスター」も発行しています。※下記のサイトからPDFを読むことができます。

・ 現在、バイエルン州の予算では河川マイスターのポストが 208 あります。これはバイエルン州の水管理当局の公務員職全体の約25%に相当します(※日本で言えば、河川事務所の事務職を合わせた全職員の4分の1が河川マイスターということかと思います)。かつて男性の領域だったこの職域には、現在では女性の河川マイスター(ドイツ語ではマイステルンですが)もいます。
https://www.flussmeister.de/historie.php

・ 1996 年以来、35 人の河川マイスターが地方行政当局の職員(※日本でいう自治体職員にあたると思う)(Kreisverwaltungsbehörden (Fachkundige Stelle für Wasserwirtschaft))として雇用されています。河川マイスターは、水管理問題に関する市民の窓口となります。技術的な河川・湖沼の監督では、彼らは監督する地区をリードします。彼らが監視するエリアとしては、水域および氾濫原、自治体および企業の下水処理場、ダム、養魚場、砂利採掘場、ゴミ捨て場、工場および商業地、つまり、地下水、河川、湖に対するリスクが考えられるすべての場所が含まれます。水質事故も監視の対象です。
※日本と異なりひとりのマイスターがひとつの川を長く見続けているところに特徴があります。職人的に経験的にその川のことをよく理解しています(たとえば参考文献参照)。
https://www.flussmeister.de/aufgaben.php

※水管理局(河川事務所)の208人と地方行政当局(自治体・郡役所)の35人を合わせてバイエルン州には243人程度の河川マイスターがいるということが推察されます。

〇河川マイスターになるための条件


・2年間のエンジニアとしての教育を専門学校等で受け、州認定の環境保護技術者等の国家資格の試験に合格したあと、水管理局における15か月の研修期間があります。この間、局の先輩マイスターから実務をみっちり仕込まれるようです。この15か月の研修の間も月給1309.93ユーロ(20.7万円)の給与が支給されます。この研修期間の最後に試験があり、これに合格してやっと河川マイスターになることができます。

・河川マイスターとして採用されると少なくとも2710.60ユーロ(42.8万円)に加えて諸手当が支給されます。

・資料によると河川マイスターにも段階があり、(通常の)河川マイスター(A8:給与レベル)から上級河川マイスターOberflussmeisterin (A9レベル)、Hauptflussmeister最上級河川マイスターA10まであります(※日本で言う号俸のようなものかと)。※これが日本で言い昇任制度に近いものなのか、実力主義なのかは不明です。

上記の給与などの条件は下記の資料に掲載されています。河川マイスターの募集要項かと思います。マイスターの川づくりについてはまた時間があるときに解説したいと思います。

https://www.regierung.oberbayern.bayern.de/mam/dokumente/z/z2-1/ausbildungsinformationen/techn_dienst/2qe/2021-03-17_ausbildung_flussmeister_2qe.pdf

参考文献


令和元年 欧州近自然川づくり調査報告