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『ニュースが伝えない政治と官僚』政治は私たちの生活を作る~読書感想文#35

今回ご紹介するのは、政治オンチの私が、政治に詳しいムール・ガイさんから勧められた初心者向けの1冊です。

日本もアメリカのように首相を全国民が選べばいいのに、なんて考えていましたが、そのことも書いてありました!
ムール・ガイさんは読書チャンネルも作っていて、そこでも紹介されています。

それでは、私が印象に残ったところ、私が感じたこと、考えたことを紹介したいと思います。



権力は腐敗する

法律案は、与党が提出したもの(=官僚が作ったもの)が通り、野党が提出したものはなかなか審議もされない。

P.50

以前、現職の大臣が「野党の話を政府は聞かない」という発言をしたことがありましたが、こういうことなのかなぁと妙に納得してしまいました。
そうだとすると、やはり、政権交代が適宜起こることが大切になってきますね。

127ページでは、英国の歴史学者の格言「権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対的に腐敗する」を引用したうえで下記のように書いています。

我が国では自民党中心の与党が長く政権の座にあったことで、さまざまなところで腐敗も進んでいた、と考えたほうがいい。

情報公開

事務経費をはじめとして、領収書もすべて天下に情報公開して、しっかり仕事をしている、というところを見せて欲しいものだ。

p。82

これは、文書通信交通滞在費として支払われる1200万円など、議員に支払われる金額に対するものです。やはり、多少なりとも税金を納めている国民の立場なら誰もそう思いますよね。
昔、誰だったか「じゃぁ、ボールペン一本買っても領収書をもらうのか!」と怒っている政治家がいましたが、会社員なら誰でもやっていることです。また、菅義偉前首相はパンケーキだけで4020万円使ったとも聞きます。これだけ一般国民との常識や感覚のずれがある人たちが国を支配していると思うと一抹の不安があります。

貴族政治

「地盤(地縁・組織)」「看板(知名度)」「カバン(政治資金)」がすべてそろっているような、親と同一の選挙区からの「世襲候補」はやはり、あまりにも貴族政治的でよくないのではないか、ということだ。

p.121

以前、日本の政治について貴族政治であるべきだとおっしゃっていた人がいて、そのときは何を言っているんだろうと思っていましたが、ここを読んでようやくその人の言わんとすることが分かりました。著者の三宅氏は「よくないのではないか」というスタンスですが、当然のことながら「そのほうがよい」という考えを持つ人もいるわけです。いやぁ、本当に自分が無知すぎて恥ずかしい限りです。
ちなみに2009年の総選挙の際に自民党が、下記の公約をしたそうですが、これはもう実施されているんでしょうかね。

「次の次の総選挙」から同様のルールとすることを公約した。

p.122
同様のルールとは「三親等以内の親族が同一選挙区から連続して立候補することを禁止する」こと

いい政治家はいい国民を生む

三宅氏は、いい政治家についても述べています。

日本国は将来こうあるべきで、そのためには外交、防衛、税制、教育はこうあるべきだ、というビジョンが欲しい。

p.129

そのビジョンの背景や理由。根拠、具体的な政策や財源、実現の行程と見通しなどを、わかりやすく説明できなければ、国民にとってどんな理念も「ブラックボックス」のような存在となる。

p.130

別のページでも以下のように書かれています。

きちんと国民に対して説明をして、ああ、この人がここまで熱心にいうのであれば必要な政策なのだな、とみんなを納得させられるような政治家を選ばなければならない。

p.179

この「みんな」をどれだけ広げていけるかというところが大事だと思うのです。どうせ自分に票を投じない国民などは、この「みんな」の中に含んで考えないような、そんな政治家はそもそも困ります。野党や新聞記者の質問に対し、答えたようで何も答えないスキルばかりを磨くような政治家が増えてきたように感じます。そのような訓練を受けているとしか思えない印象すらあります。よしんば自分なりの高邁なビジョンがあったとしても困ります。シンパには「きっとやってくれる」と過大な幻想を与え、そのシンパの期待を理由にして疑問や不安、小さな声を無視して押し通していくのは実行力ではなく独裁です。権力を「国を自分の好きにする力」と考えるような人が支配した国がどうなっていったか……。そういう国は今もあります。
政治は生活にも影響します。隣人同士でも、異なる意見を理解し友和しようとする態度を失い、対立し互いを責め合って分断すれば、互いに「俺が正しい」と言い合う声の大きさを競うフェーズが、やがては互いの目を恐れて言いたいことを言えない社会に変わっていくでしょう。すでに、良心や良識とは別のところで「これは言わないほうがいいかも……」と言葉選びをはじめてはいませんか?

「サルは木から落ちてもサルだが、代議士が落ちればただの人」

敗れた相手にしてみれば、本当に僅かな差だと悔しいなんてものではない。その百数十票、数百票さえ取っていれば、国会議員として国政に携わっていたものを、落選した身では、歳費がもらえないのはもちろんのこと、周囲は哀れみの目で見るし、誇りも傷つけられる。そして次回の選挙で必勝を誓うのだ。

p.167

ずっと以前から統一協会は政治への影響力強化を狙っていましたが、民主党に敗れた議員たちが、選挙に勝つためならと良心をかなぐり捨ててしまったのが2009年なのでしょうか。そして、それに慣れ切って当然になってしまったのが去年までなのでしょうか。(いや、果たしてこれは過去形になったのかな?)

税金の無駄遣い

天下りの「あっせん」。それを「渡り」歩いて報償や退職金を何億ともらう。これが自分の税金だと思うと、せめてそのお金で老人ホームでも作ってほしい、エッセンシャルワーカーの給与の底上げに使ってほしいと思いますが、この無駄遣いにもいろいろあるそうです。

「持参金型=国の事業の発注や補助金で有利になる」
「人質型=財務省官僚などを受け入れて、予算配分で有利になる」
「創業型=官僚OBが会社を作り、そこに事業を発注する」

p.180

自分もやがては同じ汁を吸いたいから、今は先輩に甘い汁を吸ってもらうという算段ですよね。残念ながらそれはただの甘い汁ではなく、私たちの血税なんですけど、そんな感覚は中にいると麻痺してしまうのでしょうね。

受け入れ側の企業は企業で、

「優秀な人材を受け入れるのは当然」というのは建て前で、「事業発注や予算、補助金メリットがついてくる」から天下りを受け入れている

p.181

わけです。政治家には、このような官僚を相手に渡り合える度量も必要ということです。
泥の中で清浄な花を咲かせる蓮のような政治家かぁ。難しいですね。

ベトナム戦争当時、沖縄は攻撃対象になっていた

この本でも、憲法改正について触れています。

もし、「集団的自衛権」を認めれば、今後、アメリカ軍が世界のどこかで戦争をはじめたら、そこに参戦しなければならなくなる。

p.187

これを、対等な関係なんだから当然だ!自国を守ろうともしない独立国などあるものか。早くそうするべきだ!と考える人と、アメリカの鉄砲玉になるなんて冗談じゃない!平和憲法を守れ!と考える人がいるでしょう。
ただ、以下のことは知っておくべきだと思ったので転載します。もっとも、知らなかったのは私ぐらいなものでしょうか。

ベトナム戦争では、アメリカから返還された沖縄の基地は北ベトナムを空爆する「北爆」の拠点となったわけで、もし、北ベトナム軍が当時、反撃する能力をもっていれば、沖縄は攻撃対象となっていたはずだ。
 つまり、ベトナム戦争当時、すでに「集団的自衛権」に基づいて、戦争への協力が行われていたわけだ。

2009年に書かれた本ですが、私には大変勉強になりました。
ムール・ガイさん、良い本を教えていただき、ありがとうございました。

読後感のイメージ(笑)

それではまた。




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