企業が間違っていると決めるのは誰か(後半)
コールセンターができること
まず、コールセンターがやるべきことは、企業の経営方針を決めることでもなく、各部署に改善指示を出すことでもありません。
次に、企業は利益追求団体であり、お客さまがいなければ成立しません。(生協は「消費者一人ひとりがお金(出資金)を出し合い組合員となり、協同で運営・利用する組織」ですから、お客さまとは少し違うかもしれません)またお客さまとは、基本的にお客さまになり得る人すべてを指しますから、未だその企業を利用したことがない人も、その企業を知らない人も含まれます。
したがって、お客さまのご意見や感想は貴重な情報としての価値を持ちます。
しかし、どの意見を取り入れ、どの感想を参考にするかを決めるのは企業です。コールセンターにできることは、せっかく頂戴したお声をきちんと数値化し、また文章化し、社内に届けることです。決定するのはコールセンターではありません。
このことについては、以前の記事でも触れていますので、よろしければご参照ください。
企業が間違っていると決めるのは誰か
これは、企業であり、お客さまです。
ただし、企業がどうあるべきかを決めるのは企業自身です。
これが国家運営であれば、国民主権ですから民意が反映されなければなりません。そこには、少数派の意見も反映されなければなりません。
一方で、企業の責任者は社長であり、各部署の責任者であれば部長です。どのような顧客層をターゲットにし、どのような商品やサービスを取り扱い、人件費や原価をどのくらいの割合にして利益はどのくらいを狙うのか。それは企業が自由に考えればよいことであり、法に触れない限り問題はありません。想定通りにいかない場合、どこに問題があるかを検討するのも企業側です。自社の改善を考え、その参考情報の一つとして、お客さまの声がとても大切になりますが、どの声が大切かを選ぶのも企業です。大きな声を選ぶとも多くの声を選ぶとも限りません。
ですから、コールセンターに届いた声は、小さな声も大きな声も、丁寧に社内に届け続けます。
では、お客さまには何の権利があるかといえば、好きな企業を選ぶ権利があるのです。(好きな企業がなければ、自分で起業する権利だってあります)
逆の言い方をすれば、お客さまには選択の自由があるからこそ、企業側は全ての客層をターゲットにせず、絞るという経営方針が採れるのです。
コールセンターがすべきこと
繰り返しになりますが、コールセンターがすべきことは、お客さまのお声を聞くこと。そして会社の在り方を伝えること。
それがお客さまの期待と違っても、本当のことを伝える。もちろん、できる限り、相手が受け入れやすくなるように言葉遣いに配慮して。
それは(違法でない限り)誰も間違っていないし、誰も悪くないという考え方です。お客さまが企業のあり方を「間違い」と断ずるのは決して悪いことではありません。それも貴重なお声です。
コールセンターの仕事は、ただ現実を受け入れ弱みを受け入れ、そして相手もそれができると信頼する。できるならお互いに笑顔になれるところを目指し、それが難しい場合でも入電時よりはほんの少しだけ互いに気持ちよい状態になって終話できるよう模索する。そんな仕事です。
それでは、また。
世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。