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会社の対応に傷つく人~Aさん

前回は、電話対応で傷つく2つのパターンについてお伝えしました。

https://note.com/keigo_kyousitsu/n/nebc8da2697b5

今回は傷つく必要など全くない仕事は楽しいということをお伝えしたいと思います。
ですが、書き始めたら思ったより長くなってしまったので、今回は前回ご紹介したAさんについて説明します。

Aさん

やさしいAさんはどんなお客さまにも一生懸命対応します。
微妙な感情にも敏感に反応してお客さまの気持ちに寄り添うので、Aさんに対応してもらった人はみんな明るくなって電話を切ります。

でも、そんなAさんは、だんだん仕事がつらくなってきました。
それは、自分がお客さまからお預かりした貴重なご意見を、丁寧に会社に報告しているのに、一向にそれらが取り入れられ、改善される様子がないからです。

自分はご意見を下さったお客さまにお礼を伝え、ありがたいご意見だと思って承ったのに、そしてそれは会社から推奨されている姿勢であるはずなのに、一体どういうことなんだろうと考えると、モヤモヤは広がり、自分でも抑えられなくなってきました。

全能感が傷つく

Aさんは良いことをしています。
コールセンターのみならず、サービス業であれば、良い人が入ってくれたと会社から感謝されるタイプです。

それが、会社から過剰な叱責を受けたわけでもいじめられたわけでもないのに、仕事に傷つくのはなぜなのか。

それは、全能感が傷ついているのです。

会社は正しくなければならない(会社と一致したい)

「お客さまのためなのに会社は何もしない」と傷つくということは、
「(会社なら)出来る」と考えていることになります。

Aさんのようなタイプは、傍目には謙虚に見えます。
自分でも、謙虚だと思っています。そして謙虚とは、この場合「無力な自分がお客さまのため、会社から言われたとおりに一生懸命働くこと」です。

「自分は無力だ」の裏返しとして、「会社は何でもできる」と無意識に考えています。無力な自分であっても、何でもできる会社と一体になることで、全能感が持てます。「会社は正しい」「正しい会社のために一生懸命働いている」ことが安心につながっているAさんにとっては、お客さまに謝るのも、上司に謝るのも苦痛ではありません。
周囲から見ても、素直な良い人です。

誰もAさんを傷つけていないのにそのAさんが傷ついているのは、Aさんが怒っているからです。「正しい」ことがAさんのよりどころであるにもかかわらず、その会社が「正しい」ことをしないなら、Aさんのよりどころは偽物だったことになってしまいます。

この場合でいえば、自分が意見を上げたその一人を会社が大切にしないなら、会社と一体だと信じている自分がその一人を大切にする意味がなんのかをも見失ってしまいます。

それでも、謙虚なければならないと考えているAさんには、その怒りの矛先を会社へ向けることができません。行き場を失った怒りは自分へ向かうので傷つくのです。

では、Aさんはどう考えればよいのでしょう。

人間は誰でも平等

まずAさんは、「自分は無力だ」ではなく、「人間は誰でも平等だ」と考えられるようになるとよいでしょう。

1000kgの物を運ぶ仕事があったとき、一度に1㎏しか持てない人と、10㎏持てる人がいたら、給料には差が出るかもしれません。
しかし、人間としての尊厳に差はありません。どちらも一生懸命働いていさえすれば、同じ責任をもって仕事をしているのです。

会社の言われたとおりに働いているなら全て会社の責任であり、自分が責められることはないと思っていたAさんには少し怖いことかもしれません。
けれど、AさんにはAさんの責任が、BさんにはBさんの責任があります。それぞれがそれぞれの責任を果たすことで会社は回っていきます。それは同時に、他の責任には求められない限り関与しないということです。

すると、「自分が無力であると考えること」は謙虚とは関係ない考え方であるということになります。併せて謙虚についての認識も改めてもらいましょう。

謙虚とは何か、「事実を受け入れること」と考えればこのストレスはすっかり解消します。

法人はただの人の集合体

会社はどんなふうにご意見を取り入れ、反映させていくでしょうか。

会社には、コアターゲットがいます。その会社がターゲットとしているのが、学生だったり、子どもを持つミドルエイジの女性だったり、起業を考えるシニア層だったり……様々です。

また、お客さまと一括りにいう中にも、お得意様がいて、一回だけ利用してくれた人もいて、これから利用してくれるかもしれない沢山の人がいます。

そのうちの1人のニーズに応えるために、コアターゲットに向けた戦略を変えるわけにはいかないかもしれません。

いや、このご意見は色んな人からたくさん寄せられるんだというものもあるかもしれません。

そういった多くのご意見を、自社の方向性、戦略、人材、財源、スキルなどいくつもの要素から、どの意見を参考にするのか、どのように反映させるのかを決めていきます、

会社は”法人”というくらいで、人と同じです。人が寄せ集まっているに過ぎません。人が集まれば、1人では絶対できないこともできるようになりますが、決して万能になるわけではありません。
できることとできないこともありますし、やりたいこととやりたくないことだってあります。

それでも、一人一人のお客さまを大事に思う心に嘘はありません。
その心を伝えるのが、コールセンターの役割のひとつです。

要望が叶うか叶わないかにかかわらず、「問い合わせてよかった」「Aさんに自分の要望を聞いてもらえてよかった」、そう思ってもらえるなら、Aさん会社のファンを作ったのです。

評価よりも感謝を

そしてAさんには、評価よりも、「お客さまを笑顔にしてくれてありがとう」というお礼の気持ちを伝えてあげましょう。

それでは、また。

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プラチナ先生 遠入のどか


世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。