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「頂く」と「戴く」の使い分け

先週のブログ
「ちなませていただいて」~気になる敬語#17
に、のぼる師匠よりありがたくもご質問を頂きましたので、僭越(せんえつ)ながらお答えさせていただきます。

師匠がその違いをお分かりにならないとは考えづらく、
おそらくは印刷に上がってくる原稿にそのような間違いが多く閉口なさった師匠が私に代わりに説明をさせようとしているのでは……、
などと勝手なことをご推察申し上げる次第ですが、私ごときでお役に立てるならば喜んで承りましょう。

のぼるん

漢字の使い方

漢字の使い方としては非常にシンプルで「いただく」の漢字表記としては「戴」は使いません。
なぜなら、常用外だからです。
常用漢字表の「戴」をご覧ください。

常用漢字表:⼀般の社会⽣活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使⽤の⽬安を⽰すもの
常用漢字表にない漢字を使ったり、常用漢字表にない読み方で漢字を読ませてはいけないわけではないが、この目安に反するので「常用外」といわれる

戴

読み方としては、「タイ」しかありません。
※「頂戴」がありますので「ダイ」もOKです

一方、「頂」を見ると「いただく」の漢字表記として使えることが分かります。

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したがって、全く迷う必要はありません。「いただく」を漢字で書きたいときは「頂く」だけを使ってください。

意味の違い

「頂」と「戴」をくっつけると「頂戴」という熟語になり、両方とも「もらう」という意味が含まれる類語です。

ただ、全く同じではありません。

常用漢字表を見ると、「戴」の例として「戴冠」が載っていましたよね。

「戴冠」は冠をもらうことではありません。
冠を頭に乗せることです。
それも、単に乗せることではありません。帽子なら頭に「乗せる」でもいいかもしれませんが、「戴冠」は
君主が即位したしるしに初めて宝冠を頭にのせること。(コトバンクより)
とあるように特別なのです。

なので、本来なら「雪を戴く富士山」のように使います。

実際に書くときには「戴く」が使えないので、「雪を頂く富士山」になります。ただし、「庵忠名人を社長に頂く」ではあまりにもおかしいので、「庵忠名人を社長に戴く」と常用外と分かって書くか、「庵忠名人を社長にいただく」と平仮名にするしかないでしょう。

一方、「頂」は、「頂上」「頂点」「絶頂」「山頂」とあるように「てっぺん」が根本の意味としてあることが分かります。

そうすると、「頂戴」とはてっぺん(にいる尊い方)から下りてきた物を恭しく頭上におしいただくことと解釈できるのではないでしょうか。

さらにそう考えると、「(あなた様のいる高いところから、私のいる低いところに)下さい」という言葉と、同じ行為を別視点から表現していることになりますよね。

ちょっとお問い合わせの範囲からはみ出してしまいましたが、ご満足いただけましたでしょうか。

次週はtamadoca様からのご質問、「お付き合いさせていただいております」を取り上げます。

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